宇宙_燃えて__2_

宇宙、燃えて #1200文字のスペースオペラ

 茫漠たる宇宙空間に、雄々しく佇む少年が一人。

 その輝く体は真空の中においても泰然自若。その鋭く高貴な眼差しは大胆不敵に見据えている──天の川煌めく、宙の彼方を。

「ふん、来たか」

 視線の先。空間が歪み、爆発的な質量が出現していく。それは巨大なる惑星群であった! 重力の嵐が荒れ狂い、潮汐力で自壊を繰り返しながら、惑星群は少年へと迫る!

「はは! 愚か!」

 少年は呵呵と笑った。

群体進化属〈ゾアス〉ども。この程度で超越神人〈ファウア・ターカ〉たるこのデリーサに対抗できるとでも思うたか!」

 少年──デリーサは両の手を拡げた。

「神機輪転!」

 
 その胸の中枢が回転し、太陽をも超える凄まじき輝きを放っていく!

「見よ、我ら超越神人の力を! そして震え、絶望し、滅するがいい!」

 胸に輝く超強磁場が爆発的な力を放つ。それは圧倒的な破壊の力──宇宙創世を局所に再現した、真の意味での神威である!

「星震大吼──紅乱バーストッ!」

 
 鮮烈なる耀きが宙を薙ぎ払う! その衝撃と凄まじき熱量が渦を巻き、惑星を砕き、押し潰し、燃やし、溶かし、滅し尽くしていく!

「ははは!」

宇宙に進出した人類は永劫ともいえる時を重ね、多様にして複雑なる進化を遂げていった。群体としての有り様を極め、個を喪失した群体進化属〈ゾアス〉。個としての極限を追求した超越神人〈ファウア・ターカ〉

両者は銀河の覇権を巡り、壮絶な戦いを繰り広げていた!

「ぬ?」

 デリーサは眉をひそめた。凄まじき破壊の中、何かがこちらに迫っている──

 それは、滾るような狂悪な笑みだった。

「ぐわぁあ!?」

 剣閃。デリーサの腕が虚空に飛ぶ! 「貴様……!」その眼前。ギラリとした眼がデリーサを見据えている。裂けんばかりの口に獣のような牙!

戦闘種族……〈イストラジア〉……!」
「あぁ、そうさ。俺はナジャ……てめぇらに滅ぼされたイストラジア、最後の生き残り」
「バカな……ゾアスとイストラジアが手を組むなどっ!」
「はっ! 知れたこと。てめぇらに一矢報いるためには! 悪魔にだって魂を売ってみせる!」

 ナジャは身を捻り、剣をかざした。

「兄者! 母上! 見ていてくれっ!」
「ぬぅぉぉお!」

 デリーサは神機を輪転させる!

「だが、遅ぇ!」

 ナジャの剣が神機を貫く! 直後、デリーサの首は……飛んだっ!

 そんな……
 バカな……
 ……

(……ここは)
(気づいたか、デリーサよ)

 光。ただひたすらの光の中。

(ここは魂の終着点。銀河の中心核)
(……そうか。俺は……死んだか)
(そうだ。しかし、そのエネルギーは不滅である)
(なに……)
(お前は、源となる宿命なのだ)
(……?)
(新たに誕生した星で、新たなる生命の源となる)

 その存在は、静かに告げた。

(それが、お前の行きつく果てだ)
(ふ……なるほど)

 デリーサは心穏やかだった。

(それも……悪くはない)

 流転するデリーサの生命は、光となって降り注いでいく。青い星。太陽系第三惑星。後に、地球と呼ばれる美しい星に──。

【Fin.】
(本文:計1200字)


これは何?

これは城戸圭一郎さん主催「1200文字のスペースオペラ賞」への応募作品です。しかし残念なことに、しゅげんじゃさんは本格的なSFや古典的なスペースオペラを消化吸収するための酵素を体内に持っていないのです。悲しい現実。そのため、

「スペース……オペラ……?」

と呻きながら書いた結果がこれ! これなのです! あのさぁ、しゅげんじゃさん。君、いつも似たような小説書いてんな! でも本人としてはそんなこと気にしていないというか、「これでいいのだ」な気分だったりします。人間、開き直りが肝要。

しかもしゅげんじゃさんはこの作品をけっこう気に入ってしまったようで、いつか大幅加筆修正したうえで、デリーサやナジャのその後の物語も描いてみたいなぁ……という気持ちがあったりもします。

あ、あと今回、宇宙を舞台にした物語を書く上で、うっかりガンダムにはしないように……という点にだけは気をつけました。

【おしまい】

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