連続テレビ小説「エール」第18週 「戦場の歌」

雨で予定が潰れて時間ができたので投稿。大学 2 年のころから、再放送も含めて色々な朝ドラを見てきたけど、今週の朝ドラはその中でも異質で衝撃的な週だった。相も変わらずネタバレを恐れず、無策に書いていきます。

エール

一番異質で印象的なのは、朝ドラの主人公が実際に戦場に赴くという展開。通常朝ドラの主人公は、「朝ドラヒロイン」というだけあって、女優が演じることが多い。時代設定的にも、「戦争」というのは何度も描かれてきていたが、大事な人が戦争に行ってしまい、失ってしまうのではないかという恐怖、統制される生活の息苦しさ、空襲により焼け果ててしまう町、といったシーンがほとんどであった。

それに対して今回の朝ドラの主人公・古山裕一は、自身が兵隊として戦場に向かうわけではないが、音楽家として実際に慰問のために実際に戦場に赴く。その戦場に向かってからの展開が素晴らしい演出ともあいまって、非常に緊張感の高い 15 分を生み出していた。


画像2

そうはいっても月曜日、火曜日はやや重い展開だなー。というくらいの印象だった。だが、水曜日から怒涛の展開が待っていた。ザクっと展開書いていこうかな。

水曜日。裕一は自身を音楽家の道へ導いてくれた恩師・藤堂がいるビルマ戦線にいた。曲はビルマ兵のために書き下ろした。藤堂が軍から音楽のできる人達を集めて、軍に向けていざお披露目というその瞬間。銃声が鳴る。目の前の兵が頭を打たれ倒れる。銃撃戦が突然開始された。藤堂は裕一を車の下に隠し、銃撃戦に参加する。裕一なすすべなく、車の下から様子をうかがうしかない。次々に撃たれる日本兵たち。目の前に倒れてきたのは、音楽隊の一員。昨日、笑顔で話していたその相手が、目を開いたまま死んでしまっている。動揺する裕一。

その時、藤堂も撃たれてしまう。思わず飛び出す裕一。恩師を抱えながら身を隠せる場所へ移動する。藤堂は妻と子供に向けた手紙を古山に託す。「最後にお前に会えてよかった。。。昌子と憲太。。。もう一度会いたかった。。。」そう言って、藤堂は裕一の腕の中で息を引き取った。

戦場に戻る裕一。周りには息の絶えた日本兵たち。戦場となった密林へ消えていく裕一。水曜日はここで終わる。。

まず、「ん?」となったのは通常なら放送開始から1分くらい経過したところでオープニング曲「星影のエール」が流れるはずであったのに、今週は頭からクレジットが表記されるという演出。最終回とかならよくある演出なのだが、最終回どころかまだ週の半ばだぞ?これは只事ではないことが起こるぞ。と思って息を呑んでしまった。

そしたら想像を上回る衝撃展開。「朝ドラ」とは思えない生々しい演出によって引き込まれた。

特に印象的だったのは、画面の暗さ。戦争映画を思わせるような、ちょっと暗めの画を使っていて、今までの「エール」とは真逆の印象を与えるような画であった。

また、オープニング曲も含めてほとんど音楽のないシーンで構成されていることも印象的だった。確か、撃たれた藤堂を抱えて移動するシーンで若干の音楽がかかったかもしれないが、それもスローモーションで画いたシーンの、重厚な音楽であったために決して明るいものではなかった。

さらに、銃撃戦という展開がリアルすぎた。昨日、笑顔で楽しく話した日本兵たちが、目の前で次々と撃たれていく衝撃。しかも、目を開けたまま死んでいくという演出。

とても朝ドラではない!!!!

そして、木曜日。今回はクレジットは流れず、「連続テレビ小説『エール』」のロゴが出てくるのみ。おいおい、今日も重い展開が待っているぞ。

日本に帰国した裕一。家族のもとに帰る前に藤堂の妻、昌子のもとに立ち寄り預かった手紙を渡す。「昌子。好きだった。愛してる。もう一度君に会いたかった。」泣き崩れる昌子。

心ここにあらずのまま、自分の家族のもとに帰る裕一。その夜は、妻・音、娘・花、弟・浩二とともに、明るく話しながら食事をするシーンが画かれる。しかし、妻・音と二人きりになると、しばらく1人にさせてほしいと冷たく突き放す。裕一は1人で先に東京に戻ってしまう。

一方、キリスト教の音の実家では、義弟・五郎がキリスト教の集会に向かう。

あー、もうこっちもなんかあるのかな!!お腹いっぱいなのに!!

翌日になっても帰ってこない五郎。どうやら特高に捕まってしまったらしい。他に捕まった人たちは罪を認めて釈放されているのに、罪を認めず帰ってこない五郎。心配する関内家。

「ウー、ウー、ウー」。鳴り響く空襲警報。辺りが騒がしくなってきた。豊橋が空襲を受けている。避難する。音の母・光子、妹・梅、職人・岩城。しかし、梅は自分が必死に書いてきた原稿を取りに、崩れ落ちる家にもどってしまう。助けに行く岩城。必死に光子は二人を止めるが、火の粉が強くなり家が焼け落ちてしまう。

二人を必死に探す光子。やっと二人を見つけたが、がれきの下。意識があるかもわからない。泣き叫ぶ光子。「助けて、安隆さん!!」

シーンは変わり、昭和20年8月15日。ラジオから流れる終戦の音。。。

そして木曜日が終わる。。。

何よりびっくりしたのが、最後までクレジットが流れないこと。あれ?あれ?どこかで流れるのかなと思っていたら、まさかの最後の最後、2秒くらいのところで、一覧形式での表示!!!

あー、密度濃すぎるわ!!!

また、思っていたよりもたくさん書いてるし、疲れてきたし、でもあと金曜日だから頑張るぞ。(木曜日の演出は振り返らないスタイル)

金曜日!あー、今日もまたロゴだけ流れて「星影のエール」が流れない。息を呑んで、背筋を伸ばして観るしかない。

戦争が終わり、疎開先の福島から帰る準備をする音と花。帰り際に浩二と世間話をする二人。「3年以内には結婚するからな」という浩二。「ほんとかな」とからかう花。「分かったようなこと言って!。ひょっとして、花ちゃん好きな人いるのかな?」と応戦する浩二。花は音楽教室で一緒で、ヨカレンに入隊し、戦場にいるはずの想い人、弘哉くんを思い出す。

そのころ、東京では弘哉くんの母、トキが裕一を訪れる。差し出したは裕一が弘哉くんにあげたハーモニカ。「これだけが戻ってきました。。」ハーモニカを受け取った裕一は、自分の曲が戦争に人を駆り立てて、たくさんの若い命を奪ってしまった事実を目の前に突きつけられて、曲を書かなくなってしまう。

一方で、豊橋では梅と岩城が一命を取り留めていた。戻ってくる五郎。「君以上に大切なものなんていないのに」と梅を抱きしめる。光子は焼け果てた豊橋のうちに向かう、そこには家族とともに過ごした時間があったのに全てがなくなってしまっていた。光子は焼け跡から亡き夫の写真を見つけ出し、抱きしめて座り込む。そして、きっとキリスト教?なのかな。平和を祈る歌を独唱する。流れる家族との思い出の回想。泣いちゃいそう。。。

画像3

東京に戻ってきた音と花。家に着くが人の気配がしない。中に上がると、裕一が廊下に座り込んでいる。裕一は花に話しかける。「花、弘哉くんが戦死した。」花は泣き崩れた。。まだ幼くて、エールの中でも明るい存在だった花が、戦争を実感した瞬間を画いたのだと思う。

音は、落ち込む夫を励ます。

「あなたはやるべきことをやったの」

「やるべきことをやった?戦争に人を駆り立てて、若い命を奪っていくのが僕のやるべきことだったの?」

シーンは変わり、ラジオ局。男性 3 人が打ち合わせ中。おやおや、よく見ると北村有起哉さんがいるじゃないか!(前情報リサーチしてないし、オープニングないから本当にびっくりした)

有起哉さんなら、この重い展開をひっくり返せる!来週から有起哉タイムだ!!と思いながら観続ける。

北村有起哉さん演じる、池田二郎はあるドラマをラジオ局に持ち込む。「いまは時勢じゃないから、やめましょう。その前に時勢にあったドラマで名前を売ってから、こいつを放送しましょう。」とラジオ局スタッフはあしらう(このラジオ局の人の演技おもしろいし好きだったなー)。池田は「約束だからな」といって、ラジオ局を去る、

シーンは闇市に変わる。エンドロール(クレジット)も流れる。親もお金もなくした子供が、二郎にスリを試みる。二郎はその子供の腕を掴み、宣言する。

「盗む相手が悪い!もう少し待ってろ!お前たちの話作ってやるからな!!」

そう、彼はこのあと裕一とタッグを組み、世に残る戯曲を多く作り上げる劇作家であった。(つづく)

濃密な三日間だった!

まず、何より三日間もオープニングなかったのが初めて。しかも、前回の「スカーレット」が最初から最後まで変わらず、オープニングを流し続け、「変わらぬ日常」を演出していただけに、そのギャップの印象的なこと。

2 回目もこんなに長く書いてしまったので、(ほぼ粗筋なぞっていただけだが)ボチボチ終わりますが、今回の朝ドラ「エール」は色々な事情に挟まれつつ、たくさんの挑戦をしているなと感じます。

・脚本家が途中離脱

・週6から週5に放送回数が変更

・4K放送の開始

・主人公が男性

・コロナによる一時中断

・放送の真ん中にスピンオフシリーズ

・そして、この戦争回

パッと思いつくだけでもこれだけ色々やっているんだな。。

NHK は非常におもしろいドラマを作るので、今後も期待が高まる一方です。

それではこの辺で

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?