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Interview from Davos

ダボス滞在中、Morning Meditationに関心をもってくれた「Hub Culture」(デジタル通貨Venを運営するソーシャルネットワークサービス)のインタビューを受け、「Ancestorist」について話をした。10分ほどの短い動画なので、シェア。
 


Lush
「 Hub Culture」編集長 Lush より、松本紹圭さんをお招きしています。「Ancestorist」でいらっしゃいますね?

松本
そのようにご紹介くださり、ありがとうございます。最近、私の立ち位置を「Ancestorist(祖先につながる人)」と表現しています。これまで自らのことを「仏教僧」とアイデンティファイしていましたが、私には家族がいますし、みなさんがイメージする"修行者"として禁欲的な生活をしているわけではありません(それは、日本仏教の多くの僧侶が同じでしょう)。日本仏教の僧侶の特徴は、"Ancestor(祖先)のケアをする" ことにあると思っています。

Lush
ちょうどこの後にある「世界経済フォーラム」(2023年1月16-20日)の会議場で、メディテーションの会を何度か開かれていましたね。私たちの知る、いわゆる「マインドフルネス」や「メディテーション」とはちょっと異なるものでした。祖先に心を向けるよう導かれる場だったと思います

松本
マインドフルネスのメディテーションでは、主に自分自身のプライベートな世界に意識を向けます。

Lush
自分の内側をみていきますね。

松本
おっしゃる通りです。同時に、内側に意識を向けていく先に、内なる世界を他者へと開いていくものでもあります。今回のダボス会議では、“Cooperation in a Fragmented World(分断の世界における協力)” というアジェンダのもと、私たちが世代間協力していく必要性が特に強調されました。ですからメディテーションも、意識をより開かれた他者へと広げていくものにしました。祖先の存在も、ステイクホルダーの一員としてフォーラムに招くことができたらと。

Lush
なるほど「ステイクホルダー」に。

松本さんは、掃除にまつわる書籍も過去に出されていますよね。メディテーションを通してコミュニティと繋がる大切さを伝える「Ancestorist」は、これまで取り組んでこられた他の活動とどのような関連性があるのでしょうか?

松本
もはや、私の人生の辿ってきた道でもありますが、かつて『お坊さんが教えるこころが整う掃除の本』(英語版:『A Buddhist Monk's Guide to a Clean House and Mind』)という本を書きました。本書は、掃除をダイナミックなメディテーションと捉えて、その実践法をご紹介したものです。「掃除をすること」と「祖先と繋がること」は一見異なるようで、「関係性(Interbeingness)を感じる」ことにおいて共通しています。仏教の見方では、人間存在は関係性(Interbeing)と捉えます。全ては相互依存のうえにあって単独で在れる人は一人もいません。

Lush
私たちはそのことをパンデミックを通して学びましたね。

松本
そうですね。掃除は、あなたの外的世界をケアすることですから、おのずと自身と環境との繋がりが生まれます。環境との繋がりが、自身の内側と繋がるInner Peace(内なる安寧)にもなるのです。祖先を想うことは、その異なるアプローチの一つですね。

Lush
なるほど、よくわかりました。動画をご覧になっている方に、祖先と繋がる方法を何か教えていただけますか?

松本
一番シンプルな方法をお伝えしますね。次の問いについて、しばし、しずかにじっくりと心を向けてみてください。「How can we become better aocestors?(私たちはいかにしてよりよき祖先となれるか)」

祖先とは、過去に生きた人々です。しかし私たちも、人生を終える頃には未来の人々の祖先になります。この問いは、世界のリーダーたちの心を耕し、長期思考へ誘うものと信じています。

Lush
素晴らしいですね。そのアイデア、私はとても気に入りました。今日は、Hub Cultureのインタビューにお立ち寄り下さり、ありがとうございました。

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このnoteマガジンは、僧侶 松本紹圭が開くお寺のような場所。私たちはいかにしてよりよき祖先になれるか。ここ方丈庵をベースキャンプに、ひじ…

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