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在外公館派遣員のおしごと事情

以前、スイスの在外公館で派遣員として勤務していた。

で、「在外公館派遣員」って何の仕事をするの?と疑問に思う人も多いはず。

業務内容に関しては公式では、以下のように述べられている。

具体的な仕事の内容は在外公館によって異なりますが、主に語学力を活用した様々な業務の支援を行うこととなります。これには公用出張者が来訪する際の空港における作業やホテルの予約及び会計、庶務などの部署での文書作成や対外的な折衝への立ち合いなどが含まれます。
一般社団法人 国際交流サービス協会HPより)

わかるような、わからないような…?

ポイントは業務内容は在外公館によって大きく異なるということ。

在外公館といっても、たとえば館員人数10人程度の小公館から、50人以上の大公館まで規模はさまざまである。

メイン業務は便宜供与

通常、派遣員は「便宜供与」と呼ばれる、日本から来訪する各省庁の要人や出張者がスムーズに出張先で任務を終えられるようサポートする業務がメインとなる。具体的には、空港の出迎えやホテル予約、配車の手配など。

たとえば、フランス大使館のような大きな公館であれば、年がら年中出張者がやってくるし、総理大臣や外務大臣など国のトップの来訪も多い。よって、フランス大使館の派遣員は、この「便宜供与」が業務のほとんどを占める。

以前、休暇で日本に一時帰国した時、帰りにパリ乗り継ぎのフライトに乗ったら、どうやら日本からの公用出張者と同じ便だったらしく、飛行機を降りたら、出迎えのためスタンバイしていたフランス大使館の派遣員同期に偶然遭遇したことがある。
あちらはビシッとスーツ。こちらはすっぴんメガネにスウェット。
久々の再会がこんな形になるとは。休暇の飛行機移動も油断がならない。

またの名を、何でも屋

一方、例えば出張者の少ないアフリカの小国の大使館であれば、「便宜供与」は月に数える程しかない。

ただ館員が少ない分、1人がカバーしなければいけない業務が多いため、派遣員もそのサポートにまわるので、会計や領事業務(査証、現地邦人の対応など)もこなす。公用品の買い出しのため、はるばる他国へおつかいに行く。雑用は全部お任せあれ、何でも屋のポジションである。

ちなみに私はというと、規模でいうと中~大公館に所属していたので、時々大きな「便宜供与」もこなしつつ、新着館員の生活サポートや、館内資料の翻訳や作成、と意外と事務作業も多かった。

業務内容は公館による、本当にこれにつきる。

語学能力

前回の記事にも書いたように、私はフランス語の試験が壊滅的だった。

後に、フランス語受験の派遣員同期と研修で話す機会があったが、さすがに丸々1問白紙で出したのは私くらいだった。なんで受かったんだろう。

したがって、語学力に一抹の不安を抱えての渡航だったのだが、「語学を活かした業務」と言っても、さすがに外交文書の翻訳や交渉の場の通訳を任されることは100%ない。

日本人館員が全員フランス語を話せるわけではないので、現地採用の職員との間に入ったり、現地のホテルや空港スタッフとやりとりをしたり、そういう場面で語学力が役に立つ。フランス語の日常的なコミュニケーション能力があれば、なんとかなる。

私の場合、学生時代にフランス語を勉強しただけなので、仕事の場でのフランス語はやりながら覚えた、という感じ。
最初はフランス語で電話をかけるのも、日本で新入社員だった時並にドキドキしたが、慣れればどうにかなるものである。

大使館で働くというと、国際的で華やかな外交の場で活躍する姿を思い浮かべるだろうか。そういった仕事に憧れている人には、派遣員の仕事はつまらなく思えるかもしれない。派遣員はあくまでもその華やかな舞台を支える裏方でしかないから。

それでも、普段の生活では関わりのない政治や外交の場を垣間見れるのは面白いし、貴重な経験になるはず。海外生活や仕事で学ぶことも多い。
語学に自信がなくても、私みたいに意外とどうにかなってしまうパターンもあるので、もし海外で働いてみる選択肢として少しでも気になるようであれば、是非トライしてみてほしいと思う。








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