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【題未定】PENTAX 17 は極めて魅力的だが、おそらく縁のないカメラだろうという話【エッセイ】

 写真を趣味としているとつい手を出してしまうのがフィルムカメラである。昨今はデジタルカメラ全盛であり、はっきり言えばフィルムがデジタルカメラに勝る部分はほとんどない。プロ用の器材では言うまでもないが、アマチュアが使用する機材レベルでさえももはやフィルムカメラが勝つ要素はほぼ無いと言える。それほどデジタルカメラの技術は進歩してしまったのだ。

 とはいえフィルム写真の質感は性能とはまた別問題だ。その場で見ることのできないもどかしさといった感覚に訴える部分を考えればフィルムカメラにはある種の独特の楽しさが存在する。自動車で言うところの旧車乗りの楽しみに近い部分かもしれない。不便を楽しむ、というところだろう。

 私自身、フィルムカメラを楽しんで使っている。メイン機はデジタルカメラだが、フィルムカメラを持ち出して撮影をする機会は決して少なくない。あの独特の写った質感や彩度、そしてシャッターを切ったときのメカニカルな感触は特別である。

 そうした感覚を持つ人は世に少なくないようで、昨今はフィルムカメラのリバイバルブームが写真界隈で発生している。とはいっても特定の一部の層であり、あくまでニッチな趣味の世界ではあるのだが。ともかくフィルムカメラを喜んで使う層は一定数存在するようだ。

 そうした動きに合わせてか、PENTAXが新しいフィルムカメラを発表した。PENTAX 17というレンズ一体型のコンパクトカメラだ。このカメラはハーフサイズカメラといって、通常の35mmフィルムを縦半分にして撮影を行う。36枚撮りのフィルムの場合、72枚を撮影できるというフィルム高騰の昨今においては嬉しい仕様のカメラでもある。

 PENTAX 17のフォルムはなかなかに見事だ。私は写真でしか見たことがないが、なかなかの質感、重厚感で所有する喜びを感じさせてくれそうなデザインとなっている。ピント合わせは当然マニュアル、フィルム送りや巻き戻しも手巻きというなかなかに使う楽しみを優先した趣味性の高い仕様となっている。

 あくまでも作例を見た限りではあるが、吐き出す写真の出来に関してもかなりシャープに写る印象だ。レンズが現代的なものであることに起因するのだろう。そもそもフィルムカメラの写りはカメラ自体よりもフィルムの性質に依存するため、一概にカメラの良し悪しとは直結しにくい部分はあるが、現代的な写真を撮ることができるカメラのようだ。

 PENTAX 17の感想を書けば書くほどに手にしたいという気持ちは膨らむが、同時にどう考えても私のスタイルにはマッチしないということにも気づく。まずフィルムのマニュアルというのが厳しい。正直アマチュアカメラマンの駆け出しの駆け出しである私の腕では、その場で確認できないフィルムカメラではシャッターを切るたびに緊張で指が汗でぬれてしまうだろう。現在所有しているカメラはオートフォーカスが効くことは大きな安心材料ともなっているが、これがフルマニュアルであった場合はどうだろうか。シャッターを押すことに躊躇するカメラはその機能を果たすとは言えないだろう。

 また価格も問題だ。メーカー希望小売価格10万円という価格は私の小遣いの範囲ではなかなかに難しい金額だ。しかもそれを実用性の低い趣味の機体につぎ込むというのはなかなかに難しい。

 おそらく、このPENTAX 17は私には縁がないカメラだ。10年ぐらい後に十分に中古価格が下がればまた話は変わってくるが、現在においては私が手にすることはないだろう。とはいえ、魅力的なカメラであるのも事実だ。私の手の届く範囲にPENTAX 17が近づいてくることを気長に待つとしよう。

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