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研究でわかった、最低賃金と自殺の関係

先日出生数の問題にからめて以下のようなエントリーを書きましたが、今日は「お金」と「命」という話です。

アメリカ発のニュースで、以下のような最低賃金と自殺率の関係についてのレポートが発表されています。なかなか示唆的です。


1990年~2015年の期間において、18歳~64歳の高卒あるいはそれ以下の学歴を持つ人の自殺者数は39万9206人であり、大学の学位あるいはそれ以上の学歴を持つ人の自殺者数は14万176人でした。連邦最低賃金と州ごとの最低賃金の差額と、自殺率・失業率の関連を分析した結果、最低賃金が1ドル上昇するごとに、高卒やそれ以下の学歴を持つ人の自殺率が3.5~6%減少するという関係が見いだされました。なお、最低賃金の変化は大学の学部卒やそれ以上の学歴を持つ人の自殺率には影響しなかったとのこと。
また、最低賃金と自殺率の関係は、州レベルの失業率による影響を受けていました。失業率が6.5%以上あった場合、最低賃金が高くなるにつれて自殺率が減少しましたが、失業率が低かった場合は、最低賃金と自殺率の関係は弱くなったそうです。

つまりは失業率が高い時に、最低賃金が低いと自殺率が高くなるという話でもあります。景気後退期に失業率が高くなり、その時に最低賃金も低いと自殺率が高くなってしまうという話なわけです。高学歴者には当てはまらないのは、それなりに就業機会が多様で、かつ学歴ない人材よりは賃金も高いという当たり前な話ではあるのですが、絶望するまでには至らない環境にあるということでしょう。また失業率が低かったときには最低賃金と自殺率の関係は弱くなるということですから、失業率は低いほうがよくて、さらに最低賃金は高いほうが救える命は多くなるというシンプルな話とも言えます。

そもそも雇用変動をみれば日本よりアメリカは激しいので、経済悪化すると一気に失業率があがるという問題はあります。以下のように日本は雇用がコンサバティブなので、変動はゆるい。アメリカはこのあたりはドラスティックですからね。

ただ翻って日本も考えてみると、失業率が高く、さらに給料が下がったりしていた平成の世には自殺率はとてつもなく高かったわけです。年間3.5万人近くがピーク時では自殺していたと思うと本当に異常な社会だったのが分かります。この頃、最低賃金や生活支援の仕組みがあればよかったものが、むしろほったらかしになって、自殺率も高め、さらに言えば、出生数にも関わる婚姻や出産ということなんて考えられないよという状況があったとも言えます。就職氷河期なんて時代には高学歴であっても就業機会に恵まれなかったわけで、本当に悲惨な時代だったわけです。リストラバリバリされた世代が絶望して命を断つというのは普通に起きていたわけです。

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