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❸「世界で最も危険なスポーツ」

2)
ロデオの大会で優勝すると、トロフィーやメダルの代わりに、ベルト・バックルをもらえる。時には滑稽なくらい大きなものもあり、仮面ライダーの変身ベルトのようになる。
ロデオ・カウボーイたちはそれを誇らしげに腰につけるのだ。

「会場に行けば、みんなデカいバックルしてるのに、俺だけウェスタンショップで買ったやつです。自分もバックルがほしいです」
タイトは切なそうに笑って言うが、八秒への道のりは長い。
ここでいったん読むのを止めて、静かに八秒を数えてみてほしい。

1、2、3、4、5、6、7、8

それがどれだけ長いか、おわかりいただけるだろうか。


この夏、タイトはこれまでに三つの大会に出場した。
テキサス州ジャンクション
シーダー・パーク
ラ・グランジ
いずれの町でも、八秒は乗れていない。
初挑戦だったジャンクションでは、屋外の会場で雨の中、
「おい、お前の順番だ! 一分で準備しろ!」
と急に言われて、心の準備も整わないまま、一瞬で泥の上に叩きつけられた。
聞けば、そのブルは「まだ誰も八秒乗ったことがないブル」だったという。

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