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正栄クリーニングのこれまでとこれからと ~後編~

『インショップ展開』と『クイック仕上げ』の2本柱による事業スタイル。このスタイルが確立されたことによって、正栄クリーニングはバブル崩壊後の長期的な景気停滞局面の中でも、右肩上がりで成長を続けることが出来ました。それぞれどのような取り組みだったのでしょうか?

今も正栄クリーニング38店舗のうち、実に26店舗が商業施設の中やその隣で営業をしています。そうなんです、インショップ展開とは文字通り食品スーパーや大型商業施設にテナント入店することでした。この展開を進めるにもきっかけがありました。

インショップ展開をそれほど進めていなかった当時、高い保証金や家賃に加えて、テナント会費や駐車場負担金など、とにかく様々な名目で売上から持っていかれる額が大きく(今も変わっていませんが・・・)、それに見合った売上が期待できるのか・・・?と疑問があった2代目社長は、インショップ展開に積極的ではありませんでした。ところが、会社近隣に出店が決まった大型商業施設の平和堂アルプラザ枚方店。「ウチの会社の目と鼻の先に他のクリーニング店が入ってくるのは気に入らない!」とただそれだけの理由で出店を決めてしまいました。

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それまで出店してきた店舗と比べても契約条件は高く、どうせ売上もそこそこだろうから赤字店舗だろうと覚悟していたのですが・・・オープンしてみてビックリ!予想をはるかに上回るお客様の数・数・数!!出店は大成功でした。アルプラザ枚方店はあっという間に社内でも指折りの繁盛店に躍り出たのです。この出店を境に、その後の店舗展開はインショップへと大きく舵を切ることになりました。

そうしてインショップ展開を進めようとする中で、正栄クリーニングは全く別の問題を抱えていました。会社が成長してクリーニング品の点数がどんどん増えていくと、工場のクリーニング処理が追い付かず、納期がどんどん遅くなっていく・・・そう、サービスの低下が起きてきたのです。工場にはこれから洗う商品の袋が山のように積み上げられ、どれから先に手をつければいいのかすらも分からなくなってしまう始末。納期、商品管理、そして品質と、急激な生産量の増加に生産現場は対応しきれていませんでした。

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この状況を打破するために、2代目社長は生産現場の思い切った改革に踏み出します。それまでの生産は、ところてんのように次行程へと商品を押し出していく方式で、どんなに商品袋が山積みになっていても、決まった人数が決まった時間仕事をしたら、その日は終了というものでした。だから在庫が無くならない。この問題解決のために、まず設備配置を見直し、毎日の生産点数を目標設定し、その目標をこなせるだけの人数を日々調整する仕組みを作りました。急激な変革についていけず、辞めたスタッフもいましたが、この生産改革は現場を劇的に変えました。これまで山積みだった在庫が、嘘のように全て無くなったのです。在庫が無い、ということは工場に入ってきても、すぐにクリーニングして出荷している、ということです。そうです、すなわち『クイック仕上げ』がこの生産改革によって可能になったのです。

急に納期が早くなったものだから、店舗のスタッフには「ちゃんとクリーニングしてるんですか?」と疑う人まで出てくるほど。そりゃそうです、これまで1週間もかかって仕上がってきたお洋服が、たった1日でお店に納品されるんですから、疑うのも仕方ありません。でも安心して下さい!1週間かかっていたのは工場で洗い待ちしている時間が長かっただけなのです。

『インショップ展開』と『クイック仕上げ』これらが相乗効果となって、正栄クリーニングは成長路線を歩むことになりました。好立地の出店と高いサービス力、それらが揃うことで多くのお客様にリピートして頂ける店舗となれたのです。途中リーマンショックで一時落ち込むこともありましたが、今日に至るまでこの2本柱の戦略が正栄クリーニングの成長を支え続けたことは間違いありません。

そうして成長軌道を描く中で、3代目社長に私が就任しました。就任と創立50周年が重なったこともあり、昨年2月には記念式典を開催することも出来ました。式典当日はほとんどの店舗を休業にしたので、多くの従業員さんが集まってくれてました。スタッフの皆さん本当に笑顔で・・・今でも忘れられません。

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その式典の冒頭挨拶で、私は今後の展望のひとつに「IT化」を掲げました。「今頃?」とお笑いの方もいらっしゃるかもしれませんが、クリーニング業界は他業種に比べて大きく遅れているのです。店舗運営も工場生産もまだまだアナログな部分が多い。サービスにITを絡めて、社会のニーズに合ったサービスを提供していこう!と伝えました。

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そして、この式典のわずか1年後。世界はコロナ禍に見舞われました。出席者の誰一人として、まさか1年後にこんな世界が待っているなど想像もしなかったことでしょう。

実はこれまで、団塊世代の退職による勤労者人口の減少、ユニクロにはじまる衣料のカジュアル化、ノーネクタイやポロシャツ着用などのビジネスウェアの変化、そういった社会構造の変化によって、ここ20年以上クリーニング需要は減少し続けてきました。そんな矢先に起きたのが新型コロナウイルスによる生活様式の変化です。これまでに経験したことがない急激な変化が、クリーニング市場を襲いました。在宅勤務やテレワークにより、スーツやワイシャツの着用機会が激減しています。クリーニング需要を支えてきたビジネスウェアが一気に減ってしまったのです。これは一時的なものでは済まず、アフターコロナの社会はさらにこの方向へと進んでいくことでしょう。

式典で伝えた『IT化を進めて社会のニーズに合ったサービスを提供していこう』という方針。コロナ禍で社会が変わったように思えても、実はやるべきことは一緒です。新型コロナウイルスはこれまでにないスピードで社会を変えてしまいましたが、それならばアフターコロナの社会に必要とされるサービスを考え提供していくだけです。社会の変化に適応していくこと、それが生き残る唯一であり、これまでも時代時代で選択をしてきたのです。

コロナ禍の中、ついに私の出番がやってきました。どんな時代になっても正栄クリーニングが地域社会に必要とされる企業であり続けよう、そう決意を込めて、この記事を書き終えます。

ここまで読んで下さった方ありがとうございます。これからもちょこちょこ書いていきますので、こうして目を通してもらえると嬉しい限りです。

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