見出し画像

33歳の育休02|授業と産休

 2024年の春に第1子を出産しました。33歳の大学教員です。出産にあたって不安なことは、「引継ぎ」。今回は産休に入るまでにどのようなプロセスを踏んだか記録に残す。普通だったら、上長に妊娠を報告した時点で事務からあれこれ手続きやら面談やらが組まれると思うのだが、そこはなにかと手探り状態の我が大学なので、全て自分から事務に確認したり上長をせかしたりしないと何も進まない。
 
このような信じがたい状況におかれている妊婦さんはそういないと思うけど誰かのためになったらと思って書いておこう。

 どの職業でも引継ぎは生じるものだけど、教員の場合は人に仕事がつく(業務の属人化)ので、引継ぎも複雑。加えて、どうしても譲れないのが大学の場合は15回授業をする+定期試験+成績を出すこと。何をするにも15回の授業が終わるまでの見通しをもってスケジュールを立てないといけない。
 さらに、私の所属先で教員が産休・育休を取得するのはおそらく8年ぶり。「おそらく」というのは、私の前に産休・育休を取得した先生はもう在籍していなくて、噂で聞いたことがある程度の話だから。というわけで、経験者にどんな書類を出してどうやって業務を終わらせたか聞くこともできずに完全に手探り状態で進めることに。


1.妊娠、つわり、出産それぞれの時期に見通しをもつ。


 不妊治療をしていたので、妊娠も出産予定日も明確だった。

 7月13日 融解胚移植 4aaを1つ。予想確立は49%。
 7月24日 判定日 採血でhcgを検査。 ≧50で妊娠成立と判断。

 結果は886.6 miu/mlで妊娠が成立していた。でも、以前流産したことがあったのでこの時点では夫に伝えるのみ。家族にも言わない。もちろん職場にも言わない。
 授業のことがあるし、心拍が確認出来たら上長に伝えて、その後もしものことがあってもいいような授業計画を立てようと思っていた。
 この日程での妊娠成立だと、出産予定日は3月末日なので、後期の15回の授業を終えて卒論の審査をしてゼミ生を送り出してから産前休業に入れる、なんて親孝行な子ども!と思っていた。
 つわりは12週くらいで終わるとグーグルさんが教えてくれたので、とりあえず2か月先くらいまではもしかしたらダメかも、そうなると夏休みは全滅だと思っておいた。

 ということで、9月以降の仕事はセーブして基本は学会発表のみを予定に入れた。前期の段階で決まっていた後期の仕事はやるけど、それ以上の仕事は受けないと心にかたく決めた。
 同時に、どの時期に誰に説明して引き継ぎをするかもなんとなく決めていった。特に学外と繋がっている仕事の引き継ぎのタイミングと適任者を考えた。


2.困った。実技の授業をどうする?


 妊娠がわかったとき、仕事のことで最初に考えたのは「実技の授業どうしよう」だった。講義はなんとかなる気がしていた。
 私が高校生のとき、体育の授業を担当していた女性教員は産前休業ぎりぎりまでお腹が大きい状態で授業をしていたし、大学のときもダンスの先生が産前休業の直前まで大学にきて指導していた。バレエの先生も出産する数週間前までスタジオに居た。インスタの中ではお腹の大きなバレエダンサーが優雅にレッスンしている。
 こうした状況から、当然、実技の授業はできるものだと思っていた。学生のアルバイト(TA/SA)を雇って、激しい動きは学生にお願いして、私は授業を進める。
 その考えを打ち消したのは「ちょっと出血してるね。診断書書くので自宅で安静にしていてください。」という医者の一言。はい、切迫流産。とりあえず1週間。結局、延びに延びて6週間くらい自宅でごろごろ。途中でつわりも激しくなったのでどっちにしろ寝てるしか選択肢がなかったんだが。
 ちなみにつわりは夏休み中ずーっと続いていたが、夏休みが終わる1週間くらい前につわりが明けたような気がして、少しずつ外に出てリハビリを始めた。後期は大丈夫だった。やっぱり親孝行な子どもだった。

 その後の経過は問題なかったが、「切迫流産」と言われて私が思い浮かべたのは、「授業期間中に切迫流産とか早産って言われて出勤できなくなったらどうしよう」ということ。

 うちの大学はどの先生もオーバーワーク。テトリスのように仕事をしているから、途中で授業が増えることは大ダメージ。確実に積む。1人が積むと学科が積む。私の授業をお願いした先生1人に迷惑をかけるのではなく、学科に迷惑をかけることになってしまう。それなら、早めにお願いして見通しをもってもらうのがいいだろうと思った。


3.産休代理について上長に相談。


 そんなことがあり、産休代理を雇ってもらえるように上長にお願いすることにした。つわりで動けない日々のなか、ある日、なんだか突然「今日はいけるぞ!」という日が来た。チャンス!と思って即家を出る。
 出勤してはいけないなか、事務に見つからないように出勤し、上長を訪ねた。運よく研究室にいた。
 漠然と、授業どうするー?って感じだったが、まずは産前休業に入る前、直近のことをどうにかしましょう!と説得し、後期の授業について方向性を定めることにして、以下の私の考えを伝えた。

①切迫流産がいつまで続くかわからない。
②たびたび自宅安静になるかもしれない可能性は否定できない。
③実技の授業はリスクが高い。特に冬季は教場のコンディションが悪すぎて体に負担が大きい気がする。
④講義は自宅安静になった場合でもオンラインでなんとかできる。
⑤組織としても学生としても困るのは、授業期間中に先生がいなくなること。

 切迫流産になるまでは、それまでの健康そうな臨月の先輩たちをみていて大丈夫なイメージだったが、自分がそうではないパターンだと気づいて考えを改めた。
 結果として、実技はほかの先生にお願いし、講義とゼミは自分で最後まで受け持つことになった。私が臨月まで何事もなく仕事を続けられたのは、この時快く授業をかわってくださった先生方のおかげで、命の恩人だと思っている。

 上長も、私が最後までやりたいこと、体の負担についてはすごく理解してくれて、妊婦だからなんでも制限して仕事がなくなるということはなかった。人手不足なので業務から外れることができなかったというのもある(笑)



4.育休中の授業について。


 全く決まらないまま産前休業に入った。どうするんでしょうか?でもこれは労働者•雇われの身である私が考えることではなく、組織•雇用主が考えてどうにかすることだと思っている。
 困ったことといえば、首都圏の大学なら産休代理もたくさん候補がいるんでしょうが、地方の大学だと1年の産休代理(=1年の契約)のためにわざわざ来てくれる人もいないと思うし、ほかの大学の先生に頼むにしても物理的な距離の問題があって兼務できない可能性も大きい。
 実際に、学位持ち、非常勤(大学での授業)経験あり、週に何回か出勤できる人を教員の個人的なネットワークで探したけどそんなに都合のいい人材はいない。


5.教員として考えたいこと。


●妊娠初期、つわり期をどうやって乗り切る?
 →休講+補講?そして休む期間は有給だけでいけそうならそうした方が産休育休中の手当が減らない。

●休講が生じる場合は現実的に補講が実施できる時数か?
 →休講10回なら補講を10回しないといけないが、すでに授業が10週終わっている段階からあと5週で10回分の授業の補講を実施するのは現実的か?
 現実的でないなら不開講にする。資格免許実習に影響のある科目なら不開講にできないので、代理をたてるかオンラインで実施できないか相談。

●安定期に授業をする場合でも、教室の環境に問題はないか?
 →例えば、うちの大学の場合は体育館に冷暖房がないので冬季は白い息が出るほど寒いし、夏季は運動部員でさえ熱中症になるほどの劣悪環境。そのほか、教場の移動に無理はないかを検討して、無理そうなら教場を変更してもらうなど。

●業務での出張はいつまで行く?
 →地方会場入試、高校訪問、学生引率、学会発表など出張はいろいろあるが、妊婦検診を受けている場所から離れて、かつ、強く責任を負う業務は可能な限り早く手放したほうがいい。
 学会発表は具合が悪くなれば帰ればいいけど、組織的な業務での出張は人員の替えがきかないため責任が大きくなりがち。自分のためにも組織のためにもすすんでやらない方がいい。

●なんかいろいろ大変な案件の休日対応など
 →保護者対応とか保護者対応とか保護者対応とか…。無理は禁物。勤務時間までは対応。「これはできるけど、これは精神的に負担が大きすぎる」ということを上長にはっきり伝えておく。

●ゼミ生にはいついう?
 →自分が伝えたいタイミングでいい。大人だから変に噂を立てることもないと思うし、そういう学生がいたら呼び出して注意するのが教育。いろいろ決まらないと言えないことも多い。例えば、3年生の場合、私が不在のときはゼミをどうするのかなど。
 私は産休に入る3か月前が年末で、きりが良かったしお腹も大きくなっていたので年末最後の授業で伝えた。学生は、10月くらいからあれ?と思っていたとのこと。


とりあえずこんなかんじ。
娘、1年間で細胞さんから64cmにまで成長している。すごい。



#育児日記

この記事が参加している募集

育休中の学会年会費支払いに使います!よろしくお願いします!