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林英哲「題名のない音楽会(1)」

今回の和太鼓奏者・林英哲を迎えての企画は、ドラマーとコンガとのコラボでした。

前半では、三者揃ってのトークタイムがあり、それぞれがお互いの違うところや同じところを確認するように話している内容が興味深かかったです。

林英哲の和太鼓についての話では、まず、太鼓の台について。
和太鼓は本来、上から吊って打つ方が最も響きが良いということ。でも簡単できることではないので、なるべくその状態が再現できるように台に工夫をこらしてオリジナルを作ったそうで。

浅野太鼓にも「英哲台」というのがあり、実際、私たちも当たり前のように使用していたのですが、和太鼓を知り尽くした方だからこその知恵が盛り込まれた「THE 台」、改めて尊い…と思いました。

もう一つは、コンガの方が、浅野太鼓に特注でコンガを作ってもらってそれを愛用している、ということでした。
コンガはキューバ生まれの楽器ということですが、より日本の気候に合っている材質を追及して、浅野太鼓に発注したそうです。実際、キューバから持ち込んだコンガは日本だと胴の部分にひびが入ってしまうこともあるそうで。改めて、楽器の生まれた風土が音に与える影響とかを考えさせられました。

さて、最後に三者コラボの曲を披露していたのですが、なんと曲目はベートーヴェンの『運命』。

和太鼓、パーカッションといえば、リズムがメインでメロディを奏でるという感覚が強いわけではないので、一体どうなるんだ?とわくわく。

「聞いていると、メロディーが聞こえてくるんですよ」と演奏者陣は笑います。

いざ始まってみると、たしかに!「ドドドドン!」のリズムが「ジャジャジャジャ~ン♪」とメロディに聞こえてくるではありませんか。

ドラムと和太鼓とコンガ、それぞれの音をチューニングはしているのではないかと思いますが、それぞれがかけあうことによって、『運命』のメインテーマがメロディで浮かび上がってくるんです。

曲の構成としては、細かいリズムを刻みながらメインのリズムを林英哲の和太鼓が曲ををリードしていきます。

こういう時に思うのは、やはり、ドラムやコンガなどのパーカッションは、その他の楽器に対して地を打つのが担当といいますか、リズムキープであり、メロディなどのメインに寄り添うことが常だというのに対し、和太鼓は和太鼓そのものがメインとなって打ち込むのが常であること、それが和太鼓の強みでもあるように改めて感じました。

さて、曲は続き、そこから、和太鼓、コンガ、ドラム…とソロを回します。

その後、「ジャジャジャジャ~ン♪」のメインテーマを織り込みながら曲に一貫性をもたせつつ、
今度はその『運命』のリズムを崩し、それぞれの本来の持ち味を生かした、といいますか、よりオリジナリティを感じさせるリズム運びでソロをそれぞれ披露していきます。

各々の得意分野のリズムに曲を引き込んでくと、楽器本来の音色を思う存分発揮。曲の構成としても起承転結の「転」としてうまくひっくり返す展開になっていてソーエキサイティング〜!

そして結びへとすすんで曲が終わるのですが、とにかく一曲の中に様々なリズムが盛り込まれていて、でもそれらがしっかりまとめあげられていて、観ていて本当に楽しい曲でした。

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