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「観る将」が観た第70回NHK杯2回戦第15局

11月22日にNHK杯2回戦、藤井二冠と木村九段の対局が放映されました。
解説が羽生九段ということもあり、将棋ファンの間では楽しみにされていた一局でした。

戦型は先手の木村九段が角換わりに誘導しました。王位戦七番勝負では先手番では相掛かりを採用していた木村九段が、敢えて藤井二冠の得意とする角換わりを選択したことは、この一局でリベンジを果たしたい執念のようなものを感じます。
序盤は角換わり特有のジリジリした手待ちが続き、木村九段が▲4五銀と仕掛けましたが、藤井二冠はいったん△6三銀と引いて開戦を避けました。更にお互いに駒組みが続き、銀矢倉の好形を築いて局面が飽和状態となり、木村九段が▲4五歩~▲3五歩と仕掛けます。藤井二冠が△8六歩~△8七歩と反撃すると、木村九段は強く▲8七同玉と応じ、解説の羽生九段を唸らせます。
藤井二冠は更に△3六歩と桂取りに歩を伸ばしましたが、木村九段は手抜いて▲5三歩成~▲3四歩と攻め合いを目指します。木村九段が▲7四角成と飛車を取りに行くと、今度は藤井二冠が手抜いて△7七歩~△4八と と敵陣に迫ります。しかし、木村九段の▲5三歩成~▲6五馬~▲3四桂~▲3五銀という攻めが速く、勝負あったかに思われました。
ここで藤井二冠の△7八銀が起死回生の勝負手でしたが、木村九段は冷静に▲同金と応じ、△3七飛の王手銀取りには馬をタダ捨てする▲4七馬という派手な受けが決め手となり、着実な寄せを魅せた木村九段が最後は即詰みに討ち取りました。

本局は、木村九段が中盤の藤井二冠の攻撃に対して、強気の受けから一転して一気に踏み込み、そのまま押し切ったように思います。30秒将棋の中、終盤の藤井二冠の勝負手に対しても見事な受けを披露し、逆転を許さない完勝だったと思います。王位戦七番勝負では思いもよらない4連敗を喫しましたが、本局は木村九段の実力を示したリベンジとなりました。

藤井二冠は、このNHK杯ではまだ目立った活躍がありません。タイトル戦や朝日杯のように持ち時間を使い切っても1手60秒考えられる棋戦では、秒読みになってもミスが少ないと評価されていますが、NHK杯や日本シリーズのように1手30秒しか考えられない超早指し棋戦にはまだ課題があるのかもしれません。今期は同様に1手30秒になる銀河戦でまだ勝ち残っていますので、なんとか苦手を克服して優勝して欲しいと思っています。

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