天草騒動 「62. 細川家手楯の事」
さて、細川越中守殿は老巧の良将であったので、「黒田家の勢に負けるな。賊城はこの一戦で落ちるに違いないぞ。かかれ、かかれ。」と兵士に下知し、稲麻竹葦のごとく取り囲んだ。
この城戸口は、鉄砲の達人の駒木根八兵衛の持場であった。
前もって最期の戦いと心を決めて準備していたので、一間当たり五六挺づつ鉄砲を配置し、それぞれに弾薬係の者が付き添って詰め替えなどの手際も良く矢継ぎ早に撃ち出したため、寄せ手では手負いや討死が百人余りに及んだ。
城内から撃ちかける玉は雨のようであ