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魚を切る

 どこへも行けないゴールデンウィーク、子どもと遊んでウマを育ててポケモンを撮影するだけの日々を過ごしていたら、港町に住んでいる親戚から冷凍便で上等な鮪(中トロ)の柵が届いた。どういう風の吹き回しか、初めてのことだ。

 いつも家庭で食べるにしても、スーパーの特売で800円から1000円くらいで買えるバチ鮪が関の山。もちろんバチ鮪だって十分に美味しいのだが、数千円はするはずの立派な中トロなど切ったことがない。

 とりあえず、荷物に同封されていた水産卸売業者の説明書きに従い、解凍することにした。袋から鮪を取り出したら水道水で表面の切り粉を洗い流し、洗い終わったら表面の水分をキッチンペーパーでよく拭き取る。ドリップ(水分)が出てしまうのは味が逃げてしまうから厳禁なのだそうだ(つまり、スーパーの特売で買うときもドリップが少ないものを選ぶのが適切ということだろう)。
 次に鮪をジップロックのようなファスナーつきの袋に入れて空気をなるべく抜いて密閉し、ボウルに張った氷水で冷やすこと約90分。
 表面が軟らかくなり、指で軽く押して芯が残っているくらいの「半解凍」が調理しやすく、鮮度が落ちないのだそうだ。

 肝心の刺し身の切りかたは詳しく書かれていなかったので、ネットで検索してみた。下記のページがわかりやすかったと思う。

 目の向きが「右上から左下」になるようにまな板に置き、目に対して直角に包丁を入れるのが正解なのだとか。こうすることで、筋を断ち切るので口当たりがよくなるらしい。

「刺身を美味しく切るには、包丁の刃元を刺身に当てて、手前にすーっと引きながら1回で切るのが正しい切り方。刺身はやわらかくて崩れやすいので、身に負担がかからないよう、できるだけ触る回数を少なくするのが理想的なんです」

そう語るのは、伊勢丹新宿店の<東信水産>で調理を担当している安藤雅哉さん。

よくある間違った切り方は、包丁の刃先を刺身に当て、ギコギコ押しながら切るやり方。身がぐちゃっとつぶれて、刺身の見た目も食感も悪くなってしまうのです。

 大人になるまで正しい刺し身の切りかたひとつ知らなかったのだから、恥ずかしいことだ。

 しかし我が家にあるのはごく一般的な三徳包丁とパン切り包丁だけで、あいにく柳刃包丁がない。短い刃渡りで一度で引き切るのは難しく、何度か包丁を入れ直す場面があった。

 柳刃包丁というと普通、20,000円はくだらない高価なものだとばかり思っていたが、調べてみると案外、数千円程度から売られているらしい。

 家庭で刺し身を食べるにしても柵で買ってきて自宅で切ったほうが、出来合いの刺し身盛り合わせを買ってくるよりも段違いに鮮度が落ちずに美味しいというし、いつか自ら鮨を握ってみたいという憧れもある。これは燻製と同様、ちょっと凝ってしまうかもしれない。

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