手作りの音楽の楽しさを求める「作り人、」新たなステージへ
シンガーソングライターのハルノオトさん。自らの手で作る音楽の楽しさを求め、がむしゃらに突き進んできた。自らの原点とも言える場所で、新たな表現との出会いを求めて出発することとなった。袋井市に誕生した「東山ガレージ」に込められた思いを、これまでの活動を振り返りながら、話していただいた。
自然を感じながら演奏できるスペース 「東山ガレージ」が完成
広がる田園風景、草の匂い。袋井市友永の林の中にこぢんまりと佇むのが、演奏スペース「東山ガレージ」だ。シンガーソングライターのハルノオトさんが、実家のたい肥小屋を自身の手で改修して作り上げた。
「基本的には元の形を生かして使って行きたいと思ったから、あまり手は加えていないんだよ」
時折風が吹き抜け、木の葉が揺れる。虫の声も聴こえてくる。自然を感じながら演奏することができるのが特徴だ。
「この辺りは昔『東山』って呼ばれててね。子供の頃の遊び場だったんだよ。中学生か高校生のときには、この近くでコンサートイベントがあって、ベートーベンの『田園』(※1)のオーケストラ演奏を聞きながら夕日に輝く田園風景を眺めた。とても感動したのを覚えてるよ。ここへ来ると、子供の頃の自分と今の自分が直結しているような感覚になる。使わなくなって、どんどん朽ちていくだけになっていた小屋を見ていたら、あの頃で言う『秘密基地』みたくできるんじゃないかって思ったんだ」
※1 ベートーベン 交響曲第6番 ヘ長調 作品68『田園』
シンガーソングライターとして弾き語りを選ぶ理由
ハルノオトさんは、静岡県西部を中心に活動。ゆるりとしたギターで歌い上げる、牧歌的な雰囲気が特徴だ。
▼ハルノオト『雨が上がったら』
「表現としてギターの弾き語りを選んでいるのは、フットワークの軽さと人間性が丸裸になる感じが好きだから。聞き手の数だけ解釈があるのも面白い。ギターをポロンと鳴らした音に、どういうイメージを浮かべるかは聞き手にゆだねられているでしょう。広大な山の風景を浮かべてもいいし、海でもいいし。都会のビルだっていい。ある程度は『こういう風に聞いて欲しい』って狙って曲を作ることもあるけど、100%伝わらなくてもOKっていうスタンスでやってる。自分が思っていたのと全然違う受け取り方をした人がいても、それも含めて面白がれたらいいね」
「自分で作った音で歌いたい」から始まったライブイベント「作り人、」
2017年より浜松市や磐田市内の会場を中心に、ライブイベント「作り人、」(※2)を主宰。イベントを始めたきっかけは、浜松の市街地にあった交流スペースで開催されているイベントに参加したことだったという。
※2 開始当初は「作り人達のうた」
「丁度オリジナル曲を作り始めた頃でね。ライブハウスじゃない場所で自由な表現活動ができたらすごく素敵だと思ったんだよ。ライブハウスでも演奏していたんだけど、音が良すぎるのが逆に気が引けてしまって。『どんなにちゃちでも自分で作った音で歌いたい』っていう気持ちがあった。周りの人達と一緒に何かやれたら楽しいなと思い立ったのが最初だね」
思いついたらまずやってみるのが、ハルノオトさん。早速その交流スペースに話を持ち掛け、企画を実現させた。出演者とのやりとり、機材の用意など、ライブに必要なことのほとんどは自身で準備。会場は変わりつつも、これまでに約20回のライブを開催した。
ライブは出入り自由の投げ銭制。シンプルな機材で可能な表現であれば、弾き語りだけでなく、詩の朗読などジャンルを超えて出演依頼することもあった。聞き手にも出演者にも垣根を設けないスタイルから、気軽に足を運べるライブイベントとして楽しみにしてくれる人も出てきた。
「イベントを面白がってくれる人がいたのが嬉しかった。出演のオファーをしたら『ずっと出たかった』って言ってくれる人もいてね。自分の知らないところでも注目してくれている人がいたことはありがたかった。『作り人、』を通してたくさんの人に出会えたよ」
「どこに行くんだろう?」ワクワク感を大切に いよいよオープン
2023年5月の作業開始から約4か月。「東山ガレージ」は、ライブイベントを通して知り合った仲間の手伝いもあり、ついに完成。9月23日(日)にはオープニングライブが開催され、これまでの「作り人、」の出演者を中心にパフォーマンスが行われる。
今後、どのような場所にしていきたいか、聞いてみた。
「ゴールはあまり設定していないかな。一回イベントをやってみてから、次にやりたいことを考えていけばいいって思ってる。『作り人、』のイベントもやっていくうちに『作り人、』らしさが出てきた気がするから。見えてなかった魅力がだんだん見えてくる。ここもそういう場所にしたい。結局、訳の分からないものに向かっていく時が一番楽しいのよ。『どこに行くんだろう?』っていうワクワク感を大事にしたい。自分がワクワクしたいのはもちろん、同じようにここに来る人にもワクワクしていて欲しい。」
外部からの持ち込み企画も歓迎だという。
「まずは『やりたい』っていう気持ちだけで来てくれたらいいかな。音楽だけじゃなくて、アート活動ならどんなジャンルでも。この場所を活かした表現をしてくれれば、集客は二の次でいいもんで。例えば、『外で歌ったことはないけど、一回歌ってみたらどんな気持ちになるだろう』とか、『イベントやライブを本格的にやる前に一回お試しで開催してみたい』とか。ここで発表することによって、何か化学反応が起きて、新しい発見があればいいなと思う。もちろん、お客さんを集めてイベントをやりたいっていう人がいれば、それはそれで嬉しいし」
自由な発想を大切にするハルノオトさん。「東山ガレージ」の開放的な雰囲気は、その思想をそのまま体現しているようだ。
「まあ、あんまり根を詰めず、楽にゆるくやっていきたい。ガチっとしてなくていいんだよ」
東山ガレージオープニングライブ
日時:2023年9月23日(日)
15時オープン / 16時スタート
出演:ハルノオト/タカラノラ/中西こでん/maachan/他
出店:燐寸珈琲
場所: 静岡県袋井市友永 袋井みつかわ病院前の道路を挟んだ向かい側
東山ガレージオープニング予告
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プロジェクト「作り人、」HP
Profile
ハルノオト
演奏スペース「東山ガレージ」管理人。弾き語りLIVE「作り人、」発起人。シンガーソングライター。
X @halnote70
Facebook https://www.facebook.com/kazuhiro.nomura.7906
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