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YOASOBI / ハルジオン の話

まとめて買った楽曲を一通り流した時、特にこの楽曲は初めて聴いた瞬間から好きでした。初期のYOASOBIの中でも一番好きだったかもしれません。
イントロから何か心の琴線に触れるものがあり、そして楽曲の内容もわかりやすく、切ない。でも前向きになれる・・・そんな楽曲。

2020.5.11リリース / 作詞 作曲 Ayase

YOASOBIとして3作目となるシングル。
この楽曲は橋爪駿輝の小説「それでも、ハッピーエンド」を原作として作り出されました。内容としては、大学生時代に恋仲にあった二人が社会人になってもこの関係が続いていくと信じていたけれど、環境の変化によって恋人としての関係を維持できなくなって別れてしまう。その時のリアルな心情を描いており、失恋の苦しみによって堕落しきった生活が続きますが、ふとしたきっかけでもう元に戻らない過去に折り合いをつけ、未来に向かって立ち直っていく・・・人生が花開くのはまだまだこれから。
という似たようなことを誰しもが一度は経験するであろう甘くも苦い人生のワンシーンを見事に楽曲として仕上げています。

相手に思い入れがあればあるほど失恋というのは辛いというもの。その瞬間の人間の心理的なドロドロとした、美しさとは真逆の状態をシンプルな歌詞ながら非常に綿密に伝えられるように作曲されていて、歌唱の面でもそれを汲み取って十二分に曲を聴いた人が感じ取れるようになっています。本当に舌を巻くと同時に自分の過去の経験を呼び起こすんですよね。苦くて、くるしい。
でも楽曲の後半でその苦くもくるしい、もう戻らない記憶や想いは心のアルバムに仕舞って、未来へ歩きだしていく。素晴らしい楽曲でした。

MVについて

MVについても語らなければなりません。
アートワークにあるパステルカラーと絵柄そのままを活かしたMVとなっており、美大を出てイラスト制作会社に就職した女性の視点で描かれています。彼女が業務上で使っているであろうPCウィンドウという概念を上手く、上手すぎるくらい活用された映像に仕上がっており、特に「まだあの日の二人に手を伸ばしてる」の箇所で手を伸ばした彼女の窓枠が無限に出てきて手を伸ばしつつ、それでも彼とはすれ違っていく・・・という演出は天才だと思いました。あとは「そこにはただ美しさの無い 私だけが残されていた」の部分。力なく体育座りをして表情を失った、たとえ心に鍵をかけたとしても伝わるほどの剝き出しの心の姿の表現としてこれ以上のものはないなと。

LIVEのハルジオン

YOASOBI ARENA TOUR 2023 "電光石火"でのハルジオンはシンプルな白いバックライト、思い出の欠片を現しているような様々な形の白い煌めく破片のようなものがLEDビジョンに映され演じられました。
色でいうならばアートワークにあるようなパステルカラーなどもない、ほぼ白を基調とした照明の使い方でしたが、曲の雰囲気やリズムに完全にシンクロして電球色と昼白色のバックライトが明滅やスライドして視覚的にも最高の演出でした。凄いよ
楽曲の最後のAssHのアコギが爽やかすぎて、、一聴の価値ありです。

今でもランダム再生でこの曲が来たら嬉しい。と同時に楽曲に耳を傾ければ傾けるほど苦い記憶がじわじわと呼び起こされ湧き上がってきます。
それでも。聴き終わった瞬間にはちょっとスッキリする。大好きな楽曲になりました。

次は「たぶん」になる予定です。
それではまた。