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新海誠『秒速5センチメートル』

野外映画祭で鑑賞。何も事前知識がないまま見始めたけれど、
「君の名はがカルピスなら、秒速5センチメートルはその原液だ」という映画玄人の意見にうなずくしなかった。
でも、見終わった後の個人的な満足感の原因は、この映画が挫折や気持ちのすれ違いに満ちていることかも。
出てくる男女二人の想いの差を示すかのように画面を二分割する打ち上げロケットの軌跡や
新宿の高層タワー、横切る電車、煙草から立ち上る煙ばかりが目についた。

初めてのセックスの相手がありえないほど早漏だとか、
妻を全く愛せない夫だとか、事故死した夫への慰謝料をせびる妻だとか
かなわない一方通行の気持ちを冗談で昇華させようとする人が出てくる物語の
皮肉に満ちた部分ばかりを好きになっていく。
フィクションですらハッピーエンドを楽しめないのは、もう治しようがないと思いつつ複雑な気持ち。

改めて思い出すと、メインである恋愛的な部分よりも、最終節の仕事や生活の部分のリアルな差が染みたのかもしれない。
失敗するたびに、努力は報われるとは限らないと分かっているから
何かに必死になることが恥ずかしくなって、努力とハッピーエンドが詰まった物語を嫌ってるんじゃないかと思ってきた。
近い未来って、考えるれば考えるほど苦い気持ちになる。新海誠の狙いではないところに刺さっているかも。

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