保護法益と暴行脅迫と法務委員会

平成29年7月刑法改正に関する法務委員会について触れた記事を、ハフポストに書いた。
(新井浩文被告人の事件が、注目に値すべき理由 性犯罪事件に詳しい弁護士に聞く https://www.huffingtonpost.jp/entry/storyaraihirofumi_jp_5d8ae15be4b08f48f4ac88d1?ncid=other_twitter_cooo9wqtham&utm_campaign)

あの事件とは直接の関係は薄かったので、記事では触れなかったが、あの法務委員会では気になる答弁があった。

皮切りは井出庸生議員だった。
井出議員は、明治の刑法草案に遡り、制定当初の強姦罪の本質は、任意の同意のない性交を罰することであると述べ、その本質は現在も変わりがないのかと確認を求めた。
この質問は、政府参考人(法務省刑事局長)から、現在も強姦罪の本質は、同意のない性交であることに変わりはないとの答弁を引き出した。

山尾志桜里議員は、177条で暴行脅迫が要件とされている趣旨を、法務大臣政務官に質問した。
法務大臣政務官は、同条の保護法益は、被害者の性的自由権であり、被害者の意思に反する性交であることを明確にするために、暴行脅迫要件があると回答した。

山尾議員は、さらに、暴行脅迫要件が、被害者の意思に反するとを明確にするためのものであるならば「被害者の反抗を著しく困難にする程度」を求めることは厳しすぎるのではないかと畳み掛けた。
すると、法務大臣政務官は、次のように答弁した。
「あくまでも構成要件上は暴行、脅迫という文言のみでございまして、著しく反抗をしめる程度のものというふうな、判例による解釈でございますので、場合によっては、こういった議論を通じて裁判所、最高裁の裁判例とかの変更があるかもしれませんし、それはまた事案のケースによるものなのかもしれません。」

法務大臣政務官は、177条の暴行脅迫要件の趣旨が強制わいせつと同じというところまでは明言したのに、同条の暴行脅迫要件が、強制わいせつの暴行脅迫要件より厳しい理由を説明することができなかった。

この日、法務省・最高裁が拠り所としていたのは、昭和33年6月6日最高裁判決であり、その頃は、177条の保護法益は、社会的法益だったので、あの判例を読み込んでも、現在の保護法益(性的自由)からの暴行脅迫要件の定義に行き着かないのだが、それにしてもあんまりな答弁であった。

興味のある方は、ぜひあの法務委員会の議事録を読んでいただきたい。
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000419320170607021.htm#p_honbun













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