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【スキル向上】保育をアップデートする方法

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 今日は、『「あたりまえ」を見直したら保育はもっとよくなる!』という本を参考に、保育の見直しについて考えていきたいと思います。

 保育って、毎年毎年、歴史が積みあがっていくものです。
それぞれの園が、それぞれの保育を行っている。
そして、その園の保育の歴史というものが積みあがってきます。
そんな中、保育を続けていくと、どうしてもその園の保育の仕方というものが固まってきます。
保育者の振る舞い、自分自身の保育の在り方なんかが定まってきます。

 これは、すごーく当然のことで、
私たちは保育の在り方が定まってくることで「余裕」と「見通し」を持って保育に向かうことができます。
 自分の中に「軸」をもって子どもたちと向き合うことが出来るんだと思います。

 しかし、その自分たちの保育の在り方、ふるまい方、そして軸だと思っていることを、
ずっとずっとそのままにしておくと、いつしか凝り固まって、目の前の子ども達の変化に対応しきれないといったことも起こります。
 保育の在り方は、軸となるものは、カチコチの鉄の棒じゃなく、柔軟性のある、よくしなる木のようなものがよいのではないでしょうか。

 時代とともに、目の前の子ども達の変化とともに、柔軟にアップデートしていく。

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スマホのアプリだって、気づいたら「アップデートしてください」と言ってきます。
「今まで問題なく使っていたんだけどなぁ」とはいっても、今後、そのまま使うにはちょっと不具合がある。
なので、「こことここを修正しています」
「アップデートしてください」と言ってきます。
 アプリそのものが変わるわけじゃない。
ただ見直しを行って、不具合があればアップデートで修正を加えていく。
 アプリならボタン一つで簡単にアップデートできますね。
 こうして、日々「最善の状態」が保たれ続けているわけです。

 保育とアプリが全く一緒だとは言いません。
しかし、アップデートを続ける、ということで、より「最善の保育のスタイル」が保たれていく。
修正を加え続けることで、良い保育が続けられる。ということが言えるかもしれません。
 ではでは、そんな「アップデート」に必要なものは?
 というと、それが今日のテーマ「保育の見直し」ということになると思います。

保育の見直し、ポイントは以下の4つです。

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 本書は、実際に行っていた保育をこう見直した、こう実践した。という内容の本です。
さらっと読めるというところは良いのですが、「自分たちはどうするべきか」「自分たちにできることは何か」といったふうに、いかに自分事として落とし込めるか、という点で難しさがあります。
なので、本書で書かれている事、プラス、わたくしシロヤギ的な補足を加えたポイントに集約してお話させていただきます。

今日の参考文献はコチラ

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それでは今日も、よろしくお願いしまーす!!

①本の概要

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まずは、本書の概要について、さらっと押さえておきたいと思います。
 この本、ご存知の方も多いのではないでしょうか?
 非常に人気の高い本で、Amazonでも楽天でも評価が高く、たくさんの良いレビューがついています。
 書店で見かけた方もいらっしゃるかもしれません。
 この本は、東京都足立区の公立の保育園で「保育をこう見直した」という記録と、その紹介になっています。
 2013年から2018年までの5年間でどう変わってきたか、ということが書かれています。
 
主に、0,1,2歳児の保育の見直しを行ったようです。
 具体的には、それまで主流だった一斉保育から、担当制の保育に変更。これを区の方針として打ち出します。
 また、それまでの保育のスタイルを、子ども達一人ひとりの育ちに合わせて変えていった。
 と言ったところです。
 本書は、どんな人にも伝わるような、やさしい文章表現、わかりやすいイラストで構成されています。
 読書もそれほど負担にならないので、保育者同士で回し読みして、自分たちの保育の見直しに活かすとよいかもしれません

②見直しの実例1

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それでは、実際に本書に書かれている「見直し」をしたこと、についてみていきたいと思います。
 まずは給食の時間。
 足立区では、それまでこんな給食の時間を過ごしていました
午前中の遊びが終わったらおかたづけ。手を洗って、エプロンをつけて、その間に保育者は配膳をします。
全員の給食の準備が整うと、「おててぱっちん、いただきます」といって給食の時間になります
 保育者は、午睡までの限られた時間の中で全員に食べさせないといけません。
それだけでなく、こぼれたスープやご飯をふいて、終わった子は汚れた服を着替えさせて……
 と言った風に、一日の中で一番忙しい時間を過ごしていました。
 ここで、この給食の在り方、というものを見直します
 「これって、ていねいな保育なんだろうか?」と考えたんですね
 
 それまで頭にあったのは、「給食を完食させること」「手際よく食べさせること」
 しかし、順番に手際よく食べさせるなんて、ヒナの餌やりと変わりません
 本当は、食事の時間というのは、乳児期に大切な「愛着」を形成するのに、非常に良いタイミングなんです。
 0,1,2歳児はその日の気分が食事にも影響します。
 また、口の中が敏感なので、食材のちょっとした切り方の変化を不快に感じてしまうことがあるんです。
 そんな子どもたちの、「食べたい、食べたくない」って気持ち。じつはすごく繊細なものなんです。
だから、こんな繊細な気持ちに寄り添ってくれる人のことを、子どもはとても信頼します。
こういった理由で、給食において「ていねいな保育」が望ましいとされているんですね。
 
じゃあ、どんな保育が「ていねいな保育」なのか、というところで、足立区が考えたのが、
 「一斉に食べる事をやめる」そして、「担当制の保育の導入」ということでした。
 自分たちのペースで食事ができる事、そしてそれを支えるための担当制です。
 少人数のグループで順番に時間差をつけて食事をとります。
 おなかがすいた子や、給食中に眠くなってしまう子などは先に。
まだ遊んでいたい子は後に、という風に、子ども一人ひとりの生活に合わせた保育を展開していったようです。
 結果、子ども達の生活リズムに無理のない保育になっていきました。
さらに、保育に気持ち的にも時間的にもゆとりができたことで、子どもたちの食べ方や発達に関して、じっくりと見ていけるようになった。ということです。

はい、いかがでしょうか。
「そんなの無理だよ。人員に余裕があるところでしか、できないよ」と思われましたか?
 もしくは、
「もうすでに、担当制だし、食事も時間差をつけてやっているよ」こう思った方もいらっしゃるかもしれません。あなたは、どっちの意見を持ちましたか?
私はですね、実は両方経験しています。
一斉に食べる給食と、時間差で子どもたちの生活サイクルに合わせる給食。
両方のスタイルで子ども達と給食を食べてきました
なので、両方の気持ちが良くわかります。
担当制についてですが、私がやったのは「緩やかな担当制」でした
基本的には、担当している子の食事、排泄等、生活にかかわる部分を重点的に見ていく。関わっていく。
しかし、他の子たちとも、普段の保育で十分にかかわることもできる。こんな緩やかな担当制でした。
結果としては、・・・とてもよかったです!
非常に穏やかなクラスになりました。
今思い返してみると、この緩やかな担当制には、スムーズな保育者同士の連携が欠かせませんでした
クラスの中に流れている大きな流れ、その目に見えない流れを、しっかり理解し合って成り立つもの。
なぜか1歳クラスなのに2階にあって、順番に食べていく、ってことが、なかなかスムーズにできない環境的な縛りもありました。
でも、何とか工夫して、担当制や時間差給食を行っていたんですね。
最初は難しいかもですが、挑戦するだけの価値は十分にあったと思います。

③見直しの実例2

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それでは「保育の見直し」をもう一つ
 今度は、遊びの見守り方です。
 それまでの足立区では、0,1,2歳児が園庭で遊ぶ時、「そっちはだめだよ」「危ないから上らないよ」という保育者の声が良く聞かれました。
 滑り台の階段を上ろうとしたら、ダッシュ。
 木のテーブルに上ろうとしたら、抱っこして違う遊びに誘導。という風に、
 安全の為には、危険なことは徹底して未然に排除するスタイルでした。

 そして、この遊びの見守り方、について見直します。
「あれもダメ、これもダメ、というのは正しい見守りなんだろうか?」と考えたんです。
そして、この「ダメ」の理由を考え直してみると、
実は「なんとなくダメ」といったものや「以前から乳児クラスは使ってなかった」
という、なんだか理由がはっきりしないものも多かったようです。
 
そして、子ども達の思いを大切にしたいと思うようになります。
 自分で登りたいと思って登ってみる。
 上りたかったけど、上れなかった。
 何度も挑戦して、ようやく登れた!
いつもと違う高さに立って見えた新しい景色。
 こういった経験や気づき、と言ったものを、0,1,2歳児だからこそもっと大切にしたい!と思ったようです。

遊びの見守りでは、大きなケガにつながる危険。
これがないように見守るのが大事です。
しかし、あらかじめ先回りして、ちょっとでも怪我しそうなことを全て禁止したり、制限したりする事で大事な子どもたちの経験を奪っているのかもしれません。
どのタイミングで、どう援助するのがその子にとってよいのか。
これを考えながら見守ることは、ルールを一律に守るだけの保育とは異なります。

滑り台の階段を上ってみようとする1歳児がいたら、走っていって止めるのではなく
落ちそうになっても大丈夫なように、背後に回る。
その子が上りたいと思うところまで登らせてあげる。
そして、その子の足が止まり、上にも下にも行けず、「どうしよう」と後ろにいる保育者を見た時に「抱っこしようか?」と声をかけてみる。
こんな見守り方をしてもらえたら、子どもたちは豊かな経験をぞんぶんに味わうことができるのではないでしょうか。

もちろん、ルールを全部無視して、子ども一人ひとりがやりたいことを全部させてあげるのは無理です。
また、園のルールの中には、しっかりと考えられて、子ども達の生活や遊びを守るために、絶対必要なもの、というのもあります。
大事なのは、このルールがある「理由」というものがしっかりと考えられていること。
そして、保育者みんなが、その「ルールの意味」をしっかり共有できていることだと思います。
それがあいまいで、いつの間にか「なんとなく」守らなければならない、となっているルールというものがあるのであれば、
それを見直しすることで、子ども達の生活や遊びが、より良いものに変わっていくかもしれません

④保育の見直しのポイント

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それでは、保育の見直しのポイントに進みたいと思います。
 保育のアップデートや見直しをする際に、考えおきたい、つかんでおきたいポイントを少し整理していきたいと思います。
 保育の見直しのポイントは大きく4つです。
 まずは1つ目「一律ルールについて考える」
 先ほどの滑り台における遊びの見守り方でも話しましたが、園内にある一律のルールについては再考の余地がたくさんあります。
そのルールができた当時はどうしても必要だからできた。そんなルールであっても、今現在ではどうだろう?
目の前の子ども達にとってそのルールが必要なのか?
それとも、保育者にとってそのルールがあるから、保育がスムーズに運ぶだけじゃないか?
子ども達の経験を奪っていないか?
子どもたちの発達に合っているのか?
危ないことだとしても、やり方次第で、よりよい保育ができるんじゃないか?
こんなふうに、すでに存在している「ルール」をいろいろと考え直すことで、保育を見直す機会というものが生まれてきます。

2つ目のポイントは「変える、変えないを決める」です。
 保育の見直しをする、というのは、「絶対に変化する」ということを、意味するものではありません。
 いろいろと話し合って考えた結果、「やっぱり、今のままのやり方がベストだよね」となってももちろんいいんです。
 大事なのは、保育者間でしっかりと話し合うこと。
今までやってきていることを、もう一度確認してみる事。
 そして、折を見て何度も確かめ合うこと、ではないでしょうか。
 
 このような見直しには、まずは保育者間の同僚性が育っていることが大事です。
 変える、変えない、の結果が重要なのではなく、そのプロセス。話し合いの過程こそが、保育の見直しの根幹です。
 その根幹を支える同僚性。
つまり、新人ベテラン管理者とか関係なく、保育者全員が対等に意見を言えているか。
お互いのことを信頼し、認め合っているか。こう言った土壌が何よりも求められます。
 対等な関係性だからこそ、保育についてしっかりとお互いの意見を言い合えて、しっかりと深めていける。
 保育の見直しに価値が出てくる、というわけです。
 この同僚性については「園内研修のススメ」という動画で詳しくお話しておりますので、興味のある方はご覧ください。

 3つめです。
 「動機とタイミングを計る」ですね。
 大きな変化を伴うものに関しては、「変化していこう」と思うための「動機」が必要です
例えば、園全体で行事を見直す、乳児保育の在り方を見直す。
その結果、「今までとは違う方法のほうが子どもたちにとってはいいよね」となった場合、大きな変化が求められます。しかし、私が知る限り、多くの園ではこういった「変化」を嫌う園長、管理職の方が非常に多いです。
今までやってきたことを変革するのは、新しいやり方を試してみるのは、途方もない労力が必要です。
だから、できる限り今のやり方を変えたくない、と、こう考える方が多いからではないか、と個人的には考えています。
 もちろん、そうじゃない園長先生もいらっしゃると思いますが。
実際、私の周りには、変革を嫌う方が結構多いです。
 こんな変革を嫌う管理職の方には、おおきな動機付けが必要です。なぜそう変化する必要があるのか。という動機ですね。
「もちろん、それが子どものためになるから!」という動機づけは、保育者間では納得されやすいですが、
保護者、地域、園の歴史、職員間の人間関係、などなど。様々な背景を見て園を管理している園長には、その動機づけだけでは動けないところがあるのかもしれません。
 こんな園長、管理者の方には、彼らの一番の動機に訴えかけるのが一番です。
 何をしたいと思っているか、今一番何に困っているか。
 そういったことを探り、そこにアプローチする。例えば、保育士の人材確保に困っている様子があれば、
「こんな保育をして、こんな保育をこうやって発信する。すると人材確保につながるかも」
 といった具合。

もしくは、良いタイミングを逃さない、という手もあります。
 例えば、私の例ですが、もう何年も前のことです。
 当時、先生たちの労働改善がなかなか進まなかったんです。
先生たちの残業を減らしたり、有給を消化させたり、こういったことで先生たちの負担を減らしたい。
負担を減らすことで、もっと子ども達と関わる時間の質を高めたい。こう思っていました。
しかし、先生たちにもっと有休をとらせてほしい。と園長にいっても、「忙しい」とか「人手が足りない」とかなんとかかんとか、あまりいい返事がかえってこない。
 どうしたものかな。と考えていた時、たまたまですが2014年ごろに「有給休暇取得の義務化」がニュースになりました。大企業で義務化を導入することを国会で検討している。といった内容。
 このニュースを見せつつ、「難しいのはわかるけど、早く対応しないと困ることになる」と話したんですね。
 結果、なんとその年のうちに職員の有給取得の見直し、翌年から新しい有給取得制度、誰でも10日以上の有給が取りやすい仕組みが誕生しました。
 現在では、2018年に「働き方改革関連法案」が成立し、2019年4月から中小企業は従業員に対して有給休暇5日分を取得させる、有給取得の義務化が始まっていますね。
 こういった、ニュースが出たことを、「いいタイミングだ」ととらえ、提案し、結果的に変化することにつながったのです。

 そして、今年はコロナ禍ということもあり、このタイミングで「発表会」の在り方も見直しました。
 見世物としての発表会にどんな意味があるんだろう?
 もっと子どもたちの成長、発達と結びついた発表会にできないか、と保育者が意見を出しました。
 そこで、発表会を開催せず、保護者に少人数づつ来てもらう。そして普段の劇遊びをしている様子をちょっと見てもらう。というスタイルに挑戦しました。
 良かったか、悪かったのか、これについては今も議論中ですが、こういったことも、いい見直しと変化のタイミングになったことは確かです。
 世の中の大きなタイミングに合わせて、自分たちの保育を見直し、変えていくチャンスに変える。
 こんなことを意識してみるのもよいかもしれません。

 見直しのポイント4つめは「外部からの刺激を得る」です。
 これまで、ルールを見直したり、保育者間で話し合ったり、タイミングを見て変化する、と話してきましたが、その根底に、皆さん自身が、外部からの刺激を得ることが重要です。
 本を読む、研修に参加する、他の園の保育者と話す。こういったことを繰り返し、自分の中の保育の知識をアップデートしていくことで、自分の園の保育もアップデートされていくのではないでしょうか。
 もしよろしければ、このチャンネルでも、今後も様々な保育の知識、保育のアップデートにつながる情報をお伝えしていきますので、引き続きお付き合いしていただければ嬉しいです。

最後です
 この書き起こしはYoutube で動画配信しております。
 今後も保育士さんの参考になることを発信していきたいと思いますので、
 「しろやぎ保育書房」Youtubeチャンネル登録、よろしくお願いします!

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 「保育を学んで見直そう。そして保育をどんどんアップデートしましょう!」
今日は以上になります。
 どうも、ありがとうございました!

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