不登校増加への対応 ー子どもの特権を返してあげることー


2020年10月23日静岡新聞1面に「静岡県内不登校、最多6281人 小3、中1進級で倍増、19年度公立校」という記事が掲載されていました。


私は、不登校や発達障害などの子どもの学習支援を浜松で行っています。

直接支援しているお子様を持つ保護者以外からも年間100件近くの相談を受けています。たくさん相談を受けるなかで、今後、不登校に陥る可能性のあるお子様の特徴というものがわかるようになってきました。

不登校の原因は、9割近くが「よくわからないもの」だと言われています。わかるようになったものとは、その数割程度ということを最初にお断りしておきます。


本人の発達特性上、学校の教育活動での学習内容(要求)に応えきれなくなった時に不登校は起こりやすくなるようです。

本人の発達特性とは、ワーキングメモリと呼ばれる能力が他の特性に比べて極端に低い場合です。たとえば、ラーメン屋で、「塩ラーメン麺、醤油ラーメン、味噌ラーメンネギ大盛」と注文されても全部忘れてしまうようなタイプの人です。

こういった特性がある人が、一斉に授業を受けるスタイルから、子ども同士でディスカッションしたり、人前で発表しなければならないような学習が導入され始め、他の子のように上手にできないということを子ども自身が自覚し始めたころから不登校傾向になりがちです。


苦手を補うために、トレーニングや学習で埋め合わせたいと思うかもしれませんが、そう簡単ではありません。

私のところへの相談も、「自分の意見が人前で話せるようにさせたい」「作文が書けるようにしてもらいたい」「ワーキングメモリを鍛えたい」といった相談や要望がありますが、最初に取り組むべきことは、そこではないケースが少なくありません。

弱いところに負荷をかければ、心が折れ、不登校という形で現れたりします。


成長過程の子どもにとって必要なものは、自分以外の存在。仲間との関わりです。特に同世代です。子どもは子どもから学びます。一昔前であれば外遊びの中で培われてきました。

残念ながら、今は子どもから外遊びが失われてしまってきています。その代替えとして、あまり言語活動が必要とされない、文化活動や自然体験、スポーツ活動の参加を勧めています。

その中で、感情をあらわにできたり、解放感といった「楽しさ」が得られるようになります。その具体的な活動の場として、「ゆるすぽ」というボランティア活動を実施しています。

こういったものを土台として、子どもは苦手なことや自分自身の将来に向き合えるようになっていきます。



かつて子どもであれば誰でも「遊び」「楽しむ」という特権が与えられていました。今、私たちが子どものためにしてあげられることは、不登校という一つの問題を取り出して対処していくことだけではなく、子どもが子どもとしての時間を満喫していく機会を保障してあげることも必要ではないでしょうか。


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