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医療(翔泳社の福祉の本)

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翔泳社の福祉の本が扱う「医療」をテーマにした記事を収納しています。
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記事一覧

介護施設で体調不良、いますぐ救急車を呼ぶべき症状

介護施設や家庭での介護時、サービス利用者の体調が急変した場合、その場で対応しなければならない症状がある一方で、すぐに救急車を呼ぶべき症状もあります。 スタッフとしていざというときに慌てないために、特にその場での対応が難しい症状についてはしっかり把握し、即座に判断して救急車を呼べるようにしておく必要があるでしょう。 それらの症状について、『急変時対応 介護スタッフのための医療の教科書』(翔泳社)の「PART2 症状別・即救急車を呼ぶべき症状」から紹介します。 今回紹介する

本人は「うつ」がつらく、家族は「躁」がつらい。知っておきたい双極性障害のこと

翔泳社より、5月19日(木)に『これだけは知っておきたい双極性障害 躁・うつに早めに気づき再発を防ぐ! 第2版』が発売となりました。 双極性障害の国内研究の第一人者である加藤忠史先生(順天堂大学医学部精神医学講座主任教授)が順天堂大学の臨床現場に移られ、そこで得た最新の知見や新薬の情報などを加えて改訂したのがこの第2版です。 今回本書から、「PART2 本人は「うつ」がつらく、 家族は「躁」がつらいのです」を抜粋して紹介します。双極I型の3人、双極II型の1人のケースを通

非常時に福祉という考えは吹っ飛ぶか?

うっきうきと心浮き立つ春にすみません。今回ちょっと暗い……話題です。 このコラムを書くタイミングで起きている世の中の状況から個人的に思い巡らしたことを書きました。 平和が奪われたとき、取り残される人たちコラムを書いている今このとき、日本から遠く離れた国で、平和な日常が突然奪われていく様を目撃しています。繰り返される衝撃的な映像を見て胸を痛めつつも、私は別のことを考えていました。 ウクライナで起きている悲惨なニュース、メディアで多く取り上げられるのは、母親と子どもが身を寄

精神科に関わる専門職におすすめ、現場の支援で役立つ基礎知識

精神疾患は国内の患者数が400万人を超えるとされ、いつ誰がかかってもおかしくない身近な疾患となりました。 治療が長期に及ぶことも多く、患者さんは症状と付き合いながら働いたり、生活を送るケースも少なくありません。症状や原因は複雑で多岐にわたるので、薬物療法や心理療法だけでなく、様々な支援制度やサービスも活用する必要があります。 ですが、精神科には多様な専門職が関わるため、「医療面には詳しいが、福祉制度に明るくない」「法律やサービスは説明できるが、患者さんとの関わり方に自信が

最初は出版したくなかった?『ジェネリック医薬品の不都合な真実』の翻訳を決断した理由

出版企画を見て「面白そうだ!」と感じても、実際には本にならないものはたくさんあります。 すでに同じテーマの本がたくさんある、テーマが時代を先取りしすぎていてまだ十分な読者が見込めないなど、理由はさまざまです。中には「社会的に負のインパクトを与える可能性がある」、という理由で書籍化を諦めることもあります。 8月26日(木)に刊行となった『ジェネリック医薬品の不都合な真実 世界的ムーブメントが引き起こした功罪』は、まさに社会的な影響を考えて出版を断念しかけた本でした。 それ

利益優先のジェネリック医薬品メーカーによる不正を暴いた衝撃のノンフィクション

長期に及ぶ取材で明らかになった、インドや中国などのジェネリック医薬品メーカーによる不正の数々。 調査ジャーナリストのキャサリン・イーバン氏がそのすべてを書き記した『ジェネリック医薬品の不都合な真実 世界的ムーブメントが引き起こした功罪』は、アメリカを始め医療費増大に悩む国の希望の光とされていたジェネリック医薬品の闇を暴いたことで、大きな反響を呼びました。 日本でもけっして対岸の火事ではなく、ジェネリック医薬品が今後も重要であるがゆえに利用者自身が製薬メーカーの姿勢など、薬

「接客が怖い…」と感じている登録販売者のための基礎知識

ドラッグストアや薬局だけでなく、家電量販店やコンビニなどでも市販薬が販売されるようになり、登録販売者の活躍の場が広がっています。 現在の登録販売者試験は、受験前の実務経験が不要になっているため、合格後に「研修中の登録販売者」として現場に出ることに不安を持つ新人さんも少なくありません。 特に、お客さんの話を聴いてもどんな症状か分からない、あとになって「正しい商品をおすすめできただろうか?」と心配になるなど、接客の場面で悩む方が多いようです。 今回は、登録販売者講師として、

認知症予防に懐疑的だった編集者が『科学的に正しい認知症予防』をつくった理由とは?

先日刊行になった『科学的に正しい認知症予防講義』を担当したのですが、実をいうと、この本の制作を行うまで「認知症予防を予防するのは難しいのではないか」と考えていました。 テレビや雑誌では毎週のように認知症予防法が特集されており、その中には医師が紹介しているものもたくさんあります。なぜ私がそんな考えを持っていたのか不思議に思う方もいらっしゃると思います。 このコラムでは、私が認知症予防に関する情報に対して懐疑的だった理由と、なぜ『科学的に正しい認知症予防講義』を制作することに

認知症の予防には厳しい「新しい生活様式」の中でできる3つの対策

新型コロナウイルスの流行によって、私たちの生活は大きく変わりました。 ニューノーマルや新しい生活様式では、外出を控える、外出先では人と話さないようにするなど、感染を避けるために特に運動やコミュニケーションの面で制限が生まれています。 ですが、こうした生活様式は認知症の予防にはたいへん厳しいという現実があります。今後10年で国内では認知症の人が700万人を超えると想定されている中で、現在有力な予防法は、主に運動とコミュニケーションに関するものが多いからです。 認知症専門医

認知症の発症リスクが最も大きい難聴を予防するには?

自身や家族が認知症になると、それまでの生活が一変します。 発症しやすくなる年齢ではないからまだ大丈夫だろう、と考えていても、実は発症の原因物質とされるタンパク質は20年ほどかけて蓄積していきます。 つまり、発症の確率を可能な限り下げるのであれば、40代あるいは30代からでもリスクを意識して予防しなければなりません。もちろん、高齢になってからでも対策は有効です。 現在、発症リスクとして最も大きいとされているのが中年期(45~65歳)の難聴です。認知症専門医の浦上克哉さんに

科学的に効果が証明された「とっとり方式認知症予防プログラム」とは?

認知症は一度発症すれば完治させることが難しい病気。自分はもちろん、家族や知り合いが認知症にならないためにはどうすればいいのでしょうか。 近年では研究が進み、認知症に罹る可能性を高めるリスク因子が特定されてきています。例えば、最もリスクが高いのは「中年期(45~65歳)の難聴」の8%。この8%という数字は、中年期に難聴になる人が誰もいなければ認知症になる人が8%減るだろう、という意味です。 ほかのリスクとして喫煙(5%)や抑うつ(4%)などがあり、現在では12のリスク因子(

認知症は発症の20年前から予防する! 専門医が語る"完治"の難しさ

認知症は自分にはまだ関係がない、と思っていませんか?  日本では10年以内に認知症の人が700万人を超え、高齢者の20%が認知症になると言われています。自分だけでなく、家族が当事者になる可能性もあります。 現代の医学では一度発症してしまうと完治させることが難しい認知症。ですが、認知症専門医の浦上克哉さんによれば、最新の研究でようやく効果的な予防法がわかってきたとのこと。 これまで13万人以上の認知症の方々を診察してきた浦上さんは、発症しやすい年齢になる20年近く前から脳

医療業界の新型コロナウイルス対策、実はAIが活用されているんです

新型コロナウイルスが各国で大きな影響を与える中、ワクチンの接種が始まるなど対抗策のニュースも目に入るようになってきました。 実は医療業界では様々な分野でAIが目覚ましい活躍をしており、新型コロナウイルスとの戦いでもAIによる受診相談や画像診断などが行なわれています。 AIはいわば超高性能の計算装置。人の知能を超えるのか、AIなら何でもできる、といった大きな期待を持たれたり、あるいはそれらができないと分かって失望されたりしてきましたが、医療の現場ではすでに多様に活用されてい

医療情報のウソ、見抜けますか? ネットで正しい情報を集める方法

誰もがネットで自由に医療情報を探せるようになった一方で、過剰な効果を謳い、不安を煽るような情報も増えています。 生命はもちろん、生活の質にも直結する医療情報の真偽を見抜き、信頼・安心できる正しい情報を見つけるにはどうすればいいのでしょうか。 触れられる情報が増えた今こそ、自分自身や家族を守る医療リテラシーが必要な時代になっています。 放射線科医で医療ジャーナリストの松村むつみさんは、医療リテラシーを「医療について理解し、適切な行動ができる力」と説明。大量の医療情報があふ