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「観る将」が観た第33期竜王戦第一局

羽生九段がタイトル獲得通算100期に挑む、注目の竜王戦がいよいよ開幕しました。羽生九段は通算100期に王手を掛けてから4度目のタイトル戦となり、そろそろ節目のタイトル獲得を果たしたいところです。豊島竜王はタイトル獲得通算5期となりましたが、これまでの3度の防衛戦はすべて失冠しており、何としても初防衛を成し遂げたいところです。どちらが4度目の正直となるか、お互いに負けられないシリーズとなります。

両者はこれまで。豊島竜王の16勝17敗と互角の戦いを繰り広げています。番勝負としては、羽生九段が第62期王座戦、第86期棋聖戦で豊島挑戦者を退けた後、第89期棋聖戦で豊島八段(当時)が羽生棋聖(当時)から棋聖位を奪取し、初タイトルを獲得して以来通算4度目の顔合わせとなります。

前日の会見で「自分の今までやってきたことを盤上で出すしかない」と語った羽生九段は、振り駒で先手となり矢倉に誘導します。「自分の自信のある将棋、力のある将棋をしたい」と語った豊島竜王は6手目に△7四歩と急戦の構えを見せ、△7三桂~△6五桂と仕掛けます。これに対し羽生九段も銀を逃げずに強く▲2四歩と踏み込みました。銀桂交換の後、角交換と激しい展開となり、一手間違えると形勢が大きく傾きそうな局面が続きましたが、AIの評価値では50-50%とまったく互角の状態で羽生九段が27手目を封じました。

2日目もお互いに馬を作り合い、激しい応酬となりましたが、羽生九段の終始強気の差し手に対し、豊島竜王は隙の無い指し手で徐々にリードを奪います。最後は豊島竜王の△5七銀が決め手となり、△5七香を見て羽生九段の投了となりました。

本局は双方居玉のまま52手という短手数での決着となりましたが、序盤から両者が一歩も引かずに攻め合い、一手一手に充分時間を使って長考を重ねる濃厚な一局となりました。豊島竜王の急戦策に対し、羽生九段も豊島竜王の読みを上回る積極策で対抗した姿勢が印象に残ります。

豊島竜王は、名人戦の失冠以降、叡王を奪取し藤井二冠に連勝する等、充実ぶりが光ります。羽生九段も、逃げずに戦う姿勢を貫き、本シリーズの今後の激闘を予感させる素晴らしい開幕局となりました。第二局以降も、両者が切れ味鋭い攻防を繰り広げる好局を期待したいと思います。

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