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タイミングは、いつだって今。 私が企画生になる日まで (企画メシ2021)

 ふわふわした気持ちと、あたたかい余韻がずっと続いて、ホテルについてからもなかなか眠りにつくことができなかった。窓の外には、みなとみらい の夜景が広がる。
 コピーライターの阿部広太郎さんが主宰する連続講座「企画でメシを食っていく(企画メシ) 2021」。今年6月に始まった講義は、12月11日に終わりを迎えた。最終講義は、横浜みなとみらいのシェアスペース「BUKATSUDO」とオンラインをつないでの開催。私は現地へ足を運んだ。
 企画メシ完走から1週間。余韻に浸りながら、私が企画生になるまでのことを振り返ってみる。

少しだけ前に進んでた

 福岡の情報紙編集部で働いていた私は、地元に戻り、広告会社でライターとして働くようになった。仕事はライティングが中心だけれど、時にコピーを求められることもある。コピーとライティングは頭の使い方がかなり違う。戸惑い悩み、宣伝会議の「コピーライター養成講座」に通った。

 阿部広太郎さんの存在を知ったのは、基礎コースが修了した少し後。宣伝会議コピーライター養成講座60周年を記念した「コピージアム2017」のイベントだった。2018年3月に福岡で開催されたトークセッションに、阿部さんが登壇。当時、私は阿部さんの名も知らなかったのだけれど、話に引き込まれ、たくさんメモをとった。

 「恥や照れを捨ててSNSで発信する」という話を聞き、Twitterを始め、阿部さんの言葉を追いかけるようになった。阿部さんの最初の著書『待っていても、はじまらない。潔く前に進め』を読み、始めたばかりのnoteで感想文を書いた。ちなみにnoteを知ったのも阿部さんのツイートからだ。この感想文を書き上げたらDMを送ろう、そう思って公開すると、連絡する前に阿部さんがツイートしてくれ、noteの記事にもコメントが届いた。

 それまでの私はイベントや講座に参加するだけだったのに、なぜか阿部さんを招いて、地元でトークイベントを開いてみたいと思うようになった。

眩しくて眩しくて、目を伏せていたあの頃

 著書やSNSで、阿部さんが主宰する講座「企画でメシを食っていく」の存在は知っていた。でも、私にはあまり縁のないものだと思っていた。ただ、阿部さんが2019年に始めた「言葉の企画」にはひかれた。エントリーシートまで書きかけたが、間に合わなかった。当時はリアル開催。私の住む町からは早朝の飛行機で向かうしかない。もし応募していたらどうなっていただろうと思う。

 「企画メシ」や「言葉の企画」の開講後は、関連したツイートがあふれ、noteにレポート記事が上がる。講義の感動や熱気あふれる文章が眩しくて、追い続けることができなかった。

 その年の夏、「企画メシ」と「言葉の企画」の企画生(受講生をこう呼ぶ)が登壇する報告会が開かれると知り、参加することにした。いつか阿部さんを招いてトークイベントを開きたい。そのためには、阿部さんがつくる学びの場を見てみたいと思ったのだ。

 会場の下北沢にある書店「B&B」は、たくさんの人で埋め尽くされていた。現役の企画生たちが話す講座の様子や、取り組んでいる企画の話に、ただただ圧倒された。特に「ことばの日」をつくるプロジェクトには驚いた。

 イベント終了後、登壇者として参加されていたユースケさんと言葉を交わした。「仕事も年齢もさまざまな人が参加していて楽しいですよ」と聞いたけれど、あのころは自分が企画生になれるとは思っていなかった。会場の外で参加者を見送る阿部さんに、持参した著書にサインをもらい、封筒に入れた企画書を渡した。阿部さんに講師をお願いするトークイベントの企画だ。数ページにわたる企画書を書いたのは初めてだった。

 報告会では、BUKATSUDOで1日イベントを行う「企画祭」の発表があった。行けないなあと思っていたのだけれど、ちょうど別の用件も重なり、参加を決めた。阿部さんと講師の方のトークイベント、歴代企画生たちの多彩な企画。私は1日券を手に、最初から最後まで会場に入り浸った。大人の本気の文化祭みたいな熱気とぬくもり。企画生同士のつながりも眩しかった。

 会場に用意されていた「ことばガチャ」。帰る直前に、もう一度チャレンジしたら、「第一番」が出て、阿部さんのサイン本をいただいた。既に持っていた本と一緒に、今も本棚に並んでいる。

世界が狭まり、広がった

 2020年、「企画メシ」は全国で開催すると発表があった。「座学から動学へ」。地方で暮らし働いてきた私。これは絶対に参加したいと気持ちが高まった。

 後日、トークイベントの企画書に対しても、阿部さんから「ぜひ実現しましょう」とメッセージをもらった。つたない企画書だったけれど、想いが届いたのだとうれしかった。しかし、それから数カ月経ち、世の中の空気が変わった。移動が制限され、家にこもる日々。私も不安で進むことができなくなった。

 全国での開催を予定していた「企画メシ」も延期。「ことばの日」の記念イベントもオンラインでの開催となった。そのイベントで、「言葉の企画」をオンラインで開催することが発表された。阿部さんは止まっていなかった。「未来に待ち合わせするための連続講座」。先着100名の枠がみるみる埋まり始めた。

 私もエントリーシートを書きはじめたが、なかなか応募のボタンを押せなかった。直前に、私は一つの講座を受講し格闘した末に、新たな挑戦をしようとして断念していた。世の中が混沌とする中、別のスキルを身につけようかと考えもした。このまま学び続けるばかりでいいのかな?そんな疑問が生まれた。悩んでいるうちに、1日も経たず定員が埋まった。

 迷った末の結果だったが、やはり残念で、「言葉の企画生」になった人たちのツイートを見て、うらやましく思った。そんな時、オンライン講座「Schoo」で阿部さんの講義「心をつかむ超言葉術」が始まった。チャットにあふれるあたたかい言葉に、心がほかほかあったかくなった。

 それまでは、学ぶなら絶対リアルの場で、と思っていた。講師の熱気に触れ、共に学ぶ仲間と切磋琢磨できる。でもSchooの講義やその他の講座も受講し、オンラインでも学びを深め、つながることができると知った。

タイミングは、今だった

 2021年も先の見えない状況が続いた。そんな中、「企画メシ」をオンラインで開催すると発表があった。「いつか仕事で再会するための連続講座『企画メシ2021』」。

 今年は「言葉の企画」じゃないんだ。言葉の力を磨きたいと思ってきたので少しためらったが、食の企画に本の企画、ゲスト講師と講義内容を見て興味が湧いた。応募条件のプレイベントを2回とも視聴し、応募を決めた。少し不安だったのが、年齢のこと。私はいま40代。企画生は20代・30代が中心みたいなので、応募要項に年齢の規定がないか何度も見返した。

 今回は、先着順ではなくエントリー制。応募締め切りの直前まで、文章を考えてから応募ボタンを押した。エントリーシートを見返すと、こんなことを書いていた。

   Schooでの阿部さんの講座に参加し、他のオンライン講座なども受講する中で、オンラインでも深く学べると実感しました。40代という年齢を気にしていたのですが、これも勝手な決めつけかもしれない、と思い応募を決めました。
  (企画メシを通して)企て、行動し、実現・継続できる人になりたい、と思っています。 ずっと東京や都会がうらまやしいと思っていました。 なんでもあるし、なんでも選べる。学びの場も文化や芸術も。でも今、地方にもさまざまな可能性が広がっています。  地元の九州で、関わる人や地域を幸せにし、自分も幸せにする企画をできればと考えています。
 今まで私は周囲の目や評価を気にして、自分で自分にダメ出しすることが多かったのですが、自分も楽しく幸せになり、周囲にも喜ばれるような企画をしたいです。  

 選んでもらえるような気がしたけれど、でもやっぱり、選ばれないかもしれない。そわそわしながらメールの通知をチェックし、企画生決定のメールを受け取った。しばらくして、阿部さんから、最新の著書『それ、勝手な決めつけかもよ?だれかの正解にしばられない「解釈」の練習』と一緒に、紙飛行機の形をした招待状が届いた。いよいよ始まる。この半年間は、本気で真剣に取り組まなければいけない。期待と不安を抱えながら、その日を迎えた。

 6月26日の第1回目の講義を前に、取り組んだ課題は「自分の広告」。私は事前に友人Kちゃんに自分の企画を見てもらい、試行錯誤しながら仕上げた。毎回の課題に悩み、同期の企画に圧倒され、悔やんだり、喜んだり、そんなことを繰り返すうちに、あっという間に半年が過ぎた。最後の課題は「自分の企画」。不思議に、最初の「自分の広告」とつながるものになった。

 最終講義を終えて、Kちゃんに「企画メシ完走」を報告すると、こんな返事が届いた。「企画メシおつかれさまでした。毎回noteでおもいが届いてましたよ。2021年の企画メシは内容・仲間ともにShokoちゃんのタイミングだったんだとおもいました」。見守ってもらえていたことがうれしく、本当にそうだなあ、としみじみと思った。

 最終講義で初めて顔を合わせた人たち、オンラインでつながった人たちの顔が浮かぶ。今年参加しなかったら、この人たちとは出会えなかったんだ。講師の顔ぶれだって違うし、阿部さんの話す言葉も変わるだろう。そう思うと、やはり私のタイミングは、今だったのだと思う。

自分に向き合いつづけた半年間

 「企画メシ」は、スキルやノウハウを身につける講座とは、ちょっと違う。半年間の講義を終えて感じているのは、自分に向き合う場所だったということだ。阿部さんのnoteを見返すと、ちゃんと書いてあった。

 たくさんの選択肢がある中で、この「企画でメシを食っていく」という場にピンと来た方に参画いただきたい。
 ノウハウだけを学びたいという方には不向きだと考えています。
 僕はもちろん、ここに集う方たちとの関係の中で自分を見つけていく時間にします。
 
企画に対する強い気持ちがある、世代を超えた仲間が集まり、企画個性を磨き合う。切磋琢磨できる関係になれる。そんな場にします。

いつか仕事で再会するための連続講座『企画メシ2021』やります。

 阿部さんの本に、「あなたはあなたになる」という言葉がある。他の誰かになろうとしていた私は、この半年で自分を見つめ、自分と出会った。

 何度も読み返したくなる、この一節を書き残しておきたい。

 企画することは、自分の人生を選ぶこと。
 何者かになりたい、と人は口々に語りたかがる。けれど、なれない。なる必要もない。
 本当に納得できる人生を生きるためにも、自分で問い、自分の答えを言葉にしよう。
 あなたはあなたになっていく。

『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術』

 来年の「企画メシ」が始まったら、私は熱い日々を懐かしみ、そして少しさびしく感じるだろう。実はもう、すでにさみしく、すでにあの日々が恋しい。阿部さんも、ずっと伴走してくれた事務局のみなさんも、2022の企画生と本気の関わりを始める。今度は私たちが先輩企画生として、見守る側に回る。今までの先輩たちがそうしてくれたように。

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 今年の企画メシは終わったばかりですが、既に次への助走が始まっています。最終講義の2日後には、先輩企画生たちの報告会が行われました。そして12月20日には、ともに学び合った同期の仲間が登壇する「完走報告会」が開催されました。現在、アーカイブ視聴チケットを販売中です。
※イベントは終了しました

「企画メシ」が気になる方、ぜひ最初の一歩を踏み出してみてください。少し前の私がそうしたように。

 

 

 



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