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さらば 肩書の呪縛

はじめに

はじめまして、UX デザイナーのShoty(@shoty_k2)です。

みなさんは自らの職種の肩書にこだわって、作るモノよりも気づかぬうちにポジション取りを優先してしまい、結果としてプロジェクトでうまくいかなかった経験はないでしょうか?

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期待と挫折

当時は「ここで、UXデザイナーの道を精進していこう」と思っていましたが、実際には大学での研究や得た知識を実務でうまく活かすことができなかったことが原因です。

2016年に4年生の大学を卒業し、IT事業会社のUXデザイナーになりました。 当時会社にとって、おそらく初の新卒UXデザイナーでした。大学では経済学を専攻しながら、ゼミでデザイン思考やサービスデザインといった分野を2年近くの実践研究を楽しんでいました。

私は会社が事業部からカンパニーに移行するタイミングで、最初の配属先は事業部ではなく、コーポレート部門でした。そこは全社グループの戦略やマーケティングを担う組織と、グループのウェブ・アプリケーション設計・制作を担う組織が合併した部署でした。

「ここで、UXデザイナーの道を精進していこう」と希望と期待で溢れていました。

しかし大学での実践研究、書籍やウェブ上での得た知識や経験を実務に活かすことに非常に苦労しました。

<なぜ苦労したのか>
・単体事業とは違う難しさ
コーポレートの横断機能として複数のサービス間の回遊や、新規サービス利用促進するエコシステムデザインを行うことが主要なミッションでした。
同時に、単体事業やサービスの立ち上げ・改善以外のスコープで、上記ミッションに対する適切な多種多様な専門メンバーの巻き込みやUXデザインの引き出しがあまりにも少なかったです。

・インパクト思考
横断機能にも関わらずPLを持ち、グループへの貢献を定量化していました。その中でUXデザイナーとしての自身の取り組みやアイデアが費用対効果があるのか、最終的に大きい数字を動かすのかを示すことが難しかったといえます。

「UXデザイナー」としてペルソナ、カスタマージャーニーマップ、親和図法などとりいれつつプロジェクトを進行したい! だが必ずしも顧客にインタビューできるわけでもない!...周りの理解を得るのも時間がかかる..
.振り返ればポジションへのこだわりが強いがゆえの空回りでした。

その頃は気づけば徐々にチームの先輩も入れ替わり、チーム規模は縮小し、不安を感じていました。


転機 「UXデザイナー」をやめる

入社1年半が経ったタイミングで、部内でマーケティング課に兼務することになりました。主な活動は、他事業部の新規顧客獲得の支援や部内プロジェクトの企画立案・マーケティングです。また、それに加えて制作ディレクションの役割も増えていました。まとめると、施策の”マーケティングや企画”、”UXデザイン”、”制作ディレクション”の各専門領域を全うしないといけない立場となりました。


正直困りました。

あっちを立てれば、こっち立たない。トレード・オフなことが多い。


ただ、限られたリソースの中で最大限の価値を顧客に届けたいと思ったとき、ある専門領域で満点をとることは難しく、むしろそれぞれの領域が及第点(orそれ以上)をバランスよくとることが大切なのではないかとっ。


「UXデザインで満点がとれなくていいじゃないか。思い切って、自分の中での”UXデザイナー”をやめてみよう。」
そう思った瞬間でもありました。
すると、UXデザイナーという職種の肩書の呪縛から開放された気がしました。


事業会社で何かを創るときは、各専門領域がもつ色だけをキャンバスに塗るのではない、グラデーションであると。創るモノに目を向ける。そしてそれが成功すれば、改善や進化という形で各色を濃く広げていけるチャンスは必ず巡ってくるのです。

☆多様な視点を考慮しながら統合的に価値創出していくヒントはこちらの記事からご覧いただけます。

約2年弱の期間を経て、マーケティング課の兼務および制作ディレクションからも離れてUXデザイナーのポジションのみに戻りました。タイトルのように「UXデザイン」ができるようになったと自信を持って言えるわけではありませんが、少なくとも以前よりずっと世に届けている体験の質・量も変わった実感があります。
また、UXデザインチームとしての取り組みはこちらで紹介しています。


まとめ

・職種という肩書にこだわりすぎると、作るモノよりも気づかぬうちにポジション取りを優先してしまうことがあります。結果としてプロジェクトでうまくいかないことも。

・「UXデザイン」で満点をとるというエゴを捨て、他領域のメンバーと共創しながらビジネスとユーザーの橋渡しができる「UXデザイン」を心がけることが大切。
また、エゴが強すぎると、時に必要以上のデザイン手法に傾倒し、手法を試すことが目的化してしまうリスクも。

・一方で外部発信するときには、「こいつは何者なのか?」か端的に分かりやすいように、自分のロールを一言でラベリングした「UXデザイナー」ないしは「UXプランナー」という言葉を使っています

番外編

ここまで読んでいただきありがとうございます。ここからはちょっとした葛藤話なので、興味があるかたはよかったらどうぞ!

各専門領域のバランスをとった”UXデザイン”を続けていると
本来的には重要なプロセスを簡略化した、ある種プロジェクトの生産ラインに適合させたUXデザインを行ってきているのではないかと感じることが増えてきました。そのようなUXデザインは、各々が属する組織が扱うモノの状態によって常に変化していると言えます。人には人の乳酸菌ではないが、組織には組織のUXデザインがあるわけです。

先日、「UXの5段階モデル」の提唱者であるJesse James Garrett氏が寄稿された記事の翻訳版に出会いました。これは、非常に興味深いだけではなく、どこか心が揺さぶられる内容でした。

UXの基礎となる仕事は、人がUXに関心を持つきっかけとなるもの、つまり人間に対する洞察やコラボレーションによる探求、創造的な実験などが起きる場所にある。UX業界に足を踏み入れたばかりの人によって、この夢と現実のギャップはひどい詐欺のように思えるかもしれない。学校では「UXは高貴で創造的な追求」だと教わったのに、いざ就職してみると、製品を出荷するという名目で、高貴さや創造性を発揮する機会がすべて削られ、一掃されてしまっているのだから。
[文・翻訳]Erika H.[編集]向晴香


果たしてこれが自分が学生時代に憧れを抱いたUXデザインなのか、ときどき分からなくなるときがあります。しかし、その答えはないと思いながらもUXデザインに携わり続ければ、何かヒントがあるかもしれないとどこか淡い期待を持っているのかもしれません。

「UXデザインで満点をとりたい」というエゴは捨てて、自分がデザイン×ビジネスをつなぎ価値を作り出していく”UXデザイナー”だという静かに燃える炎が消えないように!悩みつつ前に前に。

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Twitter: @shoty_k2

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