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上場直後の決算説明資料のお手本

【自己紹介】
はじめまして、KUROKO™️というサービスで黒子2号をしている木下です。
デザインの観点からベンチャー企業の資金調達、上場会社のIRの支援をしています。上場・未上場含め、これまで約160社のサポート、累計調達関与額は140億円となりました。

「資料」に関して私にしか書けない事もあると思っているので、その辺りを定期的に発信していきます。

【最近良いなーと思った資料】
2019年の後半は上場する会社が多かったですよね。特にIT系の会社。大体の「成長可能性に関する説明資料」は一通り目にしたのですが、その中でも個人的にいいなと思ったのは以下4社です。(全てIT系銘柄ですね)

■個人的に好きな成長可能性に関する説明資料
株式会社メドレー
株式会社スペースマーケット
株式会社ツクルバ
株式会社インティメート・マージャー
*ちゃんとみてないですが全銘柄初値は公募価格の2倍以上ついてた気がする

その中で、今回取りあげたいのは、昨年12月に上場した(株)スペースマーケット(以下、スペマ)の、2019年2月13日に発表された、上場後初の決算説明資料です。創業以来初の黒転と財務面も良い決算でしたね。

デザイン的にもわかりやすい良い資料なのですが、今回私が注目したい点は「上場直後の決算説明資料として非常に良い資料」という点です。

上場直後の決算資料で抑えるべきポイント

上場直後の決算資料として、私は以下の点が重要だと考えています。
因みに、上場直後とは約1年間くらいを想定しています。

■デザイン面
❶ 適切なビジュアルを適度な分量で活用
❷ サマリー文が一定量(80文字前後)記載

■コンテンツ面
❸ 誰が経営してるかが明確
❹ ビジネスモデルが明確
❺ 対峙している市場が明確

投資家って数値しかみてない?

この仕事をしていると「投資家って数値しか興味ないと思うのですが、資料のデザインって重要なのですか?」といった質問を偶に受けます。

私は重要だと思います。

財務数値が伸びていることは、投資家が判断をする上で重要な指標になってきます。ですが、そのほかに「誰」が「どういった思い」で「どんな事業」を経営しているのか…など、数値では表せない部分も含め、投資家は判断しています。(少なくとも私はそうです)

こういった財務では表現できない部分を私は「企業の無形資産」と呼んでいます。この「無形資産」をデザインの力で表現し、投資家に伝えることは非常に重要であり、それを行う上で決算説明資料(又は中期経営計画など)は最も適した媒体なのです。

なぜなら、決算説明資料は❶投資家が一番目にしている ❷ビジュアルで説明できるからです。

スクリーンショット 2020-02-18 23.51.07

出典:野村インベスター・リレーション(株) 企業が行うIR活動に関する調査 2019より

実は投資家は決算説明資料を血眼にしてみているんですよ。
知ってましたか?


といった観点から、こう言った人に読んでほしいです。

■読んでほしい人
・上場直後のIR資料制作している人
・上場手前でIR資料を制作予定の人
・未上場企業の経営者(CEO・CFOあたり)

前段が長くなっちゃいましたが、スペマの資料のどういった点がよかったのか具体的にみていきましょう。

❶ 適切なビジュアルを適度な分量で活用している

スペマの資料をサーっと目を通してみてください。
読みやすくないですか?これは資料の要所要所で適切な「ビジュアル」が活用されていることが一つ大きな理由として挙げられます。

■目安は4割〜5割をビジュアル
39枚の資料の内、約4割の16枚でビジュアルを活用しています。
(例:約4割の16枚が、写真を活用した、視覚的に理解しやすいビジュアルのページになっています)
資料の用途にもよりますが、私が資料を作成する時、大体4割〜5割を目安にビジュアルを活用するように心がけています。

■適切で綺麗な写真を選ぶ
また、単にビジュアルを使うのではなく以下2つのポイントを必ず抑えるようにしています。

■ポイント
⑴ 適切なビジュアルを使う(補足のタイトルがなくても理解できる)
⑵ 綺麗な写真(解像度+構図)


例)ビジュアルを上手く活用しているスライド

スクリーンショット 2020-02-28 23.59.03

具体的な例を見てみましょう。
このスライドは先ほどのポイント⑴と⑵を満たしています。

⑴写真の下にある「住宅・会議室・飲食店・スポーツ施設・ユニークなスペース」というテキストがなくても、この写真だけで意味が成り立ちますよね?(もちろんテキストがあったほうがいいですが)

⑵各シーンに適したビジュアルですね。
ユニークなスペースにお城の写真を使ってる部分などは流石ですね。
こういった際はフォトストックではなく実際撮影した写真のほうがよりリアルな絵になるのでおすすめです。

❷ サマリー文が一定量(80文字前後)記載されてる

サマリー文とはタイトルの下の補足説明のことです。
私が担当する企業の決算説明や事業計画では原則サマリーを書くようにしています。なぜなら、今私が見ているように、データだけで閲覧する人が多いく、そういった場合は口頭での説明ができないからです。(これを資料の一人歩きと呼んでいます)
サマリー文があると資料が一人歩きしても、このスライドで何を言いたいのかが明確になり適切なコミュニケーションをとることができます。

■サマリーは1行〜2行で簡潔にまとめる
サマリー文は1行〜2行に纏めましょう。サマリーが長くなったり、文章が意味不明になると要約の役割を果たさないので注意してください。

例)サマリーが簡潔に記載されているスライド

スクリーンショット 2020-02-19 1.34.15

スペマの資料をみてみるとほとんどのスライドが2行以内に簡潔に要約されているので、このスライドで何を言いたいのか容易に理解できます。
(ボソッ:私なら強調したい部分は色を付けるかも…)

❸ 誰が経営しているのかが明確である

上場直後の企業だとまだまだ認知度も低いので「誰が」経営しているのかわからないですよね。そこで「顔、経歴、役員構成」などは最低限記載することをお勧めします。役員一覧のスライドを作る際の3つのポイントを上げておきます。

■3つのポイント
⑴  顔写真を利用する
⑵ 役員全員で統一感のある写真を活用する
⑶ プロフィールは簡潔に書く


>誰が経営しているのかが明確、且好印象でわかるスライド

スクリーンショット 2020-02-19 1.58.09

スペマの資料は上記3つのポイントを全て満たしているので参考にしてみてください。

余談になりますが、役員全員の写真がバラバラなだけでイメージがガクッと悪くなります。カメラマンに頼んでも10万円程度で撮影可能なので、この機会に是非撮影してみてください。

❹ ビジネスモデルが明確である

どんなビジネスを運営しているかわからない企業に投資しますか?私は絶対にしないですね。なので、ビジネスモデルをわかりやすく伝えることはマストです。ビジネスモデルをわかりやすく伝えるために、私は以下の3つのポイントを抑えるようにしています。

■ポイント
・ステークホルダーが把握できる
・お金の流れがわかる
・ビジュアライズする


>ビジュアル・カラーバランスを駆使し一眼で事業構造が理解できるスライド

スクリーンショット 2020-02-19 0.08.36

スペマのビジネスモデルをみてみましょう。
ビジュアルが上手く活用されており、わかりやすい図解になっています。
ここで注目したいのが「カラー」の使い方です。
ゲストは「青」、ホストは「緑」といった形で表現されています。
実はこのスライドだけでなく、資料全体を通してこのルールは適応されておいて、読み手の負荷を減らしています。

こういったデザインの力を活用することで、無意識の理解力をあげることでできるので、是非参考にしてみてください。

❺ 対峙している市場が明確である

私は、創業したばかりのベンチャー企業だと市場規模を語ることはあまり重要ないと考えています。ですが、ある程度の規模になると、対峙する市場規模を把握することは事業拡大の上で重要であり、それを投資家に説明することは義務だと考えています。

スペマの資料ではP14−16の3ページに渡り、同社が対峙する市場環境を説明しています。

例)対峙するマーケットを明確にするスライド
:シェアリングエコノミーの中でも「場所」のシェアという領域で事業展開していることが明確にわかる。

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例)対峙するマーケットの変化を伝えるスライド
:シェアリングエコノミーの概念が変化しており、その変化は同社にとってメリットがあることがわかる。

スクリーンショット 2020-02-29 1.23.52


例)対峙するマーケットの規模を伝えるスライド
:対象領域をバーティカルに記載することで、潜在的なポテンシャルと大きさがわかる。

スクリーンショット 2020-02-19 1.33.44


ベンチャー企業の事業計画に市場規模が大きいです!と、記載しているスライドをよく見るのですが、読手はこれだと「?」となります。その巨大な領域のどの部分で戦い、どのような流れがあり、だから勝てるんです!(これはあくまで一例です)と、ロジック立てて説明するべきです。
なので、1枚でなく3枚でロジックを組み立てて説明しているスペマの資料は参考になるので、是非参考にしてみてください。

最後に

最近セミナーに登壇することが多くなってきたので、自分の思考を纏めれるように定期的にNoteを書いていこうと思います。

どうせ書くなら多くの人に読んでもらいたいし、価値のあるコンテンツ書きたいなと思って色々考えていました。

財務に関する考察まとめ的なNoteは結構あるのですが、デザイン視点(右脳視点)での考察は殆どなかったので、この辺りを重点的にNote化していくのがいいかなーと思っています。

書くモチベーション高めていきたいので、こう言うの書いてほし!など希望あれば是非メッセしてください😏

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