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おねえさん

親が鬱陶しく思えるようになった
思春期の頃からか

母ともちゃんとした大人の会話を
あまりしてこなかったせいか

母の認知症が進んできて
私を呼ぶのに
まるで他人のように
「おねえさん」とか
「すみませんが・・・」とか
私が誰だか分からなくなって
面識のない人に話しかけるようにされても

それまでの私は
家族よりも外に気持ちが向いていたせいか
昔はあんなにしっかりしていた人だったのにとか
親が自分の事もわからなくなってしまって悲しいとか
そんなに感傷的になることもなく

認知症で家族の事さえわからなくなってしまうという
よく見聞きしていた状況が
ついにうちでも始まったかと
不謹慎にもきこえると思うが
少し浮足立ったような気分で
心の葛藤を感じることなく
現実を受け入れることができた

母に「おねえさん」と呼ばれたら
「はい、何ですか?」と
知らないおねえさんのように返事をして

私の事を忘れてしまったの?
などとは言わずに
母の様子をうかがいながら
母の現実に合わせて
淡々と
いつも会話をしていた

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