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日進月歩 ~Road to MBA~#59

2020/12/5:企業財務基礎⑨
 前回に引き続き土曜日は、ファイナンスといえばこの人と呼ばれる下川先生による企業財務基礎の9回目です。本日はWACC(加重平均資本コスト)についてご説明をいただきました。


■加重平均資本コスト

加重平均資本コスト(WACC):
WACC=D/D+E×rD×(1-T)+E/D+E× rE
※D:負債総額、E:株式の時価総額(=株価×発行済み株式数)

 企業が資金調達をする際には、異なった2種類の投資家から異なる水準のリターンを要求されていることが多い(DeptとEquity)。これを混ぜ合わせて「平均化」したものが加重平均資本コスト(WACC)と呼ばれる。この式を分解すると、➀負債の割合、②(節税効果を考慮した)負債コスト、③資本の割合、④(株主)資本コストに分けることができる。

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<算定方法:②(節税効果を考慮した)負債コスト【rD × (1-T)】>

負債コスト(rD):企業の負債の加重平均的な調達レートのこと
※「負債=有利子負債」、「調達レート=金利」を指す

 推定方法としては、大きく3つ(A)有価証券報告書に記載されている情報から推定、(B)格付および債券利回りから推定、(C)支払利息と有利子負債の期中残高から推定することができる。

支払利息の節税効果(1-T):支払利息は税控除の対象となり、節税効果が生じるということ

 負債を利用することによって、全ての資金提供者(投資家)に帰属する総額が増加することが分かっている。それは、企業は稼得した利益に対して法人税等(税金)を支払わなければならないことから、支払利息によって法人税が減額することが可能ということが要因であると考えています。


<算定方法:④(株主)資本コスト【rE】>

 資本コストを考えるにあたって、企業側から見た場合に犯してしまう2つの誤解が存在してしまっている。
 ✔ 株主に対するコストは配当だけである
 ✔ 剰余金にはコストがかからない
 しかしながら、株主は「配当」と「キャピタルゲイン」の双方を見込んで投資してくる。また、利益は本来、株主に還元されるものであるが、その利益を引き続き再投資することを目的に内部留保させたものが剰余金となる。こういった要因をきちんと理解し、企業が意識する資本コストは、「配当」と「キャピタルゲイン」の双方を見込んだ最低限の期待収益率となる。

 この、資本コストは負債コストと違って明記されておらず、直接的に把握することは難しい。そのため、市場(過去の株価推移など)を基に推定していく必要がある。このように、資本コストを推定する方法論として有名なのが、CAPMモデル(資本資産価格モデル)である。

CAPMモデル:rE=rf+β(E(rM)-rf)
※rf=リスクフリーレート、β、(E(rM)-rf)=リスクプレミアムと表す

 リスクフリーレートは、一般的に「10年物国債の利回り」を使用することが多い(日本銀行Bank of Japan:金融経済統計月報)。また、βは個別企業とTOPIXの時系列株価情報から、両者の終値変化率を算出した後に、Linest関数を適用するなどYahoo Financeなどで確認する。最後にリスクプレミアムは、Ibbotson Associates(イボットソンジャパン)などから入手して、実務的には4~6%を用いているケースが多い傾向となっている。しかし、あくまでも推定にしかなっておらず、今日現在もファイナンス実務の中で、新しいモデルの開発が進められている。

平岩 宗(ひらいわ しゅう)
1986年12月14日生まれ(34歳)/愛知県出身
【サッカー】U-12日本代表候補/愛知県国体選抜(高校)/JFL108試合・天皇杯7試合出場(通算115試合1得点)/関東サッカー/埼玉県サッカー
【ビジネス】株式会社ビーコンインフォメーションテクノロジー/コムテック株式会社/株式会社ミスミグループ本社/独立行政法人日本スポーツ振興センター(西東京市スポーツ推進委員)
【学校】中京大学附属中京高等学校/駒澤大学経済学部/立教大学大学院ビジネスデザイン研究科

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