坤為地の世界に生きる 〜超訳 易経〜
最近になってコツコツと易経を学んでします。
国民教育の父と呼ばれた故森信三先生の薫陶を学び続ける「実践人の家」でご縁を頂いた竹村亜希子さんの著書、「超訳 易経」を読んではネットで文献を拾い理解を深めています。学びを進める中で、改めてこれは東洋哲学の根幹を担う思想なのだと改めて気付かされました。
陽は龍の物語
中国の古典、東洋哲学の源流と言っても過言でない四書五経の中でも最も古く、重要視されている易経。
にも関わらず、占いの書かと勘違いしてその方面にあまり興味がない私はこれまで手付かずにおりました。
私が校長を務めるマイスター高等学院の授業では四書五経の中から論語と大学をテキストに使って人としての在り方を生徒に問いかけています。大きな勘違いしていたことを鑑みると恥ずかしい限りです。
竹村先生の講演で、陽の卦である「乾為天」は龍が成長し天を駆け巡り、最後は老いて衰える物語だと聴いて興味を持ち、その場で即、著書を購入して学び始めた次第です。漸く易経は占いの書ではないのだと今更ながら理解して、時間をかけて学び直そうと地道に取り組んでいます。
歴史と自然の摂理
君子占わず。との言葉は易経を学べば占いに頼ることなく、未来が見える。というよりは未来への不安がなくなるとの意味とのこと。私は経営実践研究会の分科会でオムロンの創業者、立石一真氏が提唱した未来学、SINIC理論研究委員会に所属して、その理論の社会実装を模索しておりますが、そこでもまず歴史をミクロとマクロの視点を持って深く考察するところから進めるプログラムを組み立てています。そして、自然の摂理や法則性が取り入られているのは、完全に易経に通じます。
悠久の時を経て長年に渡り受け継がれてきた古典を学ばずして、この先の未来は見えないのだと思います。
坤為地の時代
竹村先生の「超訳易経 陽 乾為天」「超訳易経 陰 坤為地ほか」の2冊を読んで強く感じたのは現在は、完全に陰の時代に入っているということ、坤為地の卦です。
陰極まれば陽となる。との、易経を出典とした有名な言葉があります。
今や国内の政治も経済も混乱を極め、日本は人口減少に歯止めが効かず、国民は閉塞感に包まれて若者は希望を無くして凶悪犯罪に走る。
また海外に目を向ければ、いつ第3次世界大戦が起こってもおかしくない程、格差と分断が極まり、毎日、圧倒的な暴力が公然と行われています。
内憂外患の今の世の中が、既に陰極まっており、これから陽に転じると信じたいところですが、実際のところはアメリカの政権交代や中東、ウクライナ情勢は予断をゆさない状況で、まだまだ深いカオスの陰に突き進みそうな勢いです。
易経で陰から陽に転じる卦は「地雷復」、私が年賀状でいつも使っている「一陽来復」の言葉の元になっています。
古来から日本でも一番昼が短く夜が長い冬至が「陰」から「陽」にむかう日とされ、陽に転じる兆しを感じ祝う日とされてきました。
今年の冬至は12月21日とのこと。出来ることならなんとか年内に明るい兆しを感じたいものです。
来復するは、天行なり。
今の時代、これからの日本に絶望しそうになる人も少なからずいると思います。人口減による圧倒的な内需の消滅は国内産業、地域に根ざした地場産業の存続を許しません。それどころか、自治体自体が立ち行かなくなり、地方都市は日本の国として成り立たなくなる可能性も示唆されています。
易経を学ぶと、陰陽は一体であり、お互いに交わりながら途切れることなく巡る摂理が繰り返し書かれています。
今回、ご縁を頂いて入門書を手に取りましたが、易経を継続的に学び続け、世の流れを俯瞰してみる目を養えば、暗黒のディストピアになろうとしている現在の状況や、厳しい経営環境の変化さえも常に光を見出せるようになるのではないかと感じました。
易経にも暗黒の時代を切り開くのは地の人の志が繋がった時だと地天泰、天地否の対の卦に書かれています。
世の中はすべからず表裏一体、陰極まれば陽となる。
もうあかん、ダメや。と絶望を感じる時ほど、陽に転じるきっかけを掴む時。
そして陽を呼び込むのは自然の摂理、天行、万物の法則に従って目の前のことを地道に行うこと。未来の光を信じて。
そんな希望と力を頂ける素晴らしい書籍でした。
易経の入門書、強くお勧めします。
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