魔王と姫王女

その王国は若く美貌の王女が治めていました。

先年、両親を亡くしたばかりの姫は、継承の混乱を狙った近隣諸国に攻め込まれましたが、たぐいまれなるその知性により、複雑な力関係を持つ諸国を外交的に手玉に取り、攻撃軍は自分たちの戦いに専念すべく撤退していかざるを得ませんでした。

これを見ていた臣民たち、そして大陸各地の勇者たちは姫を慕い、集まり、国は栄え、守りは固くなりました。

しかし、突然魔王の軍が現れ、その圧倒的な戦力に防衛軍は破られ、城もたちまち大群に攻め取られ、魔王は姫の自室の前にまで迫ったのです。

「魔王。あなたは何が望みなのですか」まだうら若き女王は毅然たる表情で問うのでした。
「あなたに、この世の最高の快楽を差し上げましょう」

魔王の言葉に貞操の危機を覚えた女王でしたが、気丈にも答えます。
「私に手を出すならば自ら死を選びます」
しかし魔王は言うのです。
「果たして私の差し出す快楽に耐えられますかな」

ふと、扉の隙間から子猫が入ってきました。それはとても愛らしく、かわいい声で鳴いて、姫の懐に飛び込んできます。
「わ、かわいい。でもこんな危ないところにいてはだめよ」
しかし子猫はじゃれついて離れようとしません。姫は思わず自分の置かれた状況を忘れ、子猫のしぐさにうっとりとした笑みを浮かべ、ふわふわの毛を撫でまわします。

「いかがです。ご満足いただけましたかな。」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?