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【試し読み版 4/4】 投資に正解は存在するか - 第三章:資本主義全体の成長に賭ける

このページは書籍「投資に正解は存在するか:堅実な株式投資と資産形成の入門ガイド」の試し読み版(全4ページ)で、4ページ目「第三章:資本主義全体の成長に賭ける」の章です。

本書の正式版は、ペーパーバック版およびKindle版が発売中です(Kindle Unlimitedにご加入の方は無料で購読できます)。書籍の詳細については、シロイブックス公式サイトの書籍情報のページもご参照ください。


結局、どうすればいいのかという話

準備ができたなら、希望の話ができる

第二章までは本書の導入部分として、投資の世界を歩くための基本的かつ重要な考え方、特にあなたを待ち受ける罠の存在や、よくある誤解と幻想について詳しく述べてきました。投資とは本来どのような行為で、何を選んだら失敗することになるのかというのが、ここまでの内容です。読者を焦らすつもりはないので、この第三章からは具体的に「では何に投資していくのが正解なのか」という疑問に答えていきたいと思います。

ただし、その答えは「これをこのように買えば大丈夫です」という短い形では述べません。結論に至るまでの経緯を順番に説明して、最後に要点を整理するという形にします。これまでにも何度か述べたとおり、自分自身の力で理解するということが重要だからです。

答えだけをすぐに教えてくれたほうが楽だと思うでしょうか。ここで「いや、面倒だけど仕方がない」と気を持ち直すことができたなら、あなたは投資の世界に足を踏み入れる準備ができたと言うことができます。「教習所に通わなくても車を運転していい」と思わないのは正しい状態です。ここまでに述べた投資の難しさと危険性を認識し、これから自分の大切なお金をそのような世界に持っていくのだという自覚があるなら、以前のように「めんどくさいから難しい説明はいいや」などとは思わないはずです。

ここまでは随分と夢のない話が続きましたが、この第三章から、ようやく明るい話題が出てきます。それは、堅実な投資手法が持つ力の大きさと、意外な安定性の話です。

第一章では投資の持つ本質的な難しさ、第二章ではその結果のランダム性についてお話ししました。ランダム性についての説明の中で、コイントスの結果から偶然を排除する方法は試行回数を十分に増やすことであり、投資でそれに相当するのは時間という枠を長く確保することだという点に触れました。これを具体的な投資手法として実現できる方法があるのかということが、この章で扱っていく内容になります。

投資の種類についてのおさらい

投資の解答を扱う章を始めるにあたって、有名企業の名前を並べて「どの会社の株を買えばいいのか」というような話よりも、もっと広い視野から考えていくことにしましょう。ご存知のとおり、投資というのは株だけが対象ではありません。

自分のお金を何に投資するかということを検討するとき、投資対象として考えられる主要なものを一覧にすると、以下のようになります。

  • 株式(事業を行う会社に出資して、会社が出した利益から配当金などの見返りを受け取る)

  • 債券(資金を必要としている国や企業などにお金を貸し、利子を受け取る。債券自体の価格変動もある)

  • 不動産(住居やオフィスなどの建物を運営し、家賃収入を得る。建物自体のオーナーにならなくても、小口で出資できる不動産投資信託=REITがある)

  • 商品(金=ゴールドなど。これも物理的に所有しなくても、上場投資信託=ETFなどで購入できる)

  • 通貨(ドルやユーロなど。外貨預金、FXといった方法がある)

他にもありますし、この先新たなタイプの金融商品も出てくるかもしれませんが、大まかに挙げればだいたいこうなります。先物やオプションといった商品をご存知の読者もいると思いますが、このような金融商品は専門性が高く、個人投資家が扱うものというよりは商業の世界で特定の役割を果たすために存在しているものなので、この一覧には含めていません。

投資信託という言葉が普通に出てきていますが、これについても少しだけ説明しておきます。投資信託(ファンド)とは、私たちのように投資をしたいと思っている人たちからまとまったお金を集めて、運用会社がそのお金で株式などの個別の商品を買い付けて運用・管理し、そこから出た利益を分配してくれる仕組みのことです。つまり「投資信託を買う」というのは、そういうタイプの独立した投資対象がどこかにあるのではなく、運用会社の便利な仕組みを利用してその先にある何らかの投資対象を買うことを指しています(「NISAを買う」という言い回しも似たようなもので、これは第六章で出てきます)。その先にある投資対象というのは、株式や債券といったさきほどの一覧で書いたものなので、やはりそこから何を選ぶべきかという話になってきます。また、「上場」という言葉もよく出てきますが、これは会社の株式や投資信託の商品を普通の人たちが日中にいつでも取引できるよう、証券市場に公開する手続きを指します。

一覧の最後に、通貨という項目がありますね。あなたが普通に銀行の預金を持っている場合、実はこれは日本円という通貨に投資していることになります。銀行にお金を預けただけなら投資も何もしていないように思えますが、これもあなたが行った投資的選択の一種です。仮にインフレが進んで世の中の物価が上がれば、10年前と同じ「100万円」という数字の価値も、実質的には目減りします。一方で株式や不動産を持っている場合は、その企業の製品価格から来る売り上げや、物件の家賃といったものがある程度まで物価と連動するので、現金にはないインフレへの対応力が期待できます。

このように、人がお金を所有する以上、投資という行動は避けられません。ここに一覧にした項目は、あなたの大切なお金の一部を特別な何かに託すというより、「これらの投資先といういくつかの入れ物に、自分が所有するお金のような数字のすべてを漏れなく振り分けて収納しなければならないのだ」というイメージで考えてください。その配分は自分で決める必要があります。

また、第一章と第二章の中で仮想通貨という単語が出てきましたが、この一覧にはそれが含まれていないことに気づかれた方もいると思います。本書で扱いたいのは、投機的な流行の話題ではありません。時流を問わず役に立ちそうな投資の方法について考えていきたいというのが本書の目的なので、流行りの金融商品は除外します。

一覧にしたさまざまなタイプの投資対象から正解を選び出すために、この点をもう少し詳しく補足してみることにします。

中身のある投資対象、そうでない投資対象

17世紀のオランダで、チューリップバブルというものがありました。これは当時のヨーロッパで物珍しかったチューリップが投機対象となり、希少で美しい品種のチューリップの球根などが高値で取引されたというものです。バブルという言葉で歴史に残っているように、市場の熱狂によって法外な値段がつき、あるタイミングでお決まりの暴落を迎えた(というか、このような事件がその後も世界各地で繰り返されることによって「お決まりの結末」と理解されるようになった)ということです。

第一章でも考えてきたとおり、投資の世界で価格を決めるのは、その対象の実態がどのようなものであるかというより、世間の人間がその価値をどのように考えているかという点です。世間に流通する商品の値段というのは、ほとんどがそのようにしてつけられており、これは仕方がないことです。みんなが欲しがるのであれば、それは実用品や生活必需品である必要はないし、宝石であれチューリップであれ関係ありません。しかし、程度問題というものがあります。

たとえば不動産からの収入を考えた場合、その土地の持つイメージやステータスといった曖昧なものに左右される面はあるにしろ、基本的には住居という人の生活に必要なものを提供しており、入居者だって利便性というものを案外シビアに見ています。そのため、不動産につけられる価格にはそれなりの妥当性があるのが普通です。つまりチューリップと比較すれば、不動産は投資対象として「より適切」もしくは「中身がある」という見方をすることができます。チューリップは極端な比較対象なので、世の中にある投資対象の大半は「チューリップよりは適切」と言えると思いますが、このような比較の視点を持つことは重要です。

仮想通貨にしても、それは現実に利便性を持っているテクノロジーなので、将来的に社会のインフラとして今よりも重要になる可能性はあります。ドルや円と並んで、特定の仮想通貨がひとつの通貨としての存在感を持つ未来があるのかもしれません。しかし、本書の執筆時点である2024年では、まだ不確かな未来に対する期待と熱による投機的な色合いが強く、不動産のような実態から期待できるリターンとはやや異なっています。

仮想通貨では、2010年代の後半に世界的なバブルが一度発生しています。これをチューリップと比較するのが適切かどうかは現時点ではわかりませんが、さら10年や20年という時間が経過したのち、まったくの期待外れだったという結論が出る可能性は排除できません。実際、2021年頃に持て囃されたNFT投資などは、本書が出版される頃には誰も覚えていないでしょう。当然、そのようなものを掴んでしまうのは避けようという話になります。

本当に進むべき道

さまざまなタイプの金融商品を並べてみて、さて何を選択するべきかということを考えるとき、経済学的にはこの答えは既に出ています。この章に入るまでの話が長くなってしまったので、ここではさっさと結論を述べることにしましょう。

(……と、核心に迫ったところで恐縮ですが、試し読み版で公開されている内容はここまでです。続きは正式版の書籍にてどうぞ!)

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