毒無くして命無し No Poison, No Life.

ミントのタブレットを一つ口に放り込む。「これも毒なんだがな」
ニコチンは言うに及ばず、カプサイシン、カフェイン、テオブロミン、アリルスルファイド、メントール。
極端な例ではテトロドトキシンすら嗜好物にするサル。
部屋の外では、メジャーな毒、エタノールで脳をとかした者共が揺らめいている。
生物が身を守るために、邪魔者を退けるために編み出した毒を、サルどもがうまいうまいと喰らっている。
この生物にはマゾヒズムと快楽の区別がついているのだろうか。
彼はそのように考える。

そこにそろった五人は、銘々に選りすぐりの「毒」を持ち寄った。
「さあ。始めましょうか」
ルールは簡単。
至高の「毒」と納得させたものが勝利者。
数十人の観戦者が空間にありふれた毒をふりまきつつ、試合の行方を見守る。
最初に地味な女性がそれを皆に示した。
(続く)

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