祖父江さん1

【モップライブ特別編】おまえの手で漕いでゆけ【雑談・小ネタ】

その船はいまどこにふらふらと浮かんでいるのか

先日、衝撃の記事を目にしました。

祖父江さん、減俸。球団代表は「継続しての活躍を評価してほしいらしいが、そんな査定はない」という旨の発言をしたとか。筆者は正直こう思いました。ふざけるんじゃあねえ!と。世間の論調が「もっとあげろ」という風で筆者は安心しましたが、某有名選手がTwitterで取り上げるぐらいの話題になりました。
年俸なんてものはその球団の編成の人たちが判断することなので、外野の人間がどうこう言うのは間違っているのですが、それでもやっぱり一言物申したくなるのがファンの性です。
思うに、日本のファンはとかく清貧であることを求めがちで、低年俸でひとつの球団だけに留まることを要求しFAは金満補強と言います。しかし、サラリーマンの自分が同じことを求められて喜ぶのだろうかと思うのです。給料倍で地方から東京に転勤、と言われて嫌がる人はどれぐらいいるでしょう。
少し話は逸れましたが、例えばこうして低い評価しかしなければ、愛想を尽かして移籍することもありえます。長期的に見てどちらが球団にとって得なのか、きちんと判断してほしいと思うことはファンの願いであるはずです。
まあ、やいやい言ってきましたが、要は文句を言うだけでなく、祖父江さんにあげるべきそれらしい年俸金額を出してみよう、というのが今回の記事の趣旨です。

その船は今どこでボロボロで進んでいるのか

そもそも祖父江さんってどんな選手なんでしょう。2019年シーズンまでの成績がこちら。(Baseball LABより)

祖父江さん通算成績

入団から6年間、多少の浮き沈みはるものの、年平均で45試合に登板し防御率3点ちょっと、WHIP1.2ぐらい、与四球率は特別悪いわけではない一方で三振をとれるわけでもなくK/BBがパッとしない、と決して派手な成績ではありませんが、大きな故障をすることもなく投げ続けています。この安定感と頑丈さが一番の武器と言ってもいいかもしれません。無事是名馬。以前の記事でも言及しましたが、中継ぎ投手は5年続けて活躍するのも難しいポジションです。にもかかわらず、ルーキーイヤーから6年間も無事に投げ続けられる祖父江さんは希少な存在なのです。次に、他のリリーフ投手たちと比べてみましょう。

流されまいと逆らいながら 船は挑み 船は痛み

まずは今回用いる指標の説明から。RSWINとは、計算式は面倒そうなので省きますが、リーグの平均的な投手と比べ何勝もたらしたかを示す指標であり、今季は大野雄大の3.32が最高でした。ホールドやセーブのような目に留まりやすい数字以外で、中継ぎの勝利への貢献度を評価するツールとして用います。また、モップライブに続いてPR(Pitching Runs)も使います。(いずれの数字もnf3-Baseball Data House-より)

RSWINなど祖父江さん

まずは祖父江さんの成績を。合計欄の防御率は期間内の通算防御率、RSWINとPRは合計値を入れてあります。加算して意味があるものなのかは分かりませんが。年俸は2020年の推定額です。祖父江さんは2019年の年俸がはっきりせず、BASEBALL LABほかでは2900万とされていましたが、実はもっと多かったとも報道されています。デイリーでは-100万の3400万とされており、実際のところどうなのか分らないので「?」としてあります。
先ほども述べましたが、祖父江さんは目立つ成績の選手ではありません。RSWINやPRを並べてみても「悪くはないけどとても良いというほどでもない」という感想に変わりはありません。
では、この成績は他の選手と比べてどうなのか。直近の5年間で各球団の登板数上位に顔を出す投手を並べてみます。

RSWINなど増田森宮西

RSWINなど松井山﨑増井

RSWINなど秋吉益田

そのうちのいくらかの選手を並べましたが… いやぁ、比べる相手が悪い笑 5年間も中心的な中継ぎ投手として投げられるその多くは、クローザーやセットアッパーを務める一流のリリーフ投手です。祖父江さんよりも多くの試合に投げている人がほとんどです。さすがの成績を残す人たち。ホールドもセーブもはるかに多く、RSWINやPRも断然大きい数字です。そして、文字通り桁が違う年俸を貰っています。このままでは”適正年俸”を出せないので、少し比較相手のレベルを下げて(失礼)みます。

RSWINなど松永一岡青山

RSWINなど又吉

筆者が祖父江さんと並んで「もっと給料あげろ」と主張していた松永、途中怪我で登板が減った一岡、一時はクビの危機にさらされた青山、祖父江さんの同僚であり先発に回された時期のある又吉が並びます。このメンバーと比べてみても、祖父江さんの43ホールド3セーブというのはかなり少ないというのが分かります。モップライブ!でも述べましたが、かと言って祖父江さんはチームBというわけでもありません。いわば「チームA´」的な、どちらの存在としても評価しづらい立ち位置にいるようです。
上質なモッパー的立ち位置の人間は、安定していれば勝ちパターンになって雑な扱いを受けずに延命するか、先発に転向するか、さもなくば途中で故障してしまいます。祖父江さんのように分かりやすい数字を残させてもらえないポジションにありながら安定して投げている投手というのは非常に稀なようです。評価を受けづらいポジションではありますが、祖父江さんは一流のクローザー・セットアッパーに求められるのと同レベルの頑丈さを備えている投手と言えるのではないでしょうか。

以上のようなすごい投手たちと比べざるを得ないことになりましたが、なんとか祖父江さんの良いところを見出してみましょう。
まず、この期間中PRが一度もマイナスにならなかった投手は祖父江さんと山崎康晃と松井裕樹だけでした。また、RSWINもマイナスにならなかったのは松井と祖父江さんだけです。セイバーメトリクス的な考え方をすれば当たり前なのかもしれませんが、一流のリリーフ投手ですら数年間に渡って抑え続けるというのは難しいことなのです。登板数による勤続疲労や、任される場面に差があるので一概にはくらべられませんが、祖父江さんは安定感では球界トップクラスと言ってもいい投手です

これらの数字の積み重ねで言えば青山や益田級の評価を受けてもいい選手であり、目立つ数字を残させてもらえない起用が故に「安定感を評価してほしい」という主張するのも納得できます。にもかかわらず、5年前と比べて祖父江さんの年俸はほとんど変わっていません。そんな投手はほかにいません。PRだけで言えば祖父江さんより下の同僚・又吉克樹ですら5年前より増額になっています(彼への評価も低いのではないかと思いますが)。青山は一時クビになりかけた際の大減俸があったので致し方ないですが、今年の活躍で元の水準に戻ってきています。要するに祖父江さんは安すぎるのです。

また、やや本題からは逸れますが、筆者が気になったのが嘉弥真新也です。

RSWINなど嘉弥真

祖父江さんと求められている役割が違うとはいえ、恐ろしいほどの格差社会です。ここ3年の登板数は嘉弥真のほうが多いですが、イニングは登板数の半分強といったところ。イニングが少ないのでRSWINも高くはなく、PRもどっこいどっこい。それでも求められた役割を全うし、チームの成績や親会社のパワーも相まってすごい差が生まれています。ソフトバンクの評価が正解で中日球団のそれが誤りであるとは言いませんが、「自分も評価されたい!」と思う選手が出てきても不思議なことではないでしょう。

全ての水夫が恐れをなして逃げ去っても

さて、では祖父江さんの”適正年俸”はおいくらなのでしょう。最もいい比較対象は松永だと思います。登板数は松永のほうが多いですが、イニングとPRは祖父江さんのほうが多い状態。今年6年目で32歳だった祖父江さんに対し、松永は7年目31歳とキャリアも近いものがあります。
青山はベースの年俸が違うので外しました。一岡はスタート時の年俸やRSWINなど見ても貢献度に大差はないので比較対象として悪くないですが、一岡の場合はチームが強くて景気が良かったので、厳冬続きの中日球団とは事情が異なったところはあります。

松永通算成績

松永にももっとあげてほしいですが、今回は一旦置いておきます。その松永でさえ来季年俸は7,500万です。年俸の増減はチームの順位にも影響されますが、この期間のロッテと中日の順位に大きな差はありません。最近でこそロッテ球団は黒字化に成功して景気がいいようですが、それまでは特に金持ち球団だったわけではありません。中日球団は言い訳がつかないでしょう。こういう縁の下の力持ちをちゃんと評価するかで従業員のやる気は変わってきます。プロ野球選手も人間です。メンタル、モチベーションが仕事ぶりに影響すると筆者は思っています。いい年のベテランが年下のリリーフの助けを借りまくって得た6勝だとかとグッズ売り上げとやらの「見かけの成績」に騙されてやたらに年俸を上げているようではいけません(祖父江さんの年俸も上がるならいいですが)。せめて松永の6年目(2018年)と同じ6000万ぐらい、ホールドが少ないと言っても5000万は下らない成績を残せているのではないでしょうか

その船を漕いでゆけ おまえの手で漕いでゆけ

タイトルを【雑談・小ネタ】としていたように、この記事で以って何かを論証をしたいわけでも強硬に批判をしたいわけでもありません。自分の好きな選手をもっと評価してほしい、という極々私的な主張です。
ただ、この記事には筆者が常々思っていることが散りばめられており、例えば清貧を求めるのは間違っていると思いますし、チームBやチームA´の投手を評価してほしいと思っています。ネタとして2019年ラストを飾るに相応しいかと言われるとアレですが、筆者の考えが詰まっているという意味ではそれらしいものになりました。

これも非常に私的な意見ですが、祖父江さんはFA移籍をして球界に一石投じてほしいと思います。「継続的な活躍? そんなものの評価はFAをとってからだ」という旨の発言をしたという中日球団の代表は、祖父江さんがいなくなってから彼のような存在の重要性を思い知ればいいのです。そう、つまりはこういうことです。おまえが消えて喜ぶ者におまえのオールを任せるな

祖父江さん2

祖父江さんってめっちゃかっこいいですね(今更)

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