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フランス語の「時間ありますか?」の罠

つい先日、公園をプラプラしていたら、サッカーボールを小脇に抱えた中学生くらいの少年に、

”Madame, est-ce que vous avez l'heure?"

と突然話しかけられた。

これとまったく同じ質問を昔、投げかけられたことがある。

それはフランス留学2日目のことだった。

語学学校の初日の試験を終えた帰り道、30代位の男性に突然、"Exusez-moi(すみません)”と声を掛けられた。

試験全然できなかったなぁ~なんてボケっと歩いていたので、急に知らない人に話しかけられて、完全に挙動不審の私。

男の人はそのまま、

”Est-ce que vous avez l'heure?"

と続けた。

フレーズは完璧に聞き取れた。
瞬時に頭の中で単語を翻訳する。

Est-ce=疑問形
vous=あなた
avez=持っている
l'heure=時間

=「あなた時間もっている?」

私の頭の中の翻訳機がピコーンと和訳をはじきだした。

=「今時間ある?」

うら若き乙女に「今時間ある?」だなんて、ナンパか?
フランスでは日本人女性はナンパ被害に遭いやすいから気を付けろ、って、よく言うし。

もしかしたらナンパじゃなくて、スリかもしれないし、何か怪しい勧誘で変な壺とか売り付けられるかもしれない。とにかく知らない人とは関わらないのが、正解!知らない人にはついて行っちゃダメって、小さい頃からお母さん言ってた!

私の危険察知アラームがピコーンと赤く光ったので、「ノン、ノン」と言いながら、足早にその場を去ろうとした。

すると、男の人は1歩も引かず、自分の手首と私の手首を交互に指さしながら、同じ質問を繰り返し、ぐいぐい接近してくる。

こわいー!おまわりさんー!

そこでふと自分の手首に着けた腕時計を見つめて、気づいた。

あ、もしかして時間聞いてるかんじ?

はい、フランス語学習者の方は、またもやとっくにお気づきだろうが、

Est-ce que vous avez l'heure?"

というのは、「時間わかりますか?」という定型表現である。

ただ時間を知りたいだけの男性を悪者認定して、ノンノンと逃げ惑う私。何がノンノンだよ。腕時計着けてるくせに!と男性は思ったに違いない。は、恥ずかしい~!

だが、おかげさまでこの表現はバッチリ覚えることができた。語学というのはこうやって失敗して恥をかいて、覚えていくものなのだろう。

それにしても冒頭の少年といい、この男性といい、そこら中にフランス人いっぱいいるのに、どうしてどこからどう見てもアジアな平たい顔族にわざわざ話しかけてくるんだろう。謎である。




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