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デジタル・トランスフォーメーションは親鸞ベースで進めたい

某首長さんとの未来ビジョン勉強会にて、今回はデジタルガバメント化が進むエストニア人の専門家からのヒアリング。エストニアといえば、バルト三国の最北に位置する人口130万人の国で、ヨーロッパでも有数の社会のデジタル化が進む国として注目されています。

以下、勉強会でのメモを共有。

エストニアは基本的に2001年からコロナの対策が取れています。デジタル化が進み、今回は行政サービスにあまり影響がなかった。一番、影響が大きかったのが、学校。フィジカルだから。3月から5月まで自宅で勉強していた。でも、E-スクールを持っていたのである程度は対応できたけれど、基本的にそれは学校に通っている時に補助的に使う目的であり、完全に自宅で学習する想定ではなかったから、それなりに混乱はあった。
エストニアでも、コロナ時期に電子署名(電子ID利用)の使用率が二倍に増えた。なので、もともと対応していたデジタル化が促進されたとは言える。ヨーロッパの中でデジタル行政サービスの普及度は一位。日本との大きな違いは、セキュリティのことばかり考えて(インターネットにつながると危ない)いて、利便性について考えられていないこと。どうしても中心に人間を置いてしまう発想で、最後は人間が動かなければいけないという仕組みにしてしまう。デジタルを入れることで、逆に紙だけより複雑なプロセスになってしまったり。
1990年代からエストニアではIDカードがあったが、MobileIDは2007年、SmartIDは2017年から導入され、本人確認のIDとしていろいろなものに紐づいて利用されている。2001年からの公共インフラはX-roadと呼ばれ、パブリックセクターだけでなく民間セクターにも幅広く利用されている。導入に際しては、IT担当だけに任せるのではなく、全体として同じ方向を向かなければうまくいかない。意識レベルを浸透させるプロセスに時間がかかる。ユーザー(市民)に対しては、紙での処理はお金も時間もかかる(利便性を下げる)ことによって、デジタルのメリットをわかりやすく示していく。
デジタル化を進めるにあたって、政府が信頼されているかどうかが大きいのでは? 案外そんなことはない。エストニア市民も政府を信頼していない。だからこそ、不正のしにくいシステムで透明性を高めるためのデジタル化という側面もある。利便性を高めるために誰でも情報を利用できるようにすると同時に、誰がその情報を使ったのかという履歴も誰にでも見られるようになっている。不正に使うと厳しい罰則もある。利便性が良ければ普及率が高まるが、それと合わせて情報の利用に関する透明性を担保することが大事。エストニア人は人間ではなく技術を信頼している。

さて、この勉強会での学びについて、「ウェルビーイングってなんだろう?」ポッドキャストでも触れました。良ければお聴きください。

最近、都知事選の様子を見るにつけ(というからその前からずっとだけど)、何か民主主義の仕組みが根本的に破綻しているような気がしてならないのですが、仕組みの改革(たとえば選挙)はいっこうに進みませんよね。本来ならば市民生活を便利にしてコストを下げてくれるはずのマイナンバーカードの普及が進まないのも、「政府への信頼」が揺らいでいる昨今の情勢ではますます難しくなっていきます。なぜなら、「こんなに信頼できない政権に、情報を渡したくない」と市民は考えるから。しかし、デジタル化が急速に進んだエストニアで、市民が政権を信じているかといえば、同じく信じていない。でも、信じていないからこそ、技術によって「誰が政権を担っても、悪いことができないようにする」ためのデジタル化を進めている。

ここで思ったのは、
「デジタル・トランスフォーメーションには親鸞が要る」
ということ。

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