祭りだ!第三回逆噴射小説大賞だ!素振りすっぞ!
【キリンと親父(仮)】
何をすればいいのか、わからないのだな、俺は……。
キリンはそう呟きながら、窓の外を見た。親父の修理を終えてから、気がつくともう百年が経っている。つまり……。
窓の外にはいつも通りの光景だ。地球と呼ばれた青い惑星があった空間には、屍のような岩塊たちが浮かんでいる。
まるで盛大なシットだな、とキリンはいつも通りの感想を思い浮かべた。そして血管のようなチューブどもが……実際、血管なのだが……岩塊たちを繋いで、きらきらとした輝きを交換しあっているのを見つめた。
今日も太陽は眩しい。
そして、残酷なぐらい退屈だ。
「……よし」
あまりにも退屈だったから、キリンは立ち上がった。すっかり魔が差してしまったのだ。
ピュルー、ピュルルルー、アウアウアウー。
久しぶりに起動した親父は嬉しそうに鳴いた。眩い光を放ちながら、はしゃいでいる。キリンもなんだか嬉しくなってくる。
そして……気分の高揚に任せて、キリンの暴走が始まった。
「なあ親父ィ」
アウ?
キリンは二百年モノの発酵麦酒をぐいと煽ると、頬を紅潮させて続けた。
「母さんを、ぶっ倒しに行こうぜ! ガツンとよお、かましてやろうぜ?」
アウー、アウアウアー。
かくしてキリンと親父、二人の冒険は幕を開けた。岩塊を押しのけ、チューブを薙ぎ払い、親父の巨体は母さんへと向かう。岩塊の窓から慌てふためく地球人が見える。キリンは腹を抱えて笑い、最高にご機嫌になった。
親父の胸の中で、キリンは腕を振り回しながら歌う。
「退屈は~、歩いてこない~、だーから、座ってると来るんだね~」
アウアウー!
「ふんふんに身をまかせーてもー明日におびえていたよー」
アウアウアウアウー!
だから、調子に乗り過ぎてしまったのだ。
ガン!
親父が何かにぶつかった。
ピュル……ピュルー……。
親父の悲しげな声を聞いて、キリンも悲しい。
「てかさぁ親父」
キリンはぶつかった何かを見つめながら、目をすがめた。
「これ、母さんじゃね?」
【続く】(795文字)
【えっと、今のは何ですか?】
決まってるじゃないですか……逆噴射小説大賞の素振りですよ!
ついにnote最大の祭典(※しゅげんじゃ調べ)、逆噴射小説大賞の季節がやってきた! この逆噴射小説大賞は「小説の冒頭800字だけで競い合う」という由緒正しい小説コンテストです。
「小説コンテスト? なんか堅苦しいから関係ないや……」
そう思ったあなた!
ちょっと待ってください。逆噴射小説大賞は書き手にとっても、読み手にとっても、最高に楽しいお祭りなんですよ。「続きを読みたい」と思わせる冒頭800字を書くだけ。ものすごく敷居が低く、シンプル。
そしてそんなにも敷居が低いから、例年、めちゃくちゃ多種多様で、刺激的で、「え、こんなアイディア? 凄くない!?」みたいなのがいっぱい集まる。そんなお祭りが逆噴射小説大賞なのです!
何を隠そう、この僕自身も第一回逆噴射小説大賞に何気なく参加して、「あ? 小説書くのってめちゃくちゃ楽しいぞ!?」となり、それから小説を書くようになった……そんな凄いパワーを持ったお祭りなのです。
なので、あまり肩ひじ張らずに参加してみても楽しい。参加しなくても、読者としてどんどん増えていく投稿作品を眺めているだけでも楽しい。とにかく楽しいが溢れている。
そんなお祭りがもうすぐ始まるのです!
気になる人や、参加してみようかな……? と思った人は、上掲記事をチェックしてみましょう! 募集要項は言わずもがなですが、TIPSも見逃せません。「ルサンチマンにとらわれ過ぎない」や「いちいちショックを受けるな」など、とても大切なことが書かれています。
【で、素振りってなんだよ】
例年、開始を待ちきれない参加者が「素振り」と称して、本番開始前に800字冒頭を書いては投げ、書いては投げ……という行為を繰り返す。それが素振りです。つまり、お祭りはすでに始まっているわけです。
「え? 素振りなんてしてたら、本番でアイディアが枯渇するのでは?」
と思う人もいるでしょう。しかし、心配は無用です。実は素振りには素晴らしい効能があります。たとえば冒頭にあげた「キリンと親父(仮)」はついさっき、30分ほどで思いつくままに書きました(なので、まったく奥行きがない!)。
人間、「よし、書くぞ! すげーもんを書いてやる!」と気合を入れて書こうとすると、逆に書けなくなるものです。だから「素振り」と称して書くことで、肩の力を抜いて、気軽に書き出すことができる。
そしてそうやって書いた中には、「おお?」となるような、本番に出せる強度の物語も出てきたりもする。素振りには、そんな効能もあるのです。
要するに何が言いたいかと言うと、祭りは始まってるんだから、参加する気のある人はどんどん素振っていこうぜ! ブン、ブン、ブン! ということです。(ちなみに #逆噴射プラクティス というnoteタグをつけておくと、誰かが読んでスキをつけてくれたりします。嬉しい!)
では、楽しみましょう。
【おしまい】
きっと励みになります。