大企業優先施策が作り出す世の中
前回の記事で消費税について書いてみた。
そこにはとても景気が良いとは言えない現実があった。
しかし、今回は大企業が過去最高の利益を残しているという、いかにも景気が良さそうな実態について書いてみる。
大企業の法人税率の推移から見れる事
そして、下記は法人税率のこの約35年間の推移である。
見ての通り、企業の法人税率が下がっている。
しかも実際、様々な大企業向けの税優遇施策を組み合わせると大企業の実効税率は10.5%程度とも言われている。
法人税率が下がると企業は支払う法人税が少なくて済むという事が事実としてあるが、もう少し細かく見ていきたいと思う。
企業は儲かっても給料がそれほど増えないわけ
一つの例を挙げる。
会社は(例えば鉄鋼業であれば)、機械製造関連の取引先などから入る”総売上”から、かかった経費(材料費、固定費、外注費、仕入れコストなど)を差し引いて”粗利益”を出す。
そこから働いた従業員に対しての給与を支払った残りの利益として「営業利益」が算出される。ざっくり言うと、この利益に法人税率を掛け算した金額が支払う法人税
※その他に事業投資などで得る投資利益などもあるが、ここでは割愛
法人税率が低くなっているという事は、利益をたくさん残してもそんなに税金かからない。
であれば、上場している企業は利益をたくさん残して時価総額を上げたり、配当を多めに出したりして投資家からの評価を上げて、資本市場においてより優位に立ちたいはずだ。
使わなかったお金は内部留保として手持ち現金残高を増やせるのも安心だ。
それなら従業員に渡す給与、人件費は少なくしてコストを抑えよう!
っていう事にならないだろうか?
企業が利益をため込んで、内部留保が過去最高を更新し続け、株価は上昇し富裕層の投資家達がその恩恵をうける反面、給与所得が利益の上昇にそれほど連動しない状況では賃金が上がらない。要はお金がたくさんあっても、企業の預金である内部留保と投資家の範囲でお金が回っていて、実態経済の景気の牽引の最も大きな個人消費の主体である従業員にはあまりお金が回らない。
その結果、個人が潤わないので消費が活性化しない。お店での買い物や、レストランなどの外食を控えようとなる。そして、今後の高齢化&労働者人口の減少が予測されると、社会保障費増や、また増税があるかもしれないと思うと元々少なくなったお金をさらに貯蓄に回そうとするのではないか?
民間経済で消費が活性化しない状況であれば、お金がある大企業も設備投資や人員確保のために雇用拡大にも動く事はしないだろう。
それなら利益をたくさん残して、配当に回した方がいいと。
結局景気は良いのか?
大企業の好景気の正体は、
単に大きな会社が持ってる使わない現金残高が増えている
事と、
株価の上昇
という事で、
ほとんどの人の暮らし(一部の富裕層はすごく得をするが)恩恵を受けない好景気である。
むしろ、増税の影響で可処分所得は減り、実質賃金は下がり続けている。
名目的な賃金ですら、この30年で一人140万円/年 下がっているのに。
ちなみに下記は1985年からの一般会計の総税収(青線)と消費税収(赤線)の推移だ。
1.消費税での税収は国民の実質賃金が下がっているのに増え続けている。0%→3%→5%→8%→10%と率が増えてる
2.所得税や法人税を含めた総税収は上がったり落ちたりしながら実はあまり変わってない。
2については、消費税の増税されたタイミングから少しずらして、法人税を引き下げている事が総額が増えてない原因と思われる。
要は、社会保障を充実させるとか、国の財政破綻でとか言って消費税を引き上げる必要があるとかは全くのウソで、法人税減税、豊かな層をもっと豊かにするための穴埋めを豊ではない層にさせている実態。
大企業の業績がいいとか、株価がとか景気が良さげな話も、KPIだけで中身が全く伴ってないものである。
とにかく一人一人の所得(可処分所得)が少ない事でモノが売れない、資金体力の無い零細企業は潰れる、利益余剰金がある大企業だけが生き残れるなんて世の中でどこが景気が良いのだろうか?
これらを解決するためには、国民一人一人がまず現状に気づく必要がある。
※そうしないと選挙が成り立たない
何に?
架空の財政破綻論によって、増税=善
と刷り込まれている事と、
実は、不条理な格差社会のゲーム駒にされている
と言う事に・・・・・