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翔泳社が、「福祉の本」をテーマにnoteをはじめた理由

皆様、初めまして。

翔泳社で「福祉の本」をつくる編集部で編集長をしております、小澤と申します。翔泳社では2020年1月から、「翔泳社の福祉の本」をテーマにnoteをはじめました。

この記事では初めて見てくださった方やすでに知ってくださっている方にも改めて、なぜnoteをはじめたのか、そもそも翔泳社とは、という自己紹介をしたいと思います。

まず簡単に会社の紹介をします

翔泳社は1985年創業の出版社です。会社はPCソフトのマニュアル制作からスタートし、87年に初めての本を刊行してから、主にコンピュータ・IT関連書を刊行してきました。IT業界の人からは割と知られた出版社……のハズ。

ビジネス書やWebメディアにも力を入れていまして、出版社としては比較的若い会社です。

私もずっとIT関連書をつくっていたのですが、10年くらい前に新しく部署が立ち上がり、そこから福祉ジャンルの本をつくるようになりました。

noteをはじめたワケ

翔泳社の中で「福祉の本」をつくりはじめて、早10年。IT関連書の歴史には及ばないものの、なんだかんだ続いています。そんな折の、東京オリンピックイヤーの2020年、私たちはnoteをはじめてみました。 

理由は、私たちがつくる「福祉の本」をもっと知っていただく機会を増やしたいため。そして、読者の皆様といろいろ共有するうちに何か新しいものが生まれないかと考えているからです。

私たち編集者は、それぞれ問題意識をもって本を企画します。刊行されれば著者の想いや本の内容は読者に届きますが、編集者として本をどういう想いでつくったか、どういう人に読んでいただきたいかといったことは表に出る機会がありません。ですから、このnoteでそうした気持ちを福祉に関心がある方々と少しずつ共有していけたらいいなと。

今後更新していく記事では刊行している本の中で読んでみていただきたい部分を転載したり、企画時の熱もお届けしたりできればと思います。 

いずれは著者さんとの座談会とか、デザイナーさんとの意見交換なども記事にしたいですね。問題意識を共有し、盛り上がったりすると、打ち合わせの予定時間を軽く1時間以上オーバーするなんてことはよくあります。書籍の紙面からはなかなかお伝えできない制作時の空気感もお届けできればと思います。

さらには、何かの展示会で何を見てどう感じたかなどを、ニュースではなく書籍編集者の視点でお伝えしてみても面白いかもしれません。企画会議でみんなからボコボコにされて、ボツになった企画を凹みつつネタにして公開、なんて記事も面白いかも。

私たち本の編集者は本づくりばかりをしてきたので、Webやnoteと何か相乗効果が生まれるのか、生まれないのか、まだまだ未知数なのです。

ですので、もしよろしければ、ご意見やご感想、ご要望、叱咤激励などなんでも、ぜひぜひお気軽にお寄せください。福祉関連の本を書きたい方からの書籍企画も受けつけております(笑)。

さて、そもそも「福祉」とは

「福祉」を身近に感じる人は、あんまり多くはないかもしれません。実は私も本を担当するようになるまでよく知りませんでした。

ですが、福祉は一人ひとりの人生すべてにかかわってくるものと言っても過言ではありません。まったく特別なことではなく、すべての人に関係します

イギリスの福祉のスローガンに「ゆりかごから、墓場まで」とあるように、福祉ってかなり身近なテーマです。なのにそう感じられないとしたら、日本では別の言葉に置き換わって使われているせいかもしれません。たとえば、先の言葉を次のように言い換えてみたらどうでしょう。

「乳幼児ケアから、高齢者ケアまで」
「保育から、介護まで」

福祉っぽくなってきたでしょうか。

もっと具体的には、共働きあるいはシングルで子育てをして大変だったり、親の介護が必要になったり、生活費が厳しくなったりしている方がいるかもしれません。あるいは、精神状態が不安定だったり、発達や健康に不安があったり、身体に障害を抱えていたり、身内が在留外国人だったりする方もいるかもしれません。

人生ってそれはもういろいろな困ったことが起きるものですが、日本には幸いにも、多様な人生の問題をサポートしてくれる仕組みがあります。これが「福祉」です。

今、日本の社会がどんな状況にあるのか、どんな仕組みやサービスがあるか、どうしたらそれを利用できるのか、どういうケアやメソッドがあるのか。私たちは、より良い情報やコンテンツを届けることを前提に、それを読む人の気持ちをちょっとでも楽しく、軽く明るくできるような本をつくりたいと思っています。

翔泳社の福祉の本で、読者に楽しんでもらいたい

私は「福祉の本」を担当するようになってから、ずっと意識していることがあります。それは、役立つコンテンツの提供はもちろんのこと、

「本を手に取ってくれる人が、できれば何か新しく、楽しんでもらえる要素を盛り込むこと」

です!

ここで個人的な体験を少しお話させてください。

翔泳社で福祉の本にかかわり、企画を考えることになった当初、そもそもどういった本があるのかがわかりませんでした。なので、まず大型書店の福祉や介護の棚を見に行ったのですが、正直、どうにも楽しくありませんでした。

もちろん、「よく知らない世界だから」という理由もあったと思います。
ただ、棚に並んでいたのは「カバー・書名・中身」すべてにおいて非常に誠実で真面目で、でも退屈そうな本ばかりでした。翔泳社がつくるIT関連書は、社長がデザイナー出身ということも影響してか、皆カバーや紙面の見せ方にできる限りの工夫を凝らしていたので、それはもう、ちょっとした衝撃でした。

もちろん専門職の方々は、信用信頼に裏打ちされた専門書を必要としているのだとは思います。そこでは楽しさとかビジュアルよりもはるかに、記述の正確さ、内容への信頼性のほうが重要となるのでしょう。

ですが、翔泳社でそうしたものをつくるのは難しいと感じました。まずこの世界でのブランド(信用力)がまったくありません。……いえ、それよりなによりも私自身が楽しくないと感じたのです。

つくる側が楽しく面白く思わなければ、どんなものも面白くはならないのでは……。どんな世界でも誰もが最初は初心者ですし、門外漢な私であっても、語弊を恐れずに言いますと「面白がりながらつくる」ことで、何か読者の方々に伝わるものがあるのではないか、と考えたのです。 

そこで、初めて「専門職向けの実用書」をつくった際には、当時の棚の中では少々異色なもの――絵本のように正方形に近い形に、イラストを入れて明るい雰囲気に、できるだけ平易な言葉を使ってわかりやすく、などの工夫を盛り込んだ本にしました。

仕事を手伝ってくれた方から「この職種の人は職業意識が高いから、こういうイメージでは売れないかもよ」と言われたのですが、発売後は予想外の売れ行きとなり、すぐに重版がかかりました。その後も何回も重版がかかることになったのです。

大事なことなので繰り返しますが、決して内容を疎かには考えていません。一番大切なのは、著者に書いていただく本の中身、コンテンツです。

ただ、そこにプラスして、遊びゴコロといいますか、味付けや盛り付け方も同じくらい工夫したほうが、読者の方に喜んでもらえると信じています。

翔泳社で「福祉の本」をつくっているのは、いろんな経歴や方針をもった編集者たちです。福祉の専門的な勉強をしたわけでもなく、縛りも最低限で、アプローチもさまざま。みんなで割と自由にやっています。翔泳社だからこそできること、生み出せるものがあるのでは、と考えています。

最後に少し自己紹介させてください

私は新卒時にSIerの会社に入社。その後、他のPC系出版社を経て、翔泳社に流れ着き、IT系の本をつくっていました。IT関連はとにかくトレンドの変化が激しく、だからこそ面白い。「これからもこうした本をつくっていくんだろうな」と思っていました。

ところがある日、上長から会議室に呼ばれ、「来期から福祉書の編集部を立ち上げるから、一緒に異動してね」と。そこから未知のジャンルの本づくり、しかも専門職向け書籍づくりがスタートしました。

当時は、まったくの手探り状態で本当に苦労の連続でした。このあたり、以下の記事に少しその様子を記してあります。

件の上長は立ち上げの3年後になんと退職してしまいまして、その1年後に私が編集長を拝命し、今に到ります。今では仲間も増え、こうしてみんなでnoteを運用するくらいパワーアップしています。

それでは、皆様、末永くお付き合いいただけたら幸いです!

よろしければスキやシェア、フォローをお願いします。これからもぜひ「翔泳社の福祉の本」をチェックしてください!