山代 生 / Yamashiro Sho

山代 生 / Yamashiro Sho

マガジン

最近の記事

    • まだ見ぬ地元を歩く

      熊野神社 鳥居脇の石が金勢様だったということを最近知り、改めて確認する。 道から見えるのは鳥居と金勢様だけだったので、斜面を登った先に祠を見つけた時は嬉しかった。 辺りはかなり荒れているのに、紙垂だけは新しさを感じさせた。 忘れ去れていないということに、この土地の強さを感じ、心打たれる。 木端の飾りは象だろうか。とても味がある。 早池峰神社 小さな神社の内側の壁全体に書かれた、掠れた文字に気がつく。一瞬、落書きにも思えたが、よく見ると何かを記しているように見える。その奥

      • 霧の森

        天候だけでなく、自分のなかにも 風でめくられたり、雨であらわれたりするものがあるのを感じます。 人の想いに触れることで訪れるそういった風や雨のような体感が、自分のなかに新(さら)な状態をつくると、無性に森へ歩いて行きたくなります。 ここはすでに森なのに、もっと森へと。 そして、今日は森へ行きました。 雨が降っていたのですぐに引き返しましたが、霧の立ち込める森の風景は、絶えず変わり続けているのだと見惚れました。

        • +4

          3月3日、朝の光

        マガジン

        • mori
          5本

        記事

          個として

          12月に解体させてもらった鹿の皮で財布を作った。 解体すること、皮を鞣すこと、ものを作ること、それらを楽しむこと。 そして、終わらせること。鹿の終わりであり、僕のはじまりであるはずのその経験や感覚が、僕にはない。それでも、この鹿の個としての命は終わった。 その終わりは、単に「鹿の死」という大きな括りの中に放ることができない。 また「いかす」ということも難しい。 終わった鹿の命に、続いていく僕の時間が絡んでいく。 僕の時間の中で、終ったことを続ける、終わりを続ける。 個と

          夜開け前の火

          先に目覚めた猫のなやに続いて、一瞬考えたあと、今日も暗いうちに布団からはい出した。 外に出ると、薄暗い空にはまだ星が多かった。 南向きの薪棚から、ヤタクギとカラマツの小枝、薄いナラを、選んで籠に入れる。漠然とした憧れのようなものからか、そういった自然に生まれたものから火を起こしたいと思っている。 母が用意した油の染み込んだキッチンペーパーを、ストーブから取り出す。 火付きのよい着火材がほかにある現在、「こだわる」というのはこういうことだろうなと思う。 消壺から出した消炭は

          急がなくても

          夕暮れ、空が大きくひらけるところまで、急いで向かった。 雲がゆく空の先や、山の向こうをひとり見上げるとき、ここではないところにも、人と人の暮らしがある、ということを僕は自然と感じる。 言葉にしにくいけれど、何度も同じように湧いていくるイメージ。 それを分かち合えるように置き換えることを、今日が終わるまでとか、思いが鮮明なうちにと、つい急いでいた。 しかし、そう思っているあいだに、僕は見えていたものから少しずつ離れているのだ。 すぐに、分かるものを、と思うのはなぜだろう。

          とけていく

          ウバユリが透かした光で、僕のちいさな散歩がはじまる。 この朝のなかでひとつ、凍えていたものが、易しくとけていく。

          傷つけながらでも

          傷つけながらでも

          僕の時間

          みんなで飲もうと思っていたコーヒーも、一緒に食べようと思って切ったケーキも、準備ができたら、そうではなくなっていた。 家の中はいっぱいいっぱいで、お互いに優しくなかった。 ひとりでお茶したくなって、ふいと外にでる。 薪割り台の椅子、ブロックの机。 冷たい夕暮れの風があたる場所で、屋根の上の影の森を見上げる。 鳥たちは木々の間を落ち葉のように行き交う。 彼らはみんな、僕の知らない時間を生きている。 自分の時間だけを過ごしすぎていた僕は、そう思う。 僕の時間を知らない誰かの時間

          あらゆる光の中から

          光の朝が、森ではじまっている。 いくつもの輝きが、光の届くあらゆるところで同時に産まれている。 すべての朝は並行しているんだと感じる。 僕は目移りして、あっちにもこっちにもカメラを向けてかけまわりたくなる。 けれど、その中で本当に向き合うことのできる光はごくわずかだ。 光を光として。 僕の前で並行するあらゆるものの中にある、その時の光に向き合うこと。 それは、自分のために光を探すことではなく、目の前にあるものを自分の光とすること。 名前をつけるような慎重さで、撮り残すための

          あらゆる光の中から

          光を探している

          光は秋 僕に合う光 その、光を探している

          光を探している

          がんづきのうた

          卵なくても 牛乳なくても どっかーん!がんづきはできる 食べて はたらく はたらいて 食べる はたらく人の食べものは どっしり重たい

          がんづきのうた

          薬師川の朝

          流れる水温と淀む水温 裸足で感じわけた 背中に温もりを浴びた 顔を洗った からだで感じていた 薬師川の朝