見出し画像

もういくつ寝ると

朝から雨。国道の排気ガスが湿気にまとわりついて、東南アジア諸国のような濃厚なにおいがする。
空が灰色の日は特に憂鬱だけれど、今日は少し違う。後四回寝たらキャンプ、だなんて、子供みたいに胸をときめかせている。

昔からインドアを具現化したような人間だったので、これほどキャンプに魅せられるようになるとは思ってもみなかった。でも、キャンプって想像よりずっとのんびりとした遊びで、行く度に思う存分だらだらしている。

到着するなりビールの缶をぷしゅっと開ける。ハートランド瓶のラッパ飲みでもいい。お値段の割に量も多いし、緑のガラスが風景に馴染む。

初めにテーブルに並べるのは、すぐにつまめるようにと火を使わないお刺身やキムチ。千葉の内房や外房でキャンプをすることが多いから、お魚もきっと美味しいんじゃないかと信じている。

春や秋でも昼は暑い。太陽に灼かれないように、タープの下でのんびり涼む。お酒、つまみ、お酒、つまみ。手軽に作れる料理のレパートリーが増えた。作ったり飲んだり焼いたり食べたりしているだけで、あっという間に日が暮れる。

今週末の夜は、きっと冷え込むだろう。重ね着の隙間から冷たい空気が入り込んで無口になる。焚き火にあたりながら、ランタンの灯の下で、大量に持参した小説や漫画のページを繰る。
足の裏を焚き火に向けるとじんわり暖かくて、でも時折薪木が爆ぜるので少しこわい。

頭上を仰ぐと、あまりの美しさに一瞬寒さを忘れる。無数の星が明滅する夜空。
こんなに長く上を向くことなんて、普段ないんじゃないかな。ほうっと吐いた白い息が、夜の闇に溶ける。

寒さに震えながら寝袋にくるまる夜更けでさえも今は恋しい。どうかいい天気になりますように。
力の抜けた猫みたいに、ふにゃふにゃだらーんと椅子にねそべって、心ゆくまでおなかを満たしたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?