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逆に、論についての考察。

令和3年4月19日晴れ

月曜日はカレー曜日。隔週で行われる設計ミーティングの後にまかない飯を作ることにして、4ヶ月目。普段全く料理をしない私もさすがに少しコツを掴んできたというか、何度も失敗を繰り返して、少しずつスパイスカレーの作り方がわかってきました。今日は初めてスタッフからのリクエストに応えて、レシピ本を見ながらスパイスを調合してみたところ、今までの半分程度しかスパイスが必要でないことに気づき、大きな衝撃を受けました。しかし、出来上がりかけたカレーを味見するとやっぱりずいぶん物足らなく、追加であれこれとスパイスをぶち込んで、結局、レシピ本とは違う仕上がりのカレーになってしまいましたが、自分では史上最高の出来上がりだと悦に入っています。スタッフからの評価もまずまずで、次回は生姜をみじん切りにしたら100点満点も手が届きそう感じました。レシピ通りに作るのも大事なのもわかりましたが、「逆に」それを無視するのもオリジナル感が出て悪くないと思った次第です。

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逆に?!は正論か?

いつの頃からか定かではありませんが、ふとした会話の中で「逆に」と言う間接詞がよく聞かれるようになり、すっかり日常の中に溶け込んでいるように感じています。上述の文章のように意識しないうちに私も使っているかもですが、個人的にそれが耳に残り違和感を感じることも少なくありません。新型コロナによる世界を巻き込んだパンデミックは世の中の価値観をすっかり逆転してしまった感があり、今まで正しいとされていたことが悪いことになり、逆に、よろしくないとされていた事を推奨される世の中になったこともその間接詞が耳につくようになった原因なのかもしれませんが、逆に、と、それまでの文脈と真逆の価値観を提示されて「いやいやそんな事はないよ」と思うことが増えたような気がします。パラダイムは人それぞれですし、光があれば必ず影があるように、世の中はすべからず表裏一体だと認識しておりますが、それでも普遍の真理とか、原理原則のような、人が生きていくにあたっての拠り所になるような価値観が存在していると信じている原理主義者の私としては、逆説は所詮逆説だと思うことが少なからずあるのです。

全ては幻想。かもしれない。

ただ、そんな私の凝り固まった考え方も単なる思い込みの可能性もあるわけで、少し違う角度から見れば、世の中には普遍の原理原則があると、私が信じ続けて、仕事にも生き方にも大きく影響されて判断基準としてきたパラダイムも単なる幻想かもしれませんし、これまでの価値観がガラガラと音を立てて崩れ去る昨今、残念ながらそれは確信に近づきつつあります。それは、これまで信じてきた価値観が全て間違えていたと言うことではなく、世界が変われば原理原則も変わって然るべしで、それを受け入れなければ新しい時代に生き残っていけない、進化論に書かれてあった生物の環境適応なのかもしれないと思ったりしています。最近、そんなことを痛感することが立て続けにあり、意識を変えなければいけないと切に感じています。

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進撃の巨人の世界観


私がパラダイムシフトの必要性を痛感させられた1つは、最終巻がもうすぐ発売になると話題沸騰中の名作漫画「進撃の巨人」の驚くべき展開とその結末(また最終巻は読んでませんが)です。(若干ネタバレで申し訳ないですが、)壁の中に閉じこもって壁外の巨人と戦っていた民族が実は巨人の正体であり、自分たちが巨人化する能力を持って世界から忌み嫌われ、悪魔と呼ばれる種族だった、そして、外界から潜入してきて破壊と殺戮の限りを尽くした敵と全く同じことを主人公のエレンが行い、同じ悲しみを連鎖させる物語はまさに逆転のパラダイムが世の中に存在し、その残酷すぎる事実が世界を支配しているという強烈な示唆でした。マンガを読んでいて、これは決して物語の中だけの話ではなくて、世界は虚構で出来ていて、正しいと思っている正義は単なる幻想ではないか、と考えさせられたのは私だけではないと思います。新型コロナによる世界の混乱、パラダイムの転換が起こるずっと前から、この漫画を描き続け、今のタイミングで物語を完結させる筆者の先見的な視点と問題提起の姿勢には心底脱帽しましたし、本当に驚かされました。

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FACTFULNESS(ファクトフルネス)

もう一つは一昨年、大きな話題となったファクトフルネスという本を最近改めて手に取ってみて、世の中に対して人はいかに激しい思い込みを持っているのかを再認識したことです。Amazonの書籍紹介文を以下に抜粋、転載します。

ファクトフルネスとは――データや事実にもとづき、世界を読み解く習慣。賢い人ほどとらわれる10の思い込みから解放されれば、癒され、世界を正しく見るスキルが身につく。
世界を正しく見る、誰もが身につけておくべき習慣でありスキル、「ファクトフルネス」を解説しよう。

◆賢い人ほど、世界についてとんでもない勘違いをしている
本書では世界の基本的な事実にまつわる13問のクイズを紹介している。たとえば、こんな質問だ。
質問 世界の1歳児で、なんらかの予防接種を受けている子供はどのくらいいる?
・A 20%
・B 50%
・C 80%

質問 いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいいる?
・A 20%
・B 50%
・C 80%

答えは本書にある。どの質問も、大半の人は正解率が3分の1以下で、ランダムに答えるチンパンジーよりも正解できない。しかも、専門家、学歴が高い人、社会的な地位がある人ほど正解率が低い。
その理由は、10の本能が引き起こす思い込みにとらわれてしまっているからだ。

上述のようにこの本に書かれている13の質問をクイズ形式で答えるサイトがあり、最近、身近な人に試してもらったところ、全ての人がチンパンジーと同等以下の正解率(30%)でしか正しい答えを出すことが出来ませんでした。要するに、それは思い込みに凝り固まっている、メディアが恣意的に発信する情報によって支配されている、自分の偏ったパラダイムで世界を見ている訳で、クイズにチャレンジした人はほぼ全員うちひしがれていました。そして、口々に「もっと世の中の事実をしっかり見て、偏ったバイアスから脱却するようにしたい」と言われていました。下記URLから是非試してみてください。笑 

『ファクトフルネス』チンパンジークイズ=https://factquiz.chibicode.com/


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ファクトを打ち消すパラダイム

そんな、真摯に反省する真面目な人たちに好感を持つと同時に、私が感じたのは、ベストセラーに書かれている内容に基づいたファクトを提示され、また一瞬でそれを鵜呑みにしてしまう人の怖さです。今の世界では当たり前ではありますが、ファクトはフェイクではないと完全に言い切れるのは非常に難しく、それは大ベストセラーだからと言って例外ではありません。
ネット上では、あっという間にデーターが20年前で止まったままだとの批判の記事も散見されますし、ハーバービジネスオンラインというサイトでは、『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器 日本でも見られるネット世論操作はすでに「産業化」している――』という本を書かれたノンフィクション作家が延々と反論を主張した記事を投稿されています。以下に抜粋。

・原因や対策については根拠となるファクトがない。根拠となるファクトが明示されているのは誤解や偏見に関してだけ。
・著者が紹介している誤解や偏見を生む10の「本能」が原因として妥当であるかどうかの検証はどこにも書かれていない
・ファクトとなる統計調査の結果や心理実験の結果などがあるべきなのだが、それはない。根拠がなければ単なる仮説に過ぎない。
・作者はおそらく意図的に下記のふたつに触れていない。作者の知識と経験ならそこに気づかないはずはないと思う。
1,体感事実から生まれる恐怖は社会の重要な要素として組み込まれ、産業を成立させる基盤のひとつになっている。
2,体感事実は単純なパーセントでははかれない。可視化される世界が広がるほど、体感事実と統計事実の乖離は大きくなる。
・本文と対応がない時点で出典としては意味をなさない。ネット上の詳細な脚注も原因と対策の検証についてはほとんど触れていない。
・根拠となるデータが20年以上前のものもかなりあったし、本書と通じるテーマや事物を扱っている箇所も散見された。
  出典:ハーバービジネスオンライン 一田和樹氏の記事より

柔軟な姿勢と信念とミッション

この反論記事を読んで、ファクトを否定するファクトなのか、元々ファクトフルネスは恣意的な情報を集めたバイアス誘導の本だったのか?ファクトとフェイクの境目はどこにあるのか?と疑問を感じ、頭が混乱してしまう人も少なからずいると思います。ただ、私が思うのは、世界は逆転のパラダイムに移行したのもファクト、私の中で生きる糧として原理原則論があるのも事実、社会も組織も単なる幻想なのかもしれないのもファクト、動けば腹が減り、体が健康ならモチベーションが上がるし、寝不足では頭の回転が悪くなるのも全てファクト(事実)なのです。確かなのは、真実も正義も全ての人の中にあり、それらは全てファクトであり、その中で自分が何をやりたいか、成すべきかを考えて人生に向き合うしかないし、それを見つけて、本当か嘘かわからない世界だとしても、信じた道を進むしかないと思うのです。ただ、いつも謙虚に知らない事実で世界は埋め尽くされているというファクトには正面から向き合う必要を感じます。
この複雑で面倒臭い世界を少しでも良きものにして次の世代にバトンを継ぎたいものです。

◆四方良しの世界を作る株式会社四方継のHP:
https://sihoutugi.com
◆一般社団法人職人起業塾のオフィシャルサイト:
https://www.shokunin-kigyoujyuku.com
職人育成、人事制度改革についての相談はこちら→
https://www.shokunin-kigyoujyuku.com/application/contact/

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