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「生理(月経)ってみんなツラいよね」の呪縛

「生理(月経)のときの体調不良って人によるし、私よりも重い人もいるみたい。みんな我慢しているんだから、これくらいの痛みは我慢しなきゃ……」
こんなふうに思ったことはありませんか?

実際、私は生理痛や気分の落ち込み、だるさをほとんど自覚したことがなく、「私はまだまだましな方なんだ」と思っていました。たまにお腹が痛くても、「みんなこれくらい我慢してるよね」と、特に対策することもなく過ごしていました。

でも、「みんなツラいんだから、これが普通」で終わらせるのは、実はもったいないかも……?今回、SHIPの「夏の自由研究」(夏の自由研究については別記事参照)で集まった、産婦人科医を始め医療従事者や医療系企業で働くメンバー9人で、いろいろと考えてみました。

「『月経がつらい』のは仕方ない」?

メンバーで改めて話してみると、

「女性みんなにあることなので『月経がつらい』のは仕方がない」
「月経のことは人に話すようなことではない」

という、ぼんやりとした「~べき」の呪縛を受けていることに気がつきました。

そもそも、様々な種類のナプキンや月経カップ、経口避妊薬のピルや連続服用型ピル、IUSなど、生理(月経)のツラさをコントロールするための方法がたくさん出てきているのに、意外と知らないこともありました。
自分の大事な体のことなので、正しい情報を知って月経を受け入れ、自分に合った対処ができる未来を目指したい!
ということで、産婦人科医監修のもと、お悩み別に対処法をまとめてみました。

毎月の生理(月経)がとにかくツラい…!

月経の時の憂鬱な痛み。人によって、痛みの程度は様々で、鎮痛薬を飲めば支障がなくなる人もいれば、寝込んでしまう人もいます。月経痛があれば、我慢せずに鎮痛薬を用いましょう。ただし、用法・用量を超えて鎮痛薬を使ってしまうと、胃腸障害や腎障害、頭痛などが起こる可能性があります。症状が強い方は、子宮内膜症などの病気が見つかる場合もあるので、一度産婦人科で相談しましょう。

ただ、月経がツラくて、痛み止めがずっと手放せない!経血量も多いので、生理ポーチには吸収力高めのナプキンと鎮痛薬を入れている……。そんな人にお勧めしたい対処法が、経口避妊薬(Oral Contraceptive、通称ピル)です!

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ピルは、月経と妊娠をコントロールできる内服薬のこと。服用することで、月経痛や疲労感、イライラといった月経困難症の症状を軽減できる可能性があります。大事な試験の日や海水浴などの日と月経が重なるのを避けることも可能です。ちなみに、ピルは服用を中止した後の妊娠しやすさに悪影響を及ぼすことはありません。

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ピルは毎日決まった時間に飲むのが基本ですが、飲み忘れてしまったときはすぐにその1錠を服用し、それ以降はまたいつもの時間に1錠を飲めば大丈夫。
ピルはコンドームよりも高い避妊効果がありますが、セックスするときは性感染症予防のためにもコンドームを併用するのがおススメです。

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ピルの副作用としてむくみや胸の張りなどを感じる人もいますが、多くは2~3カ月服用を続けると落ち着いてくるといわれています。
気をつけるべきなのは血栓ができることですが、頻度はとても低くなっています。いつもと違う頭痛や手足のしびれ、舌のもつれを感じたら、ピルを飲んでいることを伝えた上で医師に相談しましょう。
血栓症を発症しやすい疾患を持っている人や、ピルが体に合わないなど、ピルを服用できない可能性があります。その場合は月経のつらさを改善できる他の方法があるかもしれないので、改めて医師に相談してみましょう。

生理用品の使い分け、どうしてる?

生理用ナプキンには、昼用・夜用といった使用シーンやその日の予定に合わせて、長さ、ショーツに固定しやすい「ハネ」の有無など、多彩な種類が流通しています。使い捨ての「紙ナプキン」に加え、洗って再利用する「布ナプキン」もあります。

ナプキンの交換頻度は2~3時間に1度が目安です。寝るとき以外の長時間の使用は、漏れやムレ、臭いの原因になりますし、感染症の原因にもなりますので、こまめな交換を心がけましょう。いろいろ使ってみて、自分の生活スタイルや経血量に合ったナプキンを見つけられるといいですね。

その他、膣内に挿入して生理の際の経血を吸収する生理用品「タンポン」もあります。タンポンは、性交経験の有無に関係なく使用できます。日本で流通している主なタンポンには、アプリケータータイプ、フィンガータイプといった種類があります。アプリケータータイプは、吸収体を正しい位置に導くために、プラスチックの筒(アプリケーター)が付いていて、初心者でも使いやすくなっています。フィンガータイプは、指にカバーを付けて、直接膣に挿入します。ナプキン同様、経血量に応じてタンポンも使い分けられます。

タンポンは、スポーツをする際などに便利ですが、使用する際は清潔な手で扱い、8時間以上の使用はしないでください。膣内に細菌が繁殖してしまうと、まれにトキシックショック症候群(TSS)を起こす可能性があります。体調に異常を感じたら、すぐにタンポンの使用を中止し、商品の取扱説明書を持って産婦人科などの医療機関を受診しましょう。

また、経血量が多く、タンポンを正しく使用しても漏れてしまう場合は「過多月経」の可能性もあるため、一度産婦人科を受診してみましょう。月経量は人によって様々ですが、例えば夜用ナプキンを1~2時間ごとに交換する、睡眠中に下着やシーツを汚してしまうことが多い、貧血があるといった方は、経血量が多過ぎる「過多月経」の可能性があります。子宮筋腫や子宮腺筋症(内膜症)など病気が隠れている場合もあるので、一度産婦人科を受診するといいかもしれません。

臭いやナプキンかぶれに悩みたくない

なかなかナプキンやタンポンを交換できなかったり、特有の臭いが気になる……。そんな人にお勧めしたいのが「月経カップ」です。

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月経カップとは、月経中に膣内に挿入して経血をためるシリコン製のカップのこと。月経中特有のムレやかぶれが気になる方、経血独特のにおいが気になる方には試してほしいアイテムです。装着時は、違和感なく過ごせます。何度も使えるので経済的で、使い捨てナプキンに比べゴミを減らせるのもポイントです。腟内に入れるという点では、タンポンと同じで、月経中でも気兼ねなくプールや温泉に入ることも可能。タンポンよりも長時間使用できるという利点もあります。経血量が多くて漏れが気になる方は、薄いナプキンを併用しても良いでしょう。

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カップの大きさや硬さ、取り出すための形状、膣内に入れる際にカップを折りたたむ方法などに違いがあり、選択肢が多いのがメリットですが、最初はどのタイプが合うのか分からないのが難しい点かもしれません。3000~4000円ほどするので、商品の説明をしっかり読んで、自分に合いそうなものを選んでみてください。

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一般的なピル以上に手間を省きたい

月経困難症や月経前症候群(PMS)を軽減できるピルに、月経回数も減らせる新たなタイプ、「連続服用型ピル」が登場しました。

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従来のピルは28日周期で服用するため、月に1度の休薬のタイミングで月経が起きていましたが、連続服用型ピルは最長120日の連続服用が可能です。そのため、休薬中に出やすいむくみや胸の張りなど、ホルモン関連症状の減少も期待できます。

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出血は毎月起きなくても問題ありません。一般的なピル同様、避妊効果もありますが、セックスする時は性感染症予防のためにもコンドームを併用することをおススメします。

避妊・月経コントロールしたいけどピルを飲み忘れてしまう

また、「毎日飲まなくちゃいけないピルは、忙しくてうっかり忘れがち」という人には、IUS(子宮内黄体ホルモン放出システム)が合っているかもしれません。

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IUSは子宮の中に黄体ホルモンを持続的に放出し、月経量を減らしたり、避妊効果を得るためのものです。医療機関で装着してもらう必要がありますが、入れた後は日常生活でも、性交渉時でも違和感ありません。入れているのを忘れそうになるという人もいるほどです。「今は月経カップを使っていて、心配な日は外でも取り外せるようウェットティッシュや手袋を持参している」という人は、荷物も確実に減らせます。

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一度の装着で最長5年の避妊ができ、保険が効けば1万数千円(本人負担3割の場合)なので、避妊と月経を軽減するための治療の中では最もコスパがいいといえます。はじめの6カ月は不正出血があるのが玉にキズですが、月経はとても軽くなり、2割の人は月経自体がなくなってしまいます。経血量が少なくなり、パンティーライナー(おりものシート)だけで過ごせるようになる人も多いようです。今後5年間は妊娠の希望がない人にはお勧めです。出産経験がない人は、入れる時にやや痛い可能性があるので、入り口に局所麻酔をしてもらえるといいでしょう。

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ちなみにおりものとは、その名の通り「おりてくるもの」のこと。女性器から出る分泌物の集合体のことで、雑菌が体内に入るのを防ぐ自浄作用や、受精を助ける働きなどもあるものです。おりものが少しあるだけで「何か異常では?」と心配する人がいますが、多少はおりものがあるのが正常なのです。抗菌薬の使用や疲労などにより、膣内の常在菌のバランスを崩すと、腟カンジダ症になり痒みが出ることがあります。その際は石鹸でゴシゴシ洗うのではなく、優しく洗って清潔にを保ちましょう。産婦人科でお薬を投与すると良くなることが多いです。おりものシートでカバーできるようなら正常の範囲内と思って大丈夫ですが、汚れや不快感がパンティーライナーでカバーしきれない場合は何か異常がある可能性が高いので、一度産婦人科を受診することをお勧めします。

産婦人科では、年齢や性交経験、出産経験の有無などに合わせた対策が相談できます。月経を楽にできる対策はたくさんあるので、生活の質を上げるためにもぜひ相談してみてくださいね。

「生理がこない」「予定外のタイミングで出血した」

最後に、最近生理がこない、生理じゃないはずなのに出血した……ということがあったら。
正常月経は月経周期日数が25~38日、出血持続日数が3~7日で、その変動が6日以内であることをいいます。つまり、25日未満で出血したり、月経の間隔が39日以上かかる場合は「月経不順」です。
原因は、疲労やストレス、急な減量や肥満などによるホルモンバランスの乱れ。このホルモンの乱れが病気を引き起こしており、さらにホルモンの分泌に異常が生じることもあります。すでに生理がある人で、3カ月以上停止した場合は、妊娠や閉経以外に「続発性無月経」の可能性があります。これも、ホルモンバランスの乱れが原因です。

一方、月経以外のタイミングで性器から出血することを「不正出血」といいます。出血の原因は、妊娠や疾患、薬剤による影響、実は消化管や泌尿器からの出血だったなど、様々なケースがあります。いずれも産婦人科で診断や治療ができることがあるので、一度受診をお勧めします。

また、妊娠していて生理がこない可能性もあります。コンドームを使っていても避妊効果は100%ではありませんし、ピルも飲み忘れなどがあれば避妊効果が低下します。心当たりがある方は、妊娠検査薬を使いましょう。
妊娠検査薬は、生理予定日の約1週間後から調べられます。陽性反応が出たら、正常な妊娠かどうかを確かめるためにも、早めに産婦人科を受診しましょう。

思いがけない妊娠で不安な方、誰にも相談できないという方は、全国各地にある「にんしんSOS相談窓口」に、一度相談してみてくださいね。

※この内容はTwitterでも展開しています。4パターンあるのでぜひ見てみてくださいね。

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