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ARプロトタイピングでわかった、AR体験を世に普及させるのに必要なこと

Graffityで10月から行っているARプロトタイピングプロジェクトの結果を振り返りながら、AR体験を世の中に普及させるために必要な要素について考察していきます。
この記事はAR Advent Calendar 2018 23日目の記事です。

目次
・ はじめに
・ ミッケ × AR
・ スマブラ × AR
・ 音ゲー × AR
・ ARの体験を世の中に普及させるために必要なもの

はじめに

Graffityでは最近、AR×コミュニケーションのコンセプトを「遊び」という形で表現した、ペチャバトという新しいアプリを開発し、ローンチしました。
めちゃくちゃ盛り上がるアプリなので、まだ触っていない、という方はこれを機にぜひダウンロードしてください!

そして、ペチャバトで表現した「一緒にいる友達との共有体験」を他にも検証すべく、社内でプロトタイピングプロジェクトを発足。僕とエンジニアのむーつんの2人体制ではじめました。

ミッケ × AR

まず最初に作ったのが、このARミッケ!です。
名前で一発でイメージがつくと思うのですが、空間に出てきたオブジェクトを見回して、お題を探し当てる体験です。
複数人でプレイすることが可能で、どちらが多くお題を見つけられるか競争することができます。

ミッケで得られた学びは大きく3つでした。

①Good!:周囲を見回してオブジェクトを探す体験は、ARならでは
体験するときには、オブジェクトが周囲にランダムで表示されるため、プレイヤーはあたりを見回しながらお題を探します。
これは、ゴースト&ガンでもそうでしたが、ARでしかできない体験です。

②Good!:友達と一緒にやることで、コミュニケーションが生まれる
制限時間内にお題をより多く見つける競争というルールを取り入れたことでプレイヤーたちが自然と焦るようになりました。
これによって、「え、全然見つからねえ!」「どこ!?」「これか!」といった言葉が飛び交う体験に仕上がりました。
友達の家に集まってゲームをやっている時のあの感じを再現できていたと思います。

③Bad...:リプレイ性が低い
個人的に今のAR界隈におけるバズワードは「コンテクスト」と「Wow!で終わらないこと」の2つかなと思っています笑
ARミッケ!はまさに2つ目の「Wow!で終わらないこと」に引っかかってしまいました。1度目の体験は面白いのですが、またやりたくなるものにはなっていませんでした。

スマブラ × AR

リプレイ性が低いという課題はありつつも、一発目としてはなかなか良いものに仕上がったARミッケ。味をしめたプロトタイプチームは、往年の名作をAR化することに取り組みます。

・・・結果は散々なものでした笑

①Good!:操作はARに最適化されていた
今回採用したのは「画面の中心にポインターを設定し、そこに向かってキャラクターが動く」というものでした。
最近だと、ディズニーが同じコンセプトのデモを出しています。
(余談ですが、このUXはディズニーがニュースを出す前に考えていたもので、社内では「やられたー!」ってなりました笑)

このUX自体は、ARのカメラを主軸とした体験として非常にユニークなもので、社内でも評価が高かったポイントでした。

②Bad...:操作性と体験が噛み合っていなかった
UXはARらしいユニークなものでしたが、体験との相性が最悪でした。
スマブラは格闘ゲームで、他のキャラとの戦いがコアです。そのため、実際にプレイすると、スマホをあまり動かさずに攻撃を連打し続ける体験になってしまいました。
ARらしい操作性を追求しすぎた結果、体験との相性を考慮仕切れなかったわけです。

③Bad...:ステージ俯瞰型の体験はARである必要がない
動画を見ていただけるとわかると思いますが、ARスマブラと謳っておきながら、実際の画面はあんまりスマブラっぽくありません。
色々と違いはあると思いますが、一番大きいのは視点の違いだと思います。
ARにする上で、横ビューではなく見下ろし型の体験を採用しました。
俯瞰視点にすると、どうしても「遠さ」が際立ってしまい、臨場感が欠けてしまいました。ARの共有体験と俯瞰視点は相性が悪いということがわかりました。

音ゲー × AR

ARミッケとARスマブラでの学びを活かし、主観視点でリプレイ性の高い体験を作ろう!ということで取り組んだのが、DancARです。

①Good!:普通の音ゲーより「踊ってる感」が出る
実際に体を動かして4つのレーンに当たって音符をとらえる体験は、従来の音ゲーにはない「踊ってる感」がありました。
リズムに合わせてうまくコンボを決められた時の快感がすごいです笑
AR体験はカメラを動かすのではなく、体を動かす体験まで拡張することで、体験としてリッチなものに仕上がると思います。

②Good!:リプレイ性がある
ARミッケの課題であった、一度やったら飽きてしまう問題も、音ゲーというテーマであれば解決できます。
楽曲の数だけ異なる経験ができる上、難易度や音符の種類によっても多様性を生み出すことができます。
「ARを体験している」のではなく、「音ゲーをプレイしている」ことが、非常に重要なんだと思います。

③Bad...:プレイ風景が完全に不審者
この体験は、プレイするときに上下左右に動きます。つまり、はたから見ると「スマホを構えた人が上下左右にスクワットしている」ようにしか見えないのです笑
体を動かすことが楽しさの源泉だったはずなのに、これが周囲からみて恥ずかしい。というデメリットになってしまっていました。

 ARの体験を世の中に普及させるために必要なもの

3つのプロトタイピングを通してわかってきたことをまとめます。

①俯瞰視点ではなく、主観での体験が相性◎
②周囲を見回すだけでなく体全体を動かす体験がよりARらしさがでる
③しかし、体全体を動かす体験は周囲からみて馴染みがなく、不審に映る

これだけ読むと、すごい矛盾していますね笑
体を動かした方が面白いが、体を動かす体験は恥ずかしくてやらないって、詰んでる気がします。
しかし、②と③を両立させる魔法のキーワードがあります。
「体験の共有」です。

DancARは、一人でプレイしていると完全な不審者です。でもこれが、2人でプレイしており、さらに周囲にその様子をみている友達がいたらどうでしょうか?
「お、なんか遊んでるんだな」ってなるだけだと思います。加えて、一緒に遊んでいる人からすればAR体験は何をしているのかわかっているので変には映りません。
ここから僕が得た結論がこれです。

通常のAR体験は周囲を見回すのが恥ずかしい。
でも、みんなで体験を共有していれば、恥ずかしさや
不審さは払拭される。

今のスマホAR体験は、周囲を見回す行為がどうしても社会に馴染んでいないものです。
それを共有体験という形で実装することで、みんなで遊んでいるというコンテクストを付与し、動きの不自然さを取り払う。
これが、AR体験を世の中に普及させていく上での一つのアプローチなのではないか?と僕は考えております。

最後に

AR体験の先鋒であるスマホARは、まだ世の中に普及しきっていないのが現状だと思います。
世界の人々が当たり前のようにAR体験をするようになるには、体験の発明と検証が不可欠だと思います。
Graffityは今後もAR体験を作り続けていきたいと思います。

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