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横笛、高嶺の花だと思ってた

いつか笛が吹けるようになりたいな、と思っていた。

えっとかれこれ20年ほどまえ、二十歳くらいの時に安い横笛を買って、笛に触れていた時期もあった。

当たり前だけど、すぐには上手になれないもんだから、その時の私は笛に熱をあげることもなく、あっという間に笛欲はフェードアウト。

それでも折に触れ、「いつか笛が吹けるようになりたい」と思っていた。

たとえば…娘が「海に行きたいっ」とせがんだ時に、「行こう!」と快く車を馳せて、
娘が砂をすくったり辺りを駆け回っている間、
私はおもむろに笛をとりだし、気ままにそれを吹き鳴らす。

ベタすぎるけど、すごく気持ち良さそうじゃないですか。それ、さらっとできたら。沖縄の海で。

けど、さらっと…なんて私にはだいぶハードル高いなぁ。だって上手に吹けっこないもんねぇ。

ところが、である。

笛仙人の話を聞いて、その考えがふわりっと180度ひっくり返ったのである。

今から約1ヶ月前の出来事だ。

私の目からウロコをはらりとさせた、笛の仙人・東氏(a.k.a 東風-Harukaze-)による笛の吹き方のノウハウはこうである。

「スタートの基本の一音をまず吹いて、自分の好きなタイミングで、音程を低くしたいなーと思ったら穴をふさいで、高くしたいなーと思ったら穴を開ければよい」というものだ。

これは当たり前の笛の吹き方のはなしをしているのではなく、

〝笛を吹く〟ということはつまり、既にある曲を楽譜通りに吹くことなのではなく、

自分の好きなタイミングで、好きなように指を動かして音色を紡げばよい、ということ。

どんな音が鳴っても間違いがなく、そこにあるのは正解のみ。

というかそもそも、当たりもハズレもない世界なのだ。

そうはいっても、ただ適当に音を繋ぐだけでは、なんだかへんてこなメロディーになるのでは?そう思う方もいるかもしれない。

ところがどっこい、今回、初心者用に…と東さんが選んでくれた笛は、ハズレがない音階が並んだ笛なのだという。

簡単にいうと、音がいくつか抜けている。穴の数は6つだ。

「ドレミファソラシド」が並んでいるわけじゃなくて、そこからハズレ音(と言ったら音に失礼だけど)が二つ抜かされているのだ。

このハズレ無しの音階は、古くから日本人が慣れ親しんできた音階にも通ずるそうで、どれを吹いても日本昔ばなしのBGMのようなメロディーが紡がれていく(ように感じた)。

素人でも吹きさえすれば、あっという間に良いカンジ~の笛奏者である。

その場に居合わせたお友だちのくみちゃん(東さんのパートナーでもある)が言った「ドレミからの卒業」という言葉は、まさに既存曲や楽譜に縛られない新しい笛の概念を言い当てていてさらに感動した!あぎじゃびよー。

そんなわけで、とにかく音階を気にせず、自由に気の向くままに吹き鳴らして失敗が無い、というのがこの笛なのだ。

ちなみに一番低い音から順番よく鳴らしていくと、童謡「あかとんぼ」の入りだしになる、というと分かる人には音階が伝わるだろうか。

ついでに言っとくと、こちらが音階のストレスに悩まされることなく吹けるのは、その笛の作者である東さんが笛の調律オタク極みだからであるといえる。そのオタクぶりが常人成らざる具合だったゆえ、私が彼を「仙人」と呼ぶに至ったわけであるが、そのくだんについてはまた別の機会に熱弁ぶちたいと思う。

さて、東さんの笛についてもう一つ嬉しいポイントがある。

この笛、原材料の竹は地元である沖縄県産なのであるが、それがどうも本土に生えている竹よりも少し太めで、音が幾分低いらしい。

笛の音の高低についても、これまた東さん曰く理にかなったあれこれうんちくがあるのだが(それもおいおいまとめたい)、何より私の目が輝いちゃったのが、
「そこまで主張のない音色になるから、どっか外で吹いてても〝誰かに聴かれているかも〟って変に意識することもないから吹きやすいよ。実際、高い笛で吹いていると、遠くからも人が寄ってきたりするんだけど、そういうのがほとんどない」ということだった。

私、ますます海で吹けんじゃーーーん♡

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