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《対話序章》 プロと話すと、本当に目から鱗が落ちるのだ。

音楽にはまったくの素人の私でも、noteで記事など書いていると思わぬ人と話すことができたりする。
今、一番ホットにやり取りさせて頂いているのが作曲家・編曲家としてご活躍されている野井洋児さんという方だ。

野井さんは2000年代にキャリアをスタートし、BoAへの提供曲は紅白で披露され、他にも浜崎あゆみ、Little Glee Monster、JUJU、日向坂46などメジャーアーティストの数々に楽曲提供されているプロミュージシャンである
なんて知ったようなことを書いているが、この私も最初の挨拶を交わした後にその事実を知り、腰を抜かしてしまったのだ。

慌てて彼の提供曲一覧に目を通してみたのだが、出てくる名前も田原俊彦にV6、岩崎宏美、中森明菜…そんな大御所へのソングライティングから有名なアニソン、ゲーム曲の数々まで、本当に幅広く手がけていらっしゃる。
もう、それを知ってからの返信が冷や汗ものであった。

なぜそんな方が、私と話す気になってくれたのか。
それはひとえに、私がこのnoteでチャゲアス、そしてASKAについてやたらと書いているからに他ならない。

野井さんという方は、プロとしてオールジャンルの楽曲を生み出していらっしゃるが、その一方で、CHAGE and ASKAの楽曲に心底深く惚れ込んでいるファンの一人なのだ
彼らの音楽性やパフォーマンス、そしてとりわけASKAの生み出すメロディ、コード進行への惚れっぷりが半端ない。
奇しくも最近、野井さんはご自身のブログでチャゲアスの楽曲の素晴らしさについて細やかに語ってくださっており、私もその記事を目にして非常に感銘を受けていた。

「ASKAさんって、ここがスゴいですよね」
「うん、確かに、音楽的にいうとここが超絶スゴいんです」

そんな世間話のようなやり取りが自然と始まったわけだが、野井さんの文面の奥に潜むとてつもない音楽愛を感じるにつれ、私の中にはムクムクと一つの想いが湧き上がってきた。

そう…実は私、恥ずかしながらずっと思っていたのだ。
よく音楽に詳しい人が、
「ASKAの曲はさ、実は相当に複雑なことをやってるんだよね」
などと言ったりするが、私も一度でいい、そんなカッコいいことを自分の口から言ってみたいなぁ、と。
だが、音楽素人の私は、どこが「相当に複雑」なのかがイマイチわからない。
わからないものは語れないわけで、いつかちゃんと腑に落ちるまで理解したいなぁ、なんて思っていたのだ。

プロの方にこんな間抜けな質問をするのもちょっと気が引けたが、私は思い切って聞いてみた。

「ASKAさんの楽曲が複雑だとよく聞きますが、一体なんのことを言ってるんですか?」と。
こんなことを、音楽的な素養が全くない赤子のような私に、諭すように教えて欲しいなどと、お忙しいのを承知で頼んでしまったのである。

他にも、
「作曲活動をされるにあたり、CHAGE and ASKAからどんな影響を受けていますか?」
そして挙句の果てには、
「プロが本気を出した場合、ASKAさんの真似はできますか?」
なんて失礼極まりないことまで聞いてしまった。
純粋な興味として、音楽を生み出す人が、チャゲアスのどんなところに惹かれ、そしてどんなエッセンスを彼らの楽曲から引っ張り出すのか、ぜひご自身の口から聞いてみたかったのである。

こんなことを野井さんに聞いてみたくなったのには、一つの理由がある。

音楽って楽しいし、感覚で作れるもの。
そして感覚が悪ければ作れないもの、つまり音楽=「才能」なのだと、人は思いがちであろう。
だが野井さんに作曲家として大切に思うところを聞いてみると、
「作曲は、努力!」
という重い言葉が返ってきたのだ。
(メロディだけはプロの間でも「才能」と思われがちだそうだが、やはりそれも「努力!」である程度はどうにでもなるというのだから…すごいことである。)

つまり、正当な努力を重ねれば、行けるところまで人は行けるのだという。
これはメソッドを知っている人の言葉だな、とそのとき私は思ったのだった。

野井さんは半年ほど前から、かなりこと細かくご自身のブログで、音楽についてを語ってらっしゃる。
それも、頭でこねくり回した言葉でなく、いばらの道をバッサバッサ切り開いてきた、ご自身の泥臭い音楽体験記として。

このブログ、めちゃ面白いのでぜひとも読んでみて欲しい。
音楽に興味のある人にとって、実にためになることが書いてあるのだ。 

大学に進んだばかりのうら若き青年が、軽音部に入るところから話は始まる。
そんな彼が悩みながら社会に飛び込み、魑魅魍魎、だけれども大きな可能性を秘めた音楽業界の荒波に揉まれながら進んでいき、やがて紆余曲折をへてメジャー作曲家という”音楽勇者”へと成長を遂げていく…
なんていうリアルRPGを、一緒にプレイさせてもらってるような気持ちになれる。

旅路の途中で、勇者・野井さんはバラバラに飛び散った音楽のかけらを集め続ける。
そう、このかけらで、音楽というものは作られているらしいのだ。

コードやメロディを組み合わせるコツは?
インパクトある編曲って何?
どうしたら、プロの音源みたいな音に近づけられるのか?
人の胸に届く、ボーカルや歌詞とは?

それらを野井さんは、ノリではなく生き残るための必需品として、時に悩み、時につまづきながら、あやふやを確信に変えるようにして地道に集めていくのである

彼がブログで振り返っていたその半生には、音楽に必要な要素がすべて詰まっているようだった。
まるで、音楽というドロドロで魅惑的なスープ、口に入れてみればただ「美味しい」だけのスープが、野井さんというフィルターをゆっくりと通過することで、綺麗にその構成する素材、スパイス、そして最後の一滴までの水とに分けられていく…そんなイメージが浮かんできた。

野井さんの振り返る半生からは、初めて尽くしの道に飛び込んでいく勇者の姿がある一方で、決してノリや気分で難問を処理しない、そんな誠実な料理人の姿までもが浮かんできたのであった

そこで思わず冒頭のようなことを、私は尋ねてしまったのである。

すると、そこからとんでもなく長いメールの往来が始まった。
新型コロナの影響で直接お会いすることが叶わぬ中、実際にお会いしていたらこんなことを聞きたい、あんなことも…と続けているうちに、私たちの間にはいつのまにか、一冊の本にもなりそうな質と量のメールが積もっていったのだ。
音楽について素人の私にとっては、宝の山のようなメールである。

それにしても。
「プロの見ている世界というのは凄いな…」と、最近の私はため息の連続である。
以前、プロダンサーの方に田原俊彦のダンスを教わって目から鱗が落ちたように、その道のプロフェッショナルとの対話は刺激的で、とてつもなく楽しい。
いつも見ている世界の色が、ガラッと変わってしまう興奮に襲われる。

野井さんとの対話もそうだ。
今まで私は何て浅い世界を見聞きしてたんだ、というショックも味わうし、今このタイミングで知っておいてよかった!という、深い喜びの入り口に触れるような、すごく前向きな気分にもなる。
とにかく対話とは、そこにチャンスがあるなら何を差し置いてもやってみるべきもの、と思うのだ。

…などと力説してみたところで、私は今、猛烈に空ぶっているのを感じている。
大丈夫、感じてるよ。
「おい、一体どんな対話をしてきたのか書けよ!」という声を。
そうなのだ。それを書かなきゃ、こんな話は全く意味がない。

というわけで。
これから、重ねてきた対話をまとめて、順次このnoteに公開していくつもりである。
かっちりした予定があるわけではないけれど、まとまってきたので出す、というラフな気持ちで進めてみたい。
読んでくださる方々も、野井さんがいかにプロの音楽家であろうと、私のような素人相手にリラックスして語った<完全なオフトーク>ということを念頭に、ぜひ肩の力を抜きリラックスして楽しんでいただきたい。

そしてぜひとも「目から鱗」な感覚を、読んでくださる方々にも追体験していただけることを目標に、書いていきたいと思うのである。

野井洋児さんの音楽に興味を持たれた方は、ぜひこちらを。
この春にサブスクリプションにて公開されたアルバム『みんなのうた』プロジェクト、そして過去のメジャーリリース作品のYoutubeリストです。
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『みんなのうた』プロジェクト → https://linkco.re/q7Y9038Z
メジャーリリース曲MVリスト → https://www.youtube.com/playlist?list=PLiqjsLSlY4qAy59PW4fa57AZw3b3Fro_P

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