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淡交


淡交社という出版社がご近所にある。京都らしく、茶道美術図書出版社として知られ、裏千家の茶道関係の書籍や、京都に関する書籍を出版している。縁あって、書籍の企画をご相談いただいた関係で、会社を訪問。

ふと気になって、社名の由来を聞いてみた。すると、「荘子の言葉に、淡交、というのがあるんです」とのこと。

「君子の交わりは淡きこと水の如し」

出典:『荘子』山木


なんだかとっても素敵な言葉に思えた。水のようにサラサラと、あっさりしているからこそ、長くじっくり深められるということは、確かにあると思う。

対になる言葉は

「小人の交わりは甘きこと醴の如し」

出典:『荘子』山木

なのだとか。醴というのは、甘い酒のことを指すらしい。甘ったるい酒は、ひとときは濃さが美味しく感じられるかもしれないけれど、飽きてしまうし、身体にも負担が大きく、続かない。

さらに教えてもらったことは、「かつては、この”淡き”を”きよき”と読んでいたと聞いています」ということ。

淡さは、きよさ。
淡交とは、きよいまじわり、の意味だったのだ。


ネットワークサイエンスで「弱い紐帯の強さ」理論があるけれど、ここでの「弱い」も、よりニュアンスのある日本語で言い直すなら、「淡い(きよい)」がしっくり来るんじゃないだろうか。


淡き水の如く、人と交わろう。


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