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それから・・・

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#タロット

罪悪感

罪悪感

仕事以外で出かける
たいていの
自分が楽しむための外出

友人とランチに行く
ひとり旅をする
ライブに行く
ボディボードに行く
等々・・・

約束をしたり
計画を立てる段階から

楽しみな気持ちと
介護が必要な家族がいるのに
放って出かけるという罪悪感は
いつもセットになっていた

もちろん
自分がいない時に
何かあっても問題がないように
デイケアやショートステイや訪問介護は
必ず手配していたけれ

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ギリギリ

ギリギリ

精神状態を崩して
毎晩興奮して騒いで暴れて
手の付けられない状態になってしまった
母の入院が決まった時

父が炊飯器をガスの火にかけて
家じゅうが真っ白に煙った日から
毎晩1時間毎にアラームをかけて
何かやらかしてないか
父の様子を確認する日か続いたが
父が自力で立ち上がれなくなって
父の入院が決まった時

母が最初の入院で退院した日から
また始まった
毎晩の母の興奮状態との闘いが
かかりつけの内

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バナナ

バナナ

母の毎朝の朝食だったバナナ
母か亡くなってからは
あまり買うことがなかったが

久しぶりに
朝食にバナナを食べようと思い
スーパーで
何種類かあるうちの
少し高めの
美味しそうなのを選んだ

しかし
亡くなくなった母に
毎朝刻んで食べさせていた時には
一番安いバナナしか
買ったことがなかったことを思い出し

自分で食べようと思ったら
美味しそうな高い方をと
無意識に選んでいた事に気づいて
ハッとし

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無力な存在

無力な存在

母の表情が乏しくなり
何もしゃべらないことも多くなってきた時に
ふとした拍子に
少しでも表情がほぐれて笑顔が見れると
嬉しくなった

母のおむつ交換の時に
おむつを取ったままベッドに座らせていたら
母が尿を漏らしてしまい
ベッドの下まで垂れて
床まで濡らしてしまったが

こんな格好のまま座らせておいて
身体が冷えてしまったのかもしれない
自分が母を世話して
しっかり守っていかなくてはいけない
と思

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つけ

つけ

母の身体の
脚力
体幹
腎臓・・・

見た目や
健診の数値で
少しずつ
衰えが増えてきて

さらには
片手だけグーにしたまま
指を伸ばすことが
出来なくなってきて

無理に広げようとしても
痛がって広げられなくて

お風呂上りなど
温めるながら
ゆっくり時間をかけると
やっと少し
握ったままの指がほぐれてくる

母の様々な身体の衰えを感じながらも
年のせいだから
仕方がないと
完治を目指すような治

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父のあしあと

父のあしあと

ご近所の家まで
町会費の集金に出かけて
玄関のインターホンを鳴らすと

鼻にチューブを入れたおじいさんが
玄関の横の部屋のサッシを開いて
顔を出した

自分の名前と町会費集金と用件を告げると
おじいさんは部屋の中を何かゴソゴソと探し始めて
のど飴の入った袋を
おじいさんが町会費を用意するまで
これを食べて待っててと
ニコニコしながら差し出した

そして昔、うちの父が
おじいさん宅にお邪魔して
歓談

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鉄の扉

鉄の扉

インターホンを押して
名前を名乗ると
職員の方が鉄の扉を
内側から開けてくれる

母が入院した病院や老健
そして最後に入院したICUでも
母は鉄の扉の内側にいた

鉄の扉は
扉の外の世界で
生きるのが難しい人や

扉の外の世界の
有害なものから
守らなくてはならない人の
ためのものだが

母が鉄の扉の内側にいることは
親しい人にも
容易に話せることではなかった

母が亡くなった夜

母が亡くなった夜

母が亡くなった夜

夜ベッドで寝ていると
目を閉じたまま
急に身体が10センチくらい真上に
宙に浮いた感じがした

そしていきなり
寝ている体の方向が
ガクッと90度変わり

寝たまま身体が浮いたまま
足の方向に
かなりのスピードで
部屋の端まで
ゴォーっと
進んでいった

だから
今、自分がいるのは
寝た時の場所から
かなり移動しているはずで

それを確認したいと思い
目を開けようとしたが
開け

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お兄さんたちの事

お兄さんたちの事

夜勤明けのグループホームのお兄さんが
親族だけの葬儀を数日後に控え
家に安置されている母に会いに立ち寄ってくれて

母がグループホームで
よく好んで飲んでいると聞かされていた
ジョアを上着から取りだし
さり気なく手向けて
お線香をあげて
両手を合わせて静かに帰っていった

その前日の夕方訪ねてきてくれた
グループホームの別のお兄さん達2人は
私が母の顔の上の白い布を取ると
母の名前を何度も呼びなが

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書きかけの寄せ書き

書きかけの寄せ書き

「早く元気になりますように」
「またお会いするのを楽しみしています」

母が亡くなって
自宅に安置されている時に
グループホームの方が届けてくれた
母の顔写真が真ん中に貼られた
寄せ書きの色紙は

その死があまりにも急だったことを
物語るように
未完成で余白部分も多く

翌月の母の誕生日のために
どんなケーキを作ろうかと
考えていてくれていたことも
グループホームの方が
話してくれた

父の時もそ

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