Yuki Nakano

好きなものを書きます 最初の頃のは拗らせてて読みにくいけど、最近のはイージーに面白いは…

Yuki Nakano

好きなものを書きます 最初の頃のは拗らせてて読みにくいけど、最近のはイージーに面白いはず ※不定期更新・加筆修正中

マガジン

  • ショートショート置き場

    過去作品まとめ

  • おもろいショートショート

    おもろい方

  • 書き散らかし

    行き場のない文章たちの溜まり場.

  • 410字のショートショート

    およそ410字で読み切ることのできるショートショートを揃えました. 多少文字数は前後いたします.あしからず.

最近の記事

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安寧〈ショートショート〉

「今年度の人口は100億人を突破すると予想され…」 テレビの中の綺麗な女アナウンサーは暗い顔,真面目な声で喋り続けている. どうやら,地球の人口は文明を維持するには増え過ぎてしまったらしい. もはやとっくに適正だと思われる人口は超えてしまった. ジャングル,砂漠を開拓したり,海を埋め立てて人が住むことのできる土地を作るスピードより,子どもが産まれるスピードの方が速いのだ. 食糧問題に紛争… 各地で問題が発生し,各国の政府はその処理に追われていた. そんなある日のことだった

    • 広告中毒〈ショートショート〉

      1 「時間の無駄だ…」 ベッドの上で寝転び,男はうんざりしていた. 右手に持つスマホの画面では広告の映像が再生されている. しかし,のどが渇いた男がベッドサイドテーブルのペットボトルに視線を向けると,映像はピタリと止まった.ペットボトルを手に取り,男はジュースを飲んだ. そして飲み終わった男の顔が,画面の方に向いたことをスマホのカメラが確認すると,再び画面の上の俳優は演技を始めた. 広告を見終えると,男はその代償に5分間電話をする権利を手にした. それこそジュース1本分

      • PERFECTベイベ〈ショートショート〉

        やけに容姿の優れた2人の男女が,レストランで話をしている. 「ぼくの子どもを産んでくれないか」 と男. 「嫌よ.あなたとの子どもなんて」 と女は呆れて言い返した. 「3人に1人は自然に産まれる子どもじゃないか」 男は女のグラスに水を注ぎながらそう言った. 「3人に2人も試験管の中で産まれてるの!わたしだってそうよ!」 女は机を叩いて激しく男をまくし立てた. グラスの水が少し溢れ,床を濡らした. そして周りの客に何度も頭を下げる男. 「子どもが犯罪を起こしたら,親の私

        • キレイな you me〈ショートショート〉

          蝉が慌しく鳴く昼下り. 残された時間の少なさを嘆いてるのだろうか,などと想像している初老の男. しゃがんで,線香をあげた. 細い白煙が登っていく. そして妻の眠る墓の前で目を閉じると,そっと手を合わせた. 「昨日は自分でカレーを作ったよ.君のほどは美味しくなかったけど.家事も慣れたもんさ」 「あとゴルフを始めた.日中退屈でさ.まだ真っ直ぐも飛ばないけど」 「子供達もひとり立ちして,家もだいぶんすっきりしてね.もういつでもそっちにいけるよ」 男は寂しそうに笑った. 妻

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        安寧〈ショートショート〉

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        記事

          Reincarnation〈ショートショート〉

          「生まれ変わったら,もっとラクな生き方を選ぶのになあ」 男の疲れた声が部屋に響く. 「うっ,頭が…」 椅子から立ち上がった男は,とつぜんの頭痛に耐えきれず床に倒れた. そしてその意識が戻ることはもうなかった. 都会のとあるビルの1室. そこは製薬会社の研究所だった. 倒れた男の腕時計の針はすでに次の日付の時刻を指している. 男の仕事は,害虫を殺すためのクスリを作ることだった.つまり殺虫剤だ. 当然,部屋中にムシの入った透明なケースが所狭しと置かれている. この虫たちを相

          Reincarnation〈ショートショート〉

          墜落〈ショートショート〉

          1人乗りの小さな飛行機が煙をあげながら島へ降りていく. 轟音とともに砂浜に滑り降りた機体から男が飛び出ると,すぐに機体は黒い炎に包まれた. 「ゴホゴホ,死ぬところだった」 「整備不良かもしれぬ,整備士めクビにしてやるからな」 男は操縦の経験は豊富であった. 世界中を飛び回ることが趣味なだけあり,腕はたしかだった. だが整備はいつも,安く雇ったどこの国の生まれともわからない男に任せきり. 機体の安全確認など考えたこともなかった. 政治家という身分の男は,そんな面倒なこと

          墜落〈ショートショート〉

          その日〈ショートショート〉

          今日も空が青い. 天気予報は晴れ. 雲は少し,洗濯物はよく乾く. 太陽が迎えに来る. 子どもは遊ぶ.大人は街へ. 年寄りは,パターゴルフに精を出す. サイレンが鳴る. 子どもは走る.大人は働く. 年寄りは,パターゴルフに精を出す. 轟音と一緒にやってきた槍が,小さな太陽で街を照らし始める. 子どもを照らす.大人を照らす. パターゴルフをする年寄りも照らす. 建物を照らす.文化を照らす.歴史を照らす. 強い光で照らされて,真っ白が全てに広がる. 今日は空が暗い. 天気

          その日〈ショートショート〉

          WE NEED YOU HERE 〈ショートショート〉

          スーツを着た男がビルの屋上に立っていた. 足元には綺麗に揃えられた革靴と「遺書」と書かれた封筒が1つ. まあ珍しいことではない.この国の1年の自殺者数は,小さい村の人口ほどもあるのだ. 男もその中の1人だった. 現代の生活は,ただ生きているだけでも忙しい. 就職してから必死に働いたが,男の温厚な性格が悪く働いたのかもしれない. 出世することもなく,良いパートナーや友人にも恵まれなかった. 手元に残ったのは,わずかな金と莫大な借金. まだ若かった頃,男は友人と会社を立ち上げ

          WE NEED YOU HERE 〈ショートショート〉

          So many men, so many minds〈ショートショート〉

          鏡を見ると,見慣れない二枚目の顔がこちらを見ている. そう.おれは生活費を切り詰めて貯めた大金で,顔面を美容整形したのだ. こう言うと驚かれるだろうが,元の顔にコンプレックスがあったわけでは無い. ただ,おれの惚れた女が悪かった. 月並みな表現だが,絶世の美女と言ってもいい. なにせ,カフェで働くその女を一目見ようと,行列ができるほどだ. だからその女と釣り合ういい男になるため,こうするしか無かったというわけだ. 「親に貰った顔を大切にしなさい」なんて説教を垂れる奴もい

          So many men, so many minds〈ショートショート〉

          青春18きっぷの旅〈魔境、静岡〉

          青春18きっぷ5日分,12050円. 1日当たり約2400円程度で日本中の電車に乗ることができる魔法の切符である. と言っても,年がら年中発売されているわけではなく,学生の長期休みに該当する期間だけだ. 遠くへ行こうものならとてつもない時間は掛かるが,お財布には優しい.深夜バスより優しい. 快速を使いこなせ田舎には存在しないが,ちょっと都会になると,「快速」「新快速」「特別快速」と呼ばれる列車が突如現れる. こいつらは非常に優秀で,マイナーな駅をかっ飛ばしながらグングン

          青春18きっぷの旅〈魔境、静岡〉

          腕時計と文化と機能と

          腕時計の機能. それは時間を私たちに教えてくれることだ. その上持ち歩くこともできる. Wikipediaで調べてみると,どうやら西暦1800〜1900年頃に初めの腕時計は造られたらしい. その後2度の世界大戦の中で,ストップウォッチ的な機能が搭載されたり,その性能は大幅に改良された. (その時代にGPSなど当然存在しない.飛行機は太陽の方角を頼りに,地図とコンパスと時計で飛んでいたはずだ) という事は,腕時計の文化・歴史というのはせいぜい100年程度だということだ.もっと

          腕時計と文化と機能と

          国家機密〈ショートショート〉

          「やられた.研究員の中にスパイが居たとは」 国防秘密研究所の所長は頭を抱えた. 極秘に進められていたのは,核ミサイル防衛用の電磁バリア発生装置の研究. この国は天然資源こそ豊富で,世界中の国に輸出をしているものの,人口は少なく経済発展も停滞しており,他国と戦争になれば勝ち目がないのは明らかであった. だからこそ平和路線を貫き,国土の防衛に研究費を潤沢に注いでいた. 世界の激しい軍事技術の競争のなか,国を守るためだけに作られた夢の装置だ. ただ一点,電力を大量に消費するこ

          国家機密〈ショートショート〉

          「並べない症候群」

          評判の良いの定食屋,新幹線乗り場,役所窓口,スーパーの精算レジ,更にはディズニーランド. 日常生活の中で行列に並ぶ機会は非常に多い. しかし列に並ぶのが非常にツラい方,苦手な方,言い換えるならば「並べない症候群」の人口は,日本の総人口の約4割を占めているとわたしは勝手に思っている. だからこそ,列で待つ人々の心理的負担を減らすため,遊園地などでは列のカタチに工夫が施されているのだ.(それでも待てない人は多い.) なぜ「並べない」のか 国内某所(心の中)で「並べない」理

          「並べない症候群」

          ウクライナ侵攻を整理する

          活字が苦手な人は,オリラジのあっちゃんがYouTubeに動画を出してるからそっちを見よう(ライブな情報かどうかは不明). 夜中にこれを書いてる理由は,Twitterやニュースアプリでは断片としての情報は手に入るんだけれども,連続した情報として捉えるのは難しいからである. あと,テレビで報道の時間が短い. 割と軍事進攻が現在進行形で起こっているのだが,今日中には特番が組まれるのだろうか. まずは「登場人物」を整理したい. ウクライナ 首都:キエフ 面積:約60万3000

          ウクライナ侵攻を整理する

          はじまりはじまり〈ショートショート〉

          「そのレーザー装置は生き物を照らすことで老化と若返りを自由に操ることが…」 そう言い終わるまえに,博士は胸を押さえて床に倒れてしまった. 「博士大丈夫ですか」 青年が駆け寄る. 彼は今日からこの研究所で助手をすることに決まっていた. 大学では宇宙理論を専攻していたが,生命の神秘を操る博士の研究に憧れ,大学を辞めてまで博士を追いかけてきたのだった. 「まだ生き返るかもしれない」 青年は,博士が握っていたレーザーを手に取り,床に横たわる博士を照らす. すると博士のシワは消え,

          はじまりはじまり〈ショートショート〉

          「YouTube Premium」に加入することが親孝行だったりする

          最近のテレビはYouTubeやNetflix,Amazonプライムビデオを見ることができる. 難なく. チャンネルを変更するように,ボタン一つで. これは,スマホの小さい画面で動画を鑑賞することを嫌っていた世代が,YouTubeへ流入してくることを意味する. つまり親世代だ. もう1つ上の世代もありえる. 情報の取捨選択昭和の人間を舐めているわけではない. しかし情報の正確さと絶対的な量は,その時代の比ではない. 当然これはインターネットの発達の結果だ. 平成生まれの

          「YouTube Premium」に加入することが親孝行だったりする