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【職人探訪vol.2】新しい技術や素材を取り入れ、進化し続ける下地の職人・森田清照さん

こんにちは。漆琳堂8代目当主、内田徹です。
越前漆器を支える職人たちを訪ねる「職人探訪」。


第2回目は越前漆器のなかでも角もの(お盆や重箱)の「下地」を手がけている森田清照(もりた・きよてる)さんをご紹介します。


下地とは木地の状態を整えて補強し、漆を塗れる状態にすること。
あまり知られていないかもしれませんが、堅牢な漆器をつくるためには欠かせない大変重要な工程でもあります。


下地では、木地に布や和紙を貼って補強することがあります。通常は漆を塗り重ねて見えないようにするのですが、森田さんがつくる漆器は、布や和紙の模様が浮き出た独特の風合いが特徴です。

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▲和紙の模様が浮き出た漆器

今回は森田さんがどのように漆器と向き合っているのか、お話を伺いたいと思います。


和紙を漆器のコラボレーション

――森田さんの作品はひと目ですぐにわかるくらい、独特な漆器ですよね。いつから布や和紙の質感を出す漆器をつくりはじめたんですか?

20年くらい前かな。もともと京都では「布摺(ぬのずり)」っちゅう、木地に布を貼って布目が出るように漆を摺り込む技法があったんやね。漆が高価な時代にできるだけ漆を使わずにつくるという発想から生まれた技法やけど、布や和紙のテクスチャを出したら面白いかなと思ったんやわ。

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▲森田清照さん


――京都の技法からインスピレーションを受けたんですね。

河和田自体が輪島や山中、京都など、いろんな産地の技法を取り入れて発展してきた産地やからね。和紙なら近くに「越前和紙」の産地もあるから、いろんな紙を使って個性を出してみようと思ったの(笑)。

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▲森田さんの漆器は、楮紙(コウゾの繊維を原料として漉いた紙)や雲竜紙(長めの繊維を入れて雲のような模様を表現した紙)、落水紙(和紙の上に型を置き、水をかけることで模様をつけた和紙)などを使って凹凸を出す。越前和紙は繊維が絡み合って丈夫なため、漆器に使ってもほぼ破れることはないそう


人の手のあたたかさを残すものづくり


ーーどうやってつくるのか、見せてもらってもいいですか?

じゃあ、やってみようか。まずはヘラを使って木地に糊漆(のりうるし)を均一に塗っていく。この糊漆は自家製で、水につけた生米をミキサーにかけて、ドロドロに煮てから漆に混ぜてつくってるんやわ。

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▲接着剤の役割を果たす糊漆。産地によって配合も違うそう

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▲糊漆を丁寧に塗り広げていく。簡単そうに見えますが、均一に塗るのは至難の技です

糊漆を塗った後に和紙を貼りつけて、一晩経ったら柿渋を塗る。和紙の毛羽立ちを抑えるし、柿渋を吸った方が木地に弾力が出るからね。そして漆を塗り重ねていったら完成やね。


ーー和紙をコラージュしたような漆器もありますが、こんなデザインにしようとか、頭のなかで考えているんですか?

デザインとは考えてないけど、和紙を貼りつけていくときに、どこかに遊びをいれて隙間をつくるようにしてるね。単に曲がっているとただの下手くそやけど、きちんとなりすぎても面白くない。微妙なところで、人の手が入るあたたかみを出したいっちゅう考えかな。

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すべての工程を知りたい職人としての欲求

ーー森田さんは日展(日本最大の総合美術展覧会)にも作品を出展されてるんですよね。

もうかれこれ40年出してるね。1年に春と秋で2回開催するから80作品くらいつくってるかなぁ。今つくってる最中のを見せようか。

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▲現在製作中の作品

ーーえ、すごい!! こんなに大きいんですか!

これはサザエの貝殻を輪切りにしたオブジェ。まだ途中やけど、発泡スチロールを削ってフォルムをつくり、麻布を貼って漆を塗り重ねていく作品やね。


ーー造形から森田さんがご自分で手がけているんですか?

ほやね。自分で出展する作品やったら1から10まで自分でできるから。普段の漆器づくりはどうしても分業制やから、自分で最初からやってみたいっちゅう欲求が出てくるんやね。

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▲サザエの貝殻を見ていて、これを切ったらどうなるかなと思ったのが作品きっかけだそう

ーーすごいなぁ……。どこからそういう発想が生まれるんですか?

やっぱり自然からアイデアをもらうことが多いかなぁ。勝山に行って恐竜の骨を見てるときれいやなぁと思うし。次つくるなら、骨のようにエッジのない三次曲面の造形をつくってみたいね。


ーー僕は商品としての漆器をつくることがほとんどですけど、作品として漆芸に関わっているといろんな気づきがありそうですよね。

ものづくりは「人と素材と技術」によって成り立つっちゅうことをあらためて実感するようになったね。商品づくりはクライアントの要望に合わせることを突き詰めないといけないけど、作品はいかに自分が納得できるものをつくるかを追求しないといけない。どちらもやることでお互いにいい影響を与えているような気がするなぁ。

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ーー職人として考えていることや、これからのつくり手に伝えたいことはありますか?

高校卒業からこの世界に入って45年。漆器に布や和紙という素材を使うようになったけど、まだ新たな素材を見つけたいっちゅうのが職人としての最後の目標やね。なかなか難しいけど、それが見つけられると、職人としても産地としてもまだしばらく生きていけそうな気がする。

越前漆器にかかわる今の若いつくり手もどんどん外に出て、産地に新しい風を取り入れてくれるとうれしいなぁ。

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(了)

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伝統工芸というある種確立した技術のなかで、実験と挑戦を続ける森田さん。その職人としての姿勢は、越前漆器に限らずものづくりに携わるすべての人たちを勇気づけるような気がします。私自身も産地の未来を考える貴重な機会になりました。


森田さんの商品はこちらから購入いただけます。

森田清照さん


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