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効率化は効率的ではない?〜This is Leanを読んで〜

仕事において、「効率が良い」とはどのような状態を思い浮かべるだろうか。ダラダラせずに集中して取り組む、ムダなことをやらない、手が空いたという状態を作らない。つまり、持てるリソースをフルに活用しようとする発想が、「効率が良い」という言葉にはあると思う。これは個人だけでなく組織全体に対しても言えることだ。

一方で、仕事は顧客がいて成り立つものであり、最終的には顧客に価値を提供することで成り立つものだ。この顧客の視点から「効率が良い」を考えるとどうだろうか。何か欲しいものが生まれて、ムダなくそれが手に入る、待ち時間が少ない。つまり、ニーズが生まれてその価値を迅速に享受できるということだ。

この記事の最後に紹介している本では、前者の効率をリソース効率、後者の効率をフロー効率として区別する。詳しくは本を読んでもらうとして、リソース効率を高めようとすると、フロー効率が低くなってしまうというトレードオフ的な性質があり、完全な両立は叶わない。そのため自分たちが、どのような価値をどのように提供するかの戦略が重要である、という内容だ。
(何がリーンで何がリーンでないかは個人的にはどうでもいい。)
ソフトウェア開発の文脈では、下記の記事やスライドによる説明が非常にわかりやすい。

自分を含め多くの人や組織は、効率を求めようとすると、リソース効率に寄ってしまう。なぜなら、先ず自分でできることから始めようとするからだ。このように考えるのは自然なことであるが、フロー効率を上げるために必要な全体最適にならない事が多い。また、手持ち無沙汰の状態をなくして、先のタスクまで積んでおくことで、多くの仕事をこなしているような気になれる。上司からしても、メンバーの手が空かないように、仕事を準備して割り振る。
このように効率といえばリソース効率という力学が、組織全体で働きやすい。そのため、自分たちが部分最適に陥っていないか、価値につながらない仕事に時間を取られていないかなど、意識して振り返る必要がある。

感情的な観点でも、自分たちのリソースを100%発揮し続ける状態はつらい。常に張り詰めた状態で、タスクを捌き続ける必要があるため、遊びがなく予期せぬ出来事にも対応しづらい。予期せぬ出来事が発生すると、ほぼ確実に予定が狂ったり、限界を超えたピークタイムを迎えたりすることになる。
リソース効率だけを追い求めることは自分たちの首も絞めていることになるのだ。

上記のような弊害は、これまで経験や感覚的にわかりそうなことでもあったが、説明するには解像度が低かった。しかし、リソース効率とフロー効率を使えば、その説明が可能となる。自分たちがどのような「効率化」を目指すべきなのか、目指したいのか、上司や組織への説得材料を手に入れることができた。


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