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読書ログ 『戦略コンサルタント 仕事の本質と全技法』

どんな本?

 ローランドベルガー日本法人会長の遠藤功氏が自身の「戦略コンサル論」をまとめた書。筆者が「本書はプロフェッショナル論」と述べているように、仕事の要諦から自分の付加価値の考え方、仕事における戦略の立て方・実践論、マインドセットに至るまで、幅広いノウハウが詰まった良書。

感想

 自分はコンサル業に興味を持っていた時に買って積読していたが、今の仕事で新規事業や重要アジェンダの戦略を描く中で、超一流の戦略コンサルの考え方が参考になると思い、読んでみた。

 数多くの学びがあったが、「“あいつと一緒に働きたい“と思われる仕事をしたい」「言語化、構造化を通じて問題を解いたり同僚に示唆を与えることが嬉しい」と思っている自分にとって、特に印象的だったのは、「一流の触媒」という言葉。自分はコンサルタントではないが、会社の変革を担う者として必要な客観的な視点と本質的な思考とオモシロい絵を描くクリエイティビティはまさにコンサルに求められる能力そのもの。

 自分が戦略家・マーケターとして生きていくには、名参謀になるには頭の良いイケ好かない奴ではなく、人をエンパワーメントする存在を目指すことは絶対条件だな、と強く意識させられた。仲間を、顧客を、会社をポジティブにするにはどうしたら良いかをもっと真剣に考えていきたい。

 もはや自分は”コンサルタントになった気持ち”で会社がさらに発展するための戦略を立案・実行していくべきと思ったし、外資戦コンのエリートを凌駕するレベルで問題解決力を磨いていきたい。彼らは毎日戦場にいるわけで、自分の環境の作り方も工夫せねばと感じる。

 350ページ近くある本だが、文中にもある「メッセージのクリスタライズ」が徹底されておりスラスラ読めた。接続詞を使いすぎず、長すぎないワンメッセージをズバズバと並べていくスタイルは真似したい(その証拠に行がえも頻繁に行われていた。)。

 また、30代前半で大企業からコンサル業界に転身をした著者の転職前と似た境遇にある自分のキャリアの参考としても大いに役立った。

おすすめ度

★★★★☆(濃密な内容だが気軽に読める。企画・戦略の分野で勝負していきたいと思う人は自分を見つめ直す良いきっかけになる。)

こんな人におすすめ

  • 仕事で会社や事業の戦略を描いている人

  • 戦略本が好きだが、いまいち実践しきれていない人

  • 大きなPJTを任されるなど、今までと違った筋肉が必要になってきた若手社員

学び

■コンサルタントが目指すのは「一流の触媒」。変革のプロとして、変革に慣れていないクライアントの触媒となる

■触媒のミッションは「変革の方向性を定めて」「クライアントを変革に向かわせる」こと

■一流の触媒になるには、変革の方向性を理詰めで定める「IQ」と、クライアントの感覚・感情・情緒を鋭く知覚し寄り添いながらコントロールして変革に向かわせる「EQ」、クライアントに成功してもらいたいというピュアなサービス精神を持ってそのための自分の役回りに徹せる「プロフェッショナル・マインド」の3つが必要。

■IQは、合理性を失った会社に理を取り戻させる

■筆者は昔「言ってることは間違ってないけど、面白くないんだよね」と言われたことがある。ロジカルな正論をぶつけても、サプライズに欠けていると付加価値は生まれない。

■ことあるごとに「本当に大事なことは何か」を見極めること。会社は枝葉末節にこだわるあまり本質を見失うことが多い。筆者は各発表会でA4 1枚のエグゼクティブサマリを必ず用意してプレゼンに臨んでいた。

■理詰めで考えるほど、答えは同質化する。一見ロジカルでも全く差別化されていない戦略に陥ってしまうことがあるので、「適社性(その会社に適した個別解」に拘っている。

■戦略コンサルタントが付加価値をつけるための具体的な方法論は「脳味噌から汗が出るほど考える」しかない。

■EQは①「クライアントの心が開く」②「クライアントの心に響く」の2側面から機能しないといけない。心が開かないと協力が得られないし、心に響かないと採用してもらえない

■明晰な思考は簡潔な表現となる。メッセージをクリスタライズせよ。

■「ピュアなサービス精神」で相手を「その気にさせていく」

骨太の変革シナリオを生み出すための、筆者のこだわり

  • 適社性にこだわること

    • 理詰めで考えるほど、答えは同質化するので、この会社の個別解にこだわる

  • ファクトにこだわること

    • ファクトを集めることも能力

  • 概念化・言語化・構造化にこだわること

    • 現状や課題に対して「いつの間にか思考停止」にならず考え抜く知的タフネス

  • 膝詰めにこだわること

    • どんなに優秀でも自分の頭だけで考えれば必ずに詰まるので、主観をぶつけ合う

    • 相手は客観的な意見や評論家的コメントではなく、「遠藤さんならどうするか」を求めている

    • 実行には「納得性」が必要。膝詰めの議論は腹落ちや納得をも生む

  • 現場にこだわること

    • 現場の共感と実行なくして戦略の実現はあり得ない

クリエイティブシンキングのための6つのアイデア

①常識を洗い出し、あえて否定してみる
②立ち位置を競争相手や顧客の視点に変えてみる
③既存の価値を組み合わせ、複合させる
④一般の常識では選ばない道をあえて進む「逆張り」をしてみる
⑤思い切って選択と集中をし、サービスを尖らせる
⑥皆がリスクを恐れて手を出さない「未成熟なもの」に賭けてみる


心構えで特に印象だった点

  • 偉そうにしない。相手に心を開いてもらわないと良い仕事はできない(耳が痛い・・)。でも生意気であるべき。自分のスタンスをとって相手にぶつける以外に化学反応は生まれない。

  • 逃げない。ハードルひとつひとつに動揺していたのでは、この仕事はできない。困難な局面でこそ「一流の触媒」かどうかが問われる。

  • 納期意識。納期を背負った仕事は間違いなく効率的になる。

  • 教養を磨き、人としての幅・魅力を磨かないと「一流の触媒」にはなり得ない。

    • 大事なのは畑違いの情報や知識。固定概念を打ち破り、ブレイクスルー的な発想に繋がるきっかけとなるため。そのため、日経新聞の「通読」を自分に課している

  • 熱量こそが戦略コンサルタントの優位性の源泉。「遠藤さんといると元気が出るよね」と言わしめて当たり前

  • タイムマネジメントが人生を決める。遠藤氏が出会った「仕事のできる人」は皆タイムマネジメントの達人だった。時間の価値をしり、人生という限られた時間から何かを生み出そうと必死にもがいている。

  • 戦略コンサルタントはクライアントに選ばれ、活かされてこそいい仕事ができる。しかしエリートたちは「選ばれること」に慣れてしまい、その尊さに気づかないことが多い。

本書を踏まえて今後どうするか

 詳しくは別のnoteにも書くが、特に以下は意識したい。

  • 大きな戦略を描けるようにするため、脳から汗が出るほど考えるだけでなく、様々な人と膝詰めで議論をする

  • ありたい姿である「人から心酔される戦略家」を達成するため、「Vodkaといると元気が出る」と言われるほどのEQを意識する

  • 「Vodkaの提案ってロジカルなだけでなく、面白いよね!」といつも言わしめる。「この提案面白いか?」をいつも意識する

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