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「言い切る」だけで文章が変わる

昨年の3月、人生において最初で最後の経験をした。それがこちら。

豊岡市が企画するポスターのメインビジュアルになり、まちなかの数十カ所に貼り出されるというもの。

合計10パターン製作されたこの企画ポスターは、若者の流出という地方都市の課題に対して「引き止める」のではなく、むしろ「潔く送り出す」ことを卒業する高校生へのメッセージとした兵庫県豊岡市、初の試み。

[参考記事] 卒業、おめでとう。飛んでいけ。飛んでるローカル豊岡

『大学なんて、やめたっていい!』

そして、そこで採用された『大学なんて、やめたっていい!』というキャッチコピー。撮影前のヒアリングで、ポロッと出たことばがきっかけだった。

貼り出された直後、各SNSでは賛否両論の投稿が書かれた。

正直、親世代からは非難轟々だろうと、事前にある程度想像できるこのキャッチコピー。そんなキャッチコピーを世に送り出してくれた市役所の方には、本当に感謝している。

☞キャッチコピーについての個人的な想いを、この記事の最下部におまけ程度につけています。

以前の記事にも書いたけど、文章を書くとき気をつけていることのひとつに「曖昧な表現は避け、できるだけ言い切る」というものがある。

これが案外むずかしい。

意識しないとできないし、意識しても100%言い切るのは不可能に近い。でもこれだけで、文章がガラッと変わる。そう確信したのが、冒頭のポスターに載った経験だった。

言い切るとファンが出来る。

言い切れない理由はただひとつ。

批判・否定されるのが怖いから。

そもそも個人の書く文章なんだから、個人的な考えが反映されるのは当たり前だし、読む方もそれが前提で読んでいてもいいはずだ。

〜かもしれない
〜だと思う
〜らしい
〜気がする
〜ではないでしょうか

これらは批判・否定されたときに、言い訳ができてしまう言い回しで、逆にいうと自分に責任のない文章の作り方になっている。

そもそも、どんなことでもマイナスの側面がある。それをあえて出すことで、文章からその人のパーソナリティが浮き出てくる。

ポスターの話に戻るけど、言い切ると賛否両論でるんです。

その中でも賛同してくれる人が、コメントやメッセージをくれたりするんです。

それってもうファンなんですよ。

僕にファンができるなんて、過去にはもちろんなかった。それを実現したのは、言い切るからこその説得力。

そして否定してた方々のSNS投稿には、あえてコメントした。その結果、お互いの意見を少し深いところまで言い合えたことで、すごく良い関係になって「そういう見方もあるよね」という話に。

そもそも批判・否定する人たちは、ほとんどの場合がその事柄に興味があるからこそ、そういった声をあげている。どうでもよかったら反応なんてしない。ちゃんと聞いて、しっかり伝えることで、ファンになってくれる可能性が最も高い人たちだった。

そんな経験から、僕は文章を書くときに言い切ることを常に意識しているし、言い切ることでグッと人を惹きつける文章になると確信している。

懲りない豊岡市。

そしてなんと、デザインを今年バージョンに一新して2度目の掲示をしていただけるとの報告が市の担当者さんから入った。この人たち、ぶっ飛んでる。さすがは「飛んでるローカル」豊岡。

そして今年バージョンがこちら。

職場のスタッフが近日上映が決まっている作品の横に僕のポスターを貼ってくれていた。

「パディントンに服装が似てたので、ここにしました!」

ほんとだね。青いし、帽子かぶってるし、肌の色もどことなく同じだよね!

おしまい

・・・追記・・・

以前、豊岡文化協会という団体の広報誌面でポスターに関するアンサー的な内容を寄稿したので、その内容をそのまま貼り付けておきます。

「大学なんてやめたっていい!」 伊木 翔

 今春、高校を卒業する方々をメインターゲットに、10パターンのポスターが街角に貼り出されました。このポスターは豊岡市が主体となり「わかもの巣立ち応援プロジェクト」として豊岡に暮らす、様々な職種、年齢の市民10名が、巣立っていく若者たちに「どんな言葉を送りたいか」「どんな思いを伝えたいか」を形にしたものです。人口減少が取り沙汰され、他地域からの移住や人口流出の歯止めをどうして行くのかが各地域の重要課題となっている現代。豊岡市も例外ではありません。そんな中“卒業、おめでとう。飛んでいけ。”というキャッチコピーのもと、むしろ気持ちよく送り出すキャンペーンを街に放った豊岡市。その中に僕も加えていただき、タイトルにもある「大学なんてやめたっていい!」というエールを添えて若者たちを送り出しました。僕という若造がこんな無責任な言葉を公にしたことで、各方面からたくさんご意見をいただけました。僕は大学を辞め、そして今の自分があるのも、様々な気付きがあったのも、瞬間瞬間の選択をしてきた自分の積み重ねだと感じていて、「大学を辞めた」こともその選択のひとつだったと改めて思います。このポスターを目にするのは僕のことを知らない方々がほとんどだし、全てを理解してもらいたいとは思っていませんが、個人的に若者たちに伝えたかったことは2つだけ。ポジティブに「辞める」という選択肢もあること。そして世界は思ってるよりも広くて、働き方や生き方、自分の在りの選択肢なんて山ほどあるんだってこと。「辞める」という言葉にネガティブイメージを持っていませんか?僕はどちらかというとポジティブに感じてしまう方なんです。苦しいなら辞めればいいんです。足枷になっているのなら辞めればいいんです。世界はすんごく広くて、日本だけでも制覇できないのに、ましてや世界は今までの常識なんて通用しないくらいぶっ飛んでる人たちばかり。そんな人たちと実際に会って、話して、感じて、自分はどうしたいのか。どう在りたいのか。少しずつ見えてきた時に、辞めるのも選択肢のひとつ。そんなことを悩みながら、徐々に自分が出来ていく。自分もそんな人生にしたい。


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